皆さんも一度は【 だまし絵 】を見たことがあるのではないでしょうか? ヒトの『目』は騙されやすくつくられています。ヒトは見たものをそのまま情報として脳に送れないこともあるのです。だまし絵は、そのようなヒトの欠陥を「本当はその形ではないのにそう見えてしまう意外性」として捉え、人々を楽しませて来ました。今回は「有名なだまし絵」から「だまし絵を仕事にする方法」までをご紹介します!編集・執筆 /OSARAGI, AYUPY GOTO
目次
- 1.だまし絵とは
- 2.有名なだまし絵を見てみよう!
- 3.まだまだあるある『だまし絵』
- 4.だまし絵を仕事にするには?
- 5.最後に
1.だまし絵
【 だまし絵 】とは、実物と見まがうほど写実的な絵画のことです。また、トロンプルイユ(仏:Trompe-l'œil)とも呼ばれています。古くは古代ギリシャ絵画にみられ、ルネサンス期では建築物の壁面に大理石の模様や彫刻作品を描き込むなどの表現も行われていました。現代ではシュールレアリスム*1の一部にみられるようになりました。
*1……超現実主義。美術、詩、文学、政治など広い範囲にわたって、想像力の解放と合理主義への反逆を唱え、人間自体の自由と変革を目指した思想のこと。
筆者(Mayu Osaragi)は、大学1年生の時にだまし絵の技法を利用した作品の作り方について学びました。つまり、美大の講義で行うほど、デザインの世界においても「だまし絵技法」の要素は重要であるということです!
2.有名なだまし絵を見てみよう!
このように、だまし絵は古代から親しみのあるアートだということがおわかりいただけたかと思います。では次に、だまし絵作品で有名なアーティストの作品をご紹介しましょう!
“ 視覚の魔術師 ”こと、マウリッツ・コルネリス・エッシャー
引用:https://www.wikiart.org/en/m-c-escher
『 マウリッツ・コルネリス・エッシャー 』(Maurits Cornelis Escher, 1898年6月17日 - 1972年3月27日)は20世紀初頭に活躍したオランダのグラフィックアーティストです。彼の作品は、無限性や迷宮性など、現実的にはありえない建築構造や空間構造表現となっているのが特徴です。
上が下で、下が上?
上と下で同じ場所を描いているようですが、視点が異なります。しかも、上と下の空間が繋がっていてなんとも不思議です。どこまでも果てしなく続く、無限の空間を連想させます。
手前?それとも奥?
前に流れている「滝」に注目してみてください。よく見るとこの流れている滝の建物は手前より奥にあるはずじゃありませんか?しかも一番左にある家より背が高いはずもないし……。見ているだけで混乱しますね!(笑)。
エッシャーは晩年まで「永遠」や「無限」というテーマを持ち続け、作品作りをしていました。エッシャーの有名な作品は他にも数多くあります。エッシャーならではのずっと見ていても飽きない摩訶不思議空間を体感してください!
“ 天才ダリ ” こと サルバドール・ダリ
引用:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Salvador_Dal%C3%AD_1939.jpg
『 サルバドール・ダリ 』(Salvador Dalí, 1904年5月11日 - 1989年1月23日)は、スペイン生まれの20世紀を代表とする最も多才な画家です。彼の作品で最も有名なのが「記憶の固執」という時計が溶けている作品ですが、彼は一つの物を二つに見立てる“ ダブルイメージ ”を用いただまし絵も多数制作していました。
おばあさんとおじいさん?
パッと見ると、おばあさんとおじいさんが向き合っている絵画かと思いますが、視点を変えて見ると、頭の上に荷物を抱えた女の人とマリアッチの男の人が現れました!この老夫婦の若かりし頃を描いているのでしょうか?少し微笑ましいです。
ヒトの『目』はどうしても集合体を「何かとして見立てる」習性があるようです。細かい部分にも目を向けてみると面白いかもしれません!
ガイコツ!?
こちらは一見「ギョッ」としてしまう絵ですが、よくよく見ると食事を楽しんでいる男女です。ちょうどグラスが置いてある部分が人間の歯に見えますね。
キリスト教ではガイコツは「永遠」をさすモチーフとされ、決して悪いイメージだけで用いられているわけではなさそうです。二人の愛は永遠?という意味なのでしょうか。
絵画はもちろん、彫刻や舞台美術、映画制作など多岐にわたって才能を発揮していたダリは、だまし絵も作成していたのですね!だまし絵に描かれる2種類のイメージは双方の関連性を探るのがとても面白いですよね。
“ 日本のエッシャー ” こと 福田繁雄
引用:http://www.kobegakkou-blog.com/blog/2002/05/post-0949.html
『 福田繁雄 』(ふくだ しげお、1932年2月4日 - 2009年1月11日)は、日本のグラフィックデザイナーです。彼の作品は単純化された形態とだまし絵の技法を融合させたユーモアのあるデザインが特徴です。また、“ 日本のエッシャー ” という異名を持ちます。
足がいっぱい!
