シンプルな情報設計にはグラフィックが効く。流し見でも“刺さる”ポートフォリオ

「ポートフォリオにどれくらい文字を入れるか」は、ポートフォリオ制作の際に直面しがちな問題です。説明したいことはたくさんあるが、説明せずとも伝わるアウトプットが必要じゃないのか?テキストを入れても、企業がポートフォリオを見る時間は短いと聞くし……。などなど、疑問に思う人は多いと思います。今回は、見るだけで伝わる・読むともっとわかる、安野さんのポートフォリオをご紹介します。さっそく覗いてみましょう!
編集・執筆 /YOSHIKO INOUE

安野 瑞起 さん

多摩美術大学卒業予定
電機メーカー サービスデザイン職内定

PICK UP!ポートフォリオのこだわり

テンプレートを決めすぎない!作品に合わせた自由なレイアウト






安野さん:多くのポートフォリオは基本的なレイアウトを決め、テンプレートを作り、そこに作品を当てはめてつくっていくと思います。しかし私の場合、自分が出来る幅の広さの表現や自分で見ても楽しいポートフォリオ、開くたびにワクワクするものを作りたかったので、形式をあまり設定せずに、その作品に合った雰囲気や自由なレイアウトを意識して制作しました。

“読まなくても伝わる”海外のポートフォリオを参考に


安野さん:広告業界は特に応募数が多く、ポートフォリオ審査の時はパラパラと流し見しかされないという情報を聞いていたので、なるべく文字に頼らないように意識しました。その際、何が書いてあるか読めないけどビジュアルで伝わってくる海外のポートフォリオをよく参考にしていました。

ポートフォリオ一問一答

●このポートフォリオを提出した業界

広告制作会社、IT業界、メーカー

●コンセプト

何にでもなれる

▼表紙に載せているのは自分のロゴ。その次の自己紹介ページは、ロゴを踏襲したデザインになっている。

●ポートフォリオの構成

  • 表紙
  • 自己紹介
  • インターン作品(UIデザイン)
  • 授業課題(パッケージ、広告、グラフィック)
  • 自主制作(ロゴ作字)
  • 裏表紙

▼前半にUIデザイン、後半ではブランディングなど幅広い作品が掲載されている。


●制作時期

3年生の7月〜3年生の11月

●制作プロセス

    (1)作品をピックアップ

  1. 構成や写真撮影
  2. Illustratorでデータ制作
  3. コンビニで印刷、ファイリング
  4. いろんな人に見てもらいブラッシュアップ
  5. 印刷会社で印刷・製本

▼CHECK!制作プロセスの見せ方は?
ゴールを「講評でのコメント」に!図が多く見やすい


編集部:ある作品では、メインビジュアルページ、概要ページに続いてプロセスページが設定されていました。「課題」「リサーチ」「ペルソナ」「ワイヤーフレーム」等が記載され、最後に「講評・コメント」の欄が。ゴールを作品の完成時点にするのではなく、「その課題が解決できたかどうか」に設定して取り組んでいることが伝わります。
また文字が多くなりがちなプロセス説明ですが、インフォグラフィックスが多いため視覚的な理解を促しています。

●サイズ / ページ数

A4 / 42ページ

●制作に使用したソフト

Illustrator、Photoshop

●印刷 / 製本方法

キンコーズ / くるみ製本

●制作にかかった費用

一冊4000円

●制作するうえで参考にしたもの

はたらくビビビットのポートフォリオ百科、issuu、Behance、いろんなWEBデザイン

●制作中アドバイスをもらった人

大学の教授、企業の方

▼小さいサイズの作品は、1画面にまとめると量産した成果がわかりやすい。

●これからポートフォリオを制作する人へのアドバイス

安野さん:ポートフォリオ制作で大事なことは、何度も作り直すことだと思います。そうすることで、ポートフォリオの質や見せ方が向上するのは当然ですが、同時にポートフォリオにかける想いも変わってきます。1回目に制作したポートフォリオを説明する時と、5回目に制作したポートフォリオを説明する時の気持ちや立ち振る舞いは自ずと違うはずです。本当の自信というのはそれにどれだけ時間や思考を費やしたかで自分の中から湧き上がってくる物です。面接官にもその自信や思考は、磨き上げられたポートフォリオ、自信に満ちたあなたの表情で伝わると思います。(いいこと言った!)


はたらくビビビット編集部より

安野さんのポートフォリオは、充実した情報量でありながら、それを文字以外の手段で伝えている部分が多くありました。ユーザーを想起させる写真、使い方が一目でわかるイラスト、比較情報を伝えるグラフや文字の色……。さまざまな手段を組み合わせ、初見の人にも伝わりやすいページデザインが仕上がっています。そんな見せ方が成功しているのを裏付けるように、参考資料の一つには「海外のポートフォリオ」が。海外のポートフォリオは全編外国語のため、日本のエディトリアルデザインに比べて文字より先にビジュアルに目がいきますよね。そんなシチュエーションでもしっかり伝わるデザインを参考にすると、読まずとも伝わる情報設計がうまくいくのではないでしょうか。
またブラッシュアップの積み重ねについて、「思考や時間を費やしただけ本当の自信となり面接でも発揮される」という言葉がとても心強いですね。
安野さん、ありがとうございました!


(2020.3.15)

著者

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井上佳子

はたらくビビビット編集長。 株式会社ビビビットの社員です。ポートフォリオづくりに役立つ情報発信を目指します。 Twitter

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