紙とペンさえあればどこでも描ける。日本のゲームを深く愛したクリエイターは、国境を越えて「ないもの」を作る

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グリー特集

GREE creators special interview!第3弾は、グリー株式会社でVR事業や新作ゲーム開発に従事しているシニアアーティストの Choi Shinwoo さん(以下、チェーさん)にお話を伺いました! 幼い頃から日本のアニメやゲームに憧れていたチェーさんは、韓国から日本の美術大学に進学し、日本の技術や知識を学んだことでゲーム業界の仕事に惹かれるようになったそうです。韓国国籍の方であれば必ず通る道「兵役」期間も、ゲームに対する情熱が冷めることはなく絵を描き続けていたチェーさん。元々はコンシューマーゲーム会社を志望していたにも関わらず、なぜスマホゲームを開発するグリーへの就職を決意したのか。また入社後、どのようにして新作ゲームの制作を任されるまでに成長できたのか。チェーさんの活躍と、グリーでのお仕事に密着しました。編集・執筆 / AYUPY GOTO

Shinwoo Choi
ちぇー しんう

SeniorArtist

グリー株式会社 2013年4月入社
東京コミュニケーションアート専門学校 2013年卒業
京都精華大学 マンガ学部 ストリートマンガコース 2006年卒業

新卒3年目で新作ゲームの
メインビジュアル担当に抜擢!
デザイナーの枠を超えてVR事業の立ち上げにも挑戦。

― 現在、グリーで新作ゲーム開発やVR事業に携わってると伺いました。具体的にどのようなお仕事をしているのでしょうか。

チェーさん:私は現在コンセプトアートチームで、主に2Dイラスト制作を担当しています。背景、キャラクター、エフェクトなど、ゲームに必要なイラストであれば何でも描きます。
メインで携わっているゲームは、東京ゲームショウ2015(以下「TGS2015」)で発表された、新プロダクト「アナザーエデン 時空を超える猫(以下、アナザーエデン)」で、メインビジュアルやメインキャラクターのデザイン、イラストを手がけています。
もともとの所属はVR(バーチャルリアリティ)チームなのですが、「アナザーエデン」のビジュアル制作も任せてもらえることになったので、一時的に兼務しています。

― VRは業界でも注目されている分野だと思いますが、チェーさんはVRコンテンツの開発でどういったお仕事を担当しているのでしょうか。

チェーさん:VRは基本的に3D制作になるのですが、私はその3Dを作る前に必要な2Dのラフやデザインの制作に携わっています。今まで開発したコンテンツは二つあり、一つはTGS2015でVR体験コーナーとして展示した「サラと毒蛇の王冠」。もう一つは気軽にVR体験ができるスマホゲーム「シドニーと操り王の墓」です。私はVR事業の立ち上げ初期から携わっていたこともあり、VRゲームのコンセプト、ストーリー、セリフ、ゲームデザイン、メインビジュアル制作や3Dキャラクターの監修など、デザイナーの枠を超えて幅広く担当させてもらえました。

チェーさんが携わってきたお仕事

アナザーエデン|チェーさんがメインビジュアル制作を担当

キービジュアル

【VR】サラと毒蛇の王冠|チェーさんがメインビジュアル制作を担当

キービジュアル

【VR】シドニーと操り王の墓|チェーさんがUI/UXを担当

シドニー三面図

― TGS2015では、どのようなVR体験コーナーを展示したのでしょうか。

チェーさん:業界内では盛り上がりを見せている「VR」ですが、まだ世の中に広く浸透しているわけではありません。お客さまが想像しやすいよう、VRの体験イメージ動画をイベント用に制作してスクリーンに投映するなど、まずはお客さまにVRを知ってもらい、より身近に感じてもらえることを一番に展示内容を考えました。

また、VRは今まで一人で体験するものが多かったのですが、TGSはたくさんの人が訪れます。グリーの原点は「人とのつながり」なので、人とコミュニケーションを取りながら数人で同じ体験を楽しめるようなVRゲームを作ろうとコンセプトを固めました。普段会社で仕事をしていると、お客さまの反応を直接見る機会が無いので、TGSで体験しているお客さまの喜ぶ顔を直接見ることができて本当にうれしかったですね。TGSでグリーのVR事業の取り組みをアピールできたのは、会社にとっても自分にとっても本当に良い経験になったと思います。

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幼い頃から憧れ続けた日本のコンテンツ
厳しい軍隊生活も、夢があるから乗り越えられた。