地面から男の人の足が生えてる!と思いきや、女の人の足も見えてきました。図と地をどちらに設定するかによって見え方が変わりますね。見える足のリズム感が面白いです。
壁の上にしゃがんでいる?
なんということでしょう!福田繁雄が壁にしゃがんでいるではありませんか!どうやって壁に張り付いてるの?と疑問に思った方もいるかもしれません。実はこの作品、撮影した写真をくるっと右に回転させただけなんです。ほら、顔を傾けてみて見てください!靴が壁に張り付いている以外は普通の写真でしょう?(笑)。こんなに簡単なトリックなのに、天と地をどう定めるかによってこのような不思議な見え方に変わってしまうことが分かりますよね。
「意外性」と「驚き」を独特のユーモアを持って表現していた福田繁雄。中には戦争をテーマにしたものも存在し、グサッと深く考えさせられるポスターも存在します。この機会に是非とも、皆さんも福田繁雄の作品をみてみてください。
まだまだあるある【 だまし絵 】
このように長年にわたって愛されてきた【 だまし絵 】は、“ 体験できるアート ”として、ますます進化を遂げています。どのような作品があるのでしょうか?
巨人と小人!
小人になったり巨人になったりしてしまう「エイムズの部屋」。大人数で遊びに行くと楽しそうです!
絵画の“ナカ”の人に袖を引っ張られる?
有名絵画のパロディーにだまし絵技法を使った作品。「もうちょっと見ていきなさいよ」と言わんばかりの視線を感じます。
落っこちる〜!
深い深い穴の上に頼りない木の板がかかっている作品。今にも奈落の底に落ちていきそうな深さの穴ですね……。実際には穴はないので子供でも安心して楽しめます。
他にもこんなにたくさん!
檻のない動物園シリーズです。本物のような大迫力の動物が今にも動き出しそうです!マンモスが壁を突き破ってきているのはすごくリアルですね。写真を撮るととっても面白い図になります!
これらの作品は全て株式会社エス・デーが制作しています。なんと、【 トリックアート 】という言葉を作ったのはこの会社です。従来のだまし絵技法からヒントを得て、「見て、触って、写真を撮って遊べる」全く新しいジャンルのアートを創り出しました。今までの【 だまし絵 】とは異なり、身体全体で体感できるアートと言えます。
東京都内を始め、全国各地にイベント企画や美術館を設立しており、日本国内では最も有名なトリックアート集団です。例えば、ハウステンボスのスーパートリックアートや大型ショッピングセンターのイベント企画などを数多く手がけています。
4.だまし絵を仕事にするには?
現在、株式会社エス・デーではViViViTにて、トリックアートを描く『制作スタッフ』を募集中です!「トリックアートを描いてみたい!」「人を驚かせるモノを作りたい!」という方にピッタリのお仕事です。少しでも気になった方は下記WEBサイトに目を通してみてください。
トリックアートを制作できるクリエイター募集は滅多にないので、このチャンスを逃さないでくださいね!
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< 仕事内容 >
・本社アトリエにて【 トリックアート 】を制作する業務
・絵画作品の制作(デザインも自分で考えます)
・造作物による作品制作
・イベント展への設置、運搬作業
【詳しくはこちら!】
株式会社エス・デーの募集要項 ※ViViViTの企業ペーシに飛びます
5.最後に
【 だまし絵 】には人々の心を掴んではなさない魅力があると感じました。ヒトの認識能力の特性を生かした、だまし絵技法を用いた作品は「意外性」を生むことができます。「なんでこうなるんだろう?」と鑑賞者に思わせることによって人々の記憶の奥底に焼きつくのではないかと思います。
加えて【 だまし絵 】はただアートとして用いられるだけでなく、デザインの分野でも大いに活躍してくれます。現に“日本のエッシャー”と呼ばれた福田繁雄は、ポスターなどを制作する上で、だまし絵技法を用いていました。なので、皆さんもだまし絵の技法を生かすことができれば、意外性のある作品を作れるかもしれません。
(2017.10.26)
著者
はたらくビビビット
ポートフォリオとデザインのリファレンスメディア