本やフライヤーなどの紙面のレイアウトは、中身の写真やグラフィックなどのビジュアルが重視されがちですが、それをどのように配置するのかによって、印象はガラリと変わります。
これからの時期、自分の作品をポートフォリオにまとめる必要がある方も多くいると思います。その時に第一印象を大きく左右するのがポートフォリオの「レイアウト」です。印刷物のデザインに慣れていなくて不安があるという学生さんたちに、ぜひ読んでもらいたいコラムです。
編集・執筆 / SHIONE, AYUPY GOTO
●はじめに
紙面のレイアウトにおいて、余白や判型などから受ける印象には、ある程度のルールが存在しています。このなかには効果的なレイアウトを考えるヒントがたくさんあります。
一般的な紙面レイアウトの知識に加えて、ポートフォリオ制作の中でチェックすべきポイントも交えながら紹介していきます。
●縦長と横長の印象
人の目は横の情報に強い
人間の視野は横に広く、横長のものは一目で情報を処理できるので、横長のレイアウトは強いインパクトを与えることができます。また、多くの写真は横構図で撮影することが多いと思います。その点で、写真全体を見切れることなく、レイアウトしやすいです。
一方縦長は、一度に情報を処理しにくいので、見て欲しい流れがある場合に適しています。また、収まりが良くレイアウトのバリエーションも考えやすいので、静的で綺麗なレイアウトをしやすいのも特徴です。
縦で強い印象を与えるなら......
大きい写真などを見開きに配置するなどの工夫ができます。
縦長はレイアウトの組み合わせによってメリハリを生み出しやすい形でもあります。
ポートフォリオ・チェックポイント
ポートフォリオを作る上で、縦と横の判型どちらがいいか悩む人は多いと思います。一概には言えませんが、判型の特徴と自分の作品の傾向から選んでみてもいいかもしれません。
横長の判型
ビジュアルを大きく見せたい場合や、作品の強いインパクトを感じて欲しい人に適しています。
縦長の判型
制作過程などをしっかり説明したい場合や、細かい制作物が多い場合などに適しています。
●余白が与える印象
DTP用語では版面とマージンと呼ぶ部分です。
版面
画像や文字などのデザインされた部分のこと
マージン
用紙の縁から版面までの余白のこと
上の余白を「天」 下の余白を「地」
見開きの内側を「ノド」外側を「小口」と呼ぶ
余白は普段あまり意識しませんが、紙面の印象は余白で決まると言ってもいい、とても大切な部分です!
全体の余白(マージン)が狭い
画面に迫力が出ます。
ただし、あまりに情報を詰めすぎると圧迫感が生まれ、読み進める気力がなくなります。
映画のフライヤーの裏やチラシなど、情報を1枚にまとめてじっくり読んでもらうものに適しています。
全体の余白(マージン)が広い
すっきりと圧迫感なく見せることができます。
余白が広くとられていると洗練されたイメージになりますが、広すぎても不自然になります。
他のページとの兼ね合いをみながら、全体のバランスについて考えることが大切です。
マージンの狭い広いに関わらず、ずっと同じ余白が空いていると画面が退屈になってしまいます。その際、版面からはみ出した写真やデザインなどを入れるなど、迫力を出す工夫を考えるとメリハリが生まれます。
ポートフォリオ・チェックポイント
ポートフォリオを見てもらう時間は限られているので、1ページの情報は読み手のことを考えた量に抑えることが得策です。
マージンは広めに取っておくと、読みやすく、短い時間で作品をアピールしやすいです。
●画像と文字の位置
安定と不安定
レイアウトには、情報量の配置バランスによって、安定と不安定が生まれます。それぞれに特徴があり、与える印象に違いがあります。
安定
《 上下 》
情報の重心が下に来るイメージです。写真などの情報量の多いものを下に配置するとこのような印象になります。どっしりとした重みのあるレイアウトで、安心感や、信頼感といった印象を与えられます。格式や伝統のあるイメージを伝えたい場合などに適しています。
《 左右 》
シンメトリー
左右対称はバランスが良く、安定します。落ち着いたクラシックな印象を与えられます。しかし、単調で面白みのないイメージになりがちです。
不安定
《 上下 》
情報が逆三角形に配置されているイメージです。情報量の多いものが上にくるとこのような印象になります。動きが出て、新鮮で洗練されたイメージになります。
《 左右 》
アシンメトリー
左右非対称は新鮮で、動きがあるレイアウトです。モダンな印象を与えられます。しかし、やりすぎるとバランスが悪くなり、散らかったイメージになってしまうので注意が必要です。
●ジャンプ率をうまく使おう
ジャンプ率とは?
ジャンプ率とは、レイアウトの中の大きさの比率や対比の事です。
写真や文字を同じ大きさで配置するよりも、大小の差をつけることで見る人の視線を誘導し伝えたいことをより効果的に伝えるテクニックです。
ジャンプ率の大小による印象の変化
ジャンプ率が小さいと、落ち着いた印象になります。単調になりがちですが、すっきりとした画面を作ることができます。
ジャンプ率が大きいと迫力が出ます。また、大小差があることで、読み手の目線をコントロールすることができます。伝えたいことを効果的に伝える工夫ができます。
●最後に
レイアウトの持つ様々な印象について理解することで、中身のデザインもより魅力的に伝えることができます。
本や、ポートフォリオなどは誰かに見てもらうことが大前提としてあります。読み手への気配りがあるレイアウトを意識して、作ってみてください。
(2017.2.23)
著者
はたらくビビビット
ポートフォリオとデザインのリファレンスメディア