― チェーさんは韓国出身だと伺いましたが、日本の美大に進学したそうですね。なぜ、日本の美大に進学しようと思ったのでしょうか。

チェーさん:両親の仕事の関係で、幼いころから日本のアニメやゲームにたくさん触れ、多くの感動をもらいながら育ってきました。ゲーム・アニメ・マンガの仕事をするなら日本に行ったほうが絶対に成長できるし、世界に挑戦できる機会がつかめると思っていた時に、ある日父から「日本の大学に進学しないか」という話をもらい、背中を押される形で日本の大学に進学することを決意しました。
当時、日本語学校に2年間通ってからでないと入学できない大学が多かったのですが、ちょうどそのころから、京都精華大学は日本語学校に通っていない留学生も受け入れ可能になり、日本で初めてマンガ学部を創設した4年制大学でもあったので、面白そうだと思い受験することにしました。とにかく自分の考えているものを世の中に表現できるスキルがほしかったので、それらが身につけられそうな場所に行きたかったんです。

― 大学3〜4年生になると就職活動が始まりますが、チェーさんはどういった業界を目指していたんですか?

チェーさん:私はマンガ学部で勉強していましたが、学生生活の中でゲームに熱中したことがきっかけとなり、ゲーム業界を志望するようになりました。私は韓国にいたときからゲームが好きだったのですが、まわりに同じような趣味を持つ友人があまりいなかったので、長時間ゲームで遊んだり、ゲームの話で盛り上がったりした思い出はありませんでした。でも、日本にはゲームやアニメに囲まれて育ってきた人たちがたくさんいます。好きなコンテンツを語り合える、そんな当たり前の環境に感動してからというもの、みんなで夜通し好きなゲームで遊び、語り明かす毎日でしたね。そういったこともあって、イラストやキャラクター制作への興味が湧き、ゲーム業界にいきたいと考えるようになったんです。ただ、韓国の男性は「兵役」に服する必要があるので、すぐに就職活動はしませんでした。(※)
※韓国人男性は、19歳~29歳の間の約2年間、軍務に服する義務があります

― 兵役に行かれていたのですね!その2年間は絵を描くことから離れていたんですか?

チェーさん:夜10時〜12時までの2時間は、自習室で勉強できる時間があったので、毎日寝る時間を削って、そこで絵を描いていました。 パソコンは使えても絵を描くソフトは入っていないので、鉛筆で絵を描いてましたね。どうしてもデジタル絵が描きたくなって、こっそりExcelのマスを使ってドット絵を書いたこともあります(笑)。1度ばれてしまったことがあったのですが、「それが君の軍隊生活におけるモチベーションの源泉なんだね」という言葉をかけてもらえて、2年間絵を描き続けることができました。

― 本当に絵やゲームが好きだったのですね……!兵役を終えた後はどうされたのですか。

チェーさん:父の応援もあって、兵役後は韓国にあるアニメーション専門の大学院に入学しました。ですが、商業向けではなく芸術よりなアニメーション制作をする環境だったので、1年ほど通ったのですが、この道は違うと思い退学しました。ゲームの仕事をやりたい気持ちが強く、働くなら日本のゲーム会社で働きたいと思っていたので、そこから日本に戻り、ゲームの勉強をするために東京コミュニケーションアート専門学校に入学しました。
2Dの技術は自分で勉強していたのですが、ゲーム業界では3Dの技術が求められる時代に突入していたため、学校では後々戦える武器を身に着けるために3D専門のゲーム制作を勉強しました。現在の仕事は2D制作がメインですが、3Dで作りやすい2Dデザインやシルエットは何かなど、その3年間で学んだことが今の仕事に生きています。

― 学生時代に3D制作のスキルまで身につけられていたのですね!その後、就職活動はどのように行い、なぜグリーにエントリーしたのですか?

チェーさん:就職活動の時期になると専門学校で在学生の展示会が開催されるので、作品とポートフォリオを展示していたのですが、その展示会にグリー社員(現在のマネージャー)が見にきてくれていて、私に興味があると声をかけてくれたのがきっかけです。その場で2時間くらいゲームについて熱く語りました(笑)。私はどちらかというとコンシューマー業界に行きたいと思っていたのですが、「昔のコンシューマーゲームに劣らない輝きが、今のスマホゲームにもある」「昔から憧れていた有名なゲームクリエイターが、今スマホゲーム業界で活躍している」という話を聞いて、この業界にも興味が湧いたんです。
複数社から内定をもらっていましたが、グリーの人事やマネージャーの熱心な対応に惹かれて、グリーに入社することを決めました。
最近、小学校の時から大好きだったゲーム「クロノ・トリガー」のストーリーを書いていた加藤正人さんがグリーに入社されたのですが、今一緒に「アナザーエーデン」の仕事をしているんです。加藤さんが書いたストーリーのキャラクターを、私が描いていると思うと感慨深いですね。

チェーさんが入社前に手がけた作品

チェーさんの就活ポートフォリオ

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チェーさんが学生時代に描いたイラスト

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チェーさんが兵役期間に描いていた絵

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― 入社してからどのようなお仕事を担当されましたか。

チェーさん:私は入社前から内定者アルバイトとして働いていたのですが、自分の作風と似ていたこともあり、最初に配属されたのは「聖戦ケルベロス」でした。当時のアートディレクターの右腕として、最初はゲームに表示されるバナーやボタンなど、基礎的なUIデザインやイラストを担当していたのですが、ある日「ドラゴンのイラストを描いてほしい」と依頼されたんです。すごくうれしくて、1日で描き上げました(笑)。その絵が採用されて、初めて自分の描いた作品がゲームの中で登場したのを見たときは、本当に感動しました。

チェーさんが携わってきたお仕事

聖戦ケルベロス|チェーさんがイラスト・デザインを担当

01_聖戦ケルベロスメインキャラクター

07_聖戦ケルベロス装飾類02

― ゲームのUIデザイン制作を担当していたことがあったのですね!ゲーム運営にコミットしてみて、自身に何か変化はありましたか。

チェーさん:ゲームの歴史や世界観を把握することで、会議で積極的に発言できるようになり、自分が提案したアイデアやストーリーが、毎月ゲーム内で開催されるイベントで採用されることが増えていきました。
そうした日々の積み重ねの結果、入社して1年半経ったタイミングで「聖戦ケルベロス」のアートディレクターに抜擢してもらえたんです。

ゲーム開発に関わるデザイナーは、ゲーム内に登場するキャラクターを描くイメージが強いかと思います。でも、ゲームで必要なパーツはとても細かいものがたくさんあるので、実際にキャラクターを描いている人は一部の人たちです。私は、キャラクターだけにこだわらず、いろいろな細かいパーツ制作を担当したのですが、アートディレクターとして全体を見るようになってから、その時の経験が非常に役に立っています。

― キャリアアップのスピードが早いですね!では、どういったタイミングでアートディレクターからVR事業に携わるようになったのでしょうか。

チェーさん:このまま「聖戦ケルベロス」を育て続けたい気持ちもあったのですが、アートディレクターになって1年過ぎたころから「0からゲームをつくってみたい」という思いが強くなり、自分の後任を育成して、2015年4月にネイティブゲーム事業に異動しました。そこでVR事業の立ち上げメンバーとしてプロジェクトに参加したのですが、当時はVRの知識なんてもちろんなくて。右も左もわからない状況の中、目の前の仕事をがむしゃらにやり続けたら自分にできることが徐々に増えていき、あれもやりますこれも やりますと引き受けていたら、全部自分が作るようになっていました(笑)。VRゲームのエンディングシーンのクオリティをもっと上げたいと思い、自分でアフターエフェクトを勉強をして、絵コンテを描き、自分の描いたイラストを動かして動画も制作しました。

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メインビジュアルに携わったその先は?
デザインの責任者として
新作ゲーム立ち上げの日を目指す。

― チェーさんはさまざまな仕事に挑戦してこられたと思いますが、1番思い入れのある仕事は何でしょうか。

チェーさん:まさに今携わっている「アナザーエデン」です。私が日本にきて1番やりたかった、ゲームのメインビジュアルやキャラクターデザインを任せてもらっています。自分の掲げた目標に向かって、とにかく目の前の仕事に全力で取り組み続けた結果、尊敬するメンバーに囲まれながら、その憧れていた仕事を任せてもらえている今が、入社してから1番モチベーションが高く、やる気で満ち溢れています。

TGSで「アナザーエデン」を発表した後、2016年1月に公式ホームページを公開し、ニコニコ生放送でゲーム発表会を行ったのですが、リアルタイムで自分の描いたイラストを公開した時に「かわいい!」というコメントが投稿されて、とてもうれしかったです。その日は朝までその放送の録画を繰り返し見ていました(笑)。

― より良い仕事をするために、日頃から意識して努力していることはありますか。

チェーさん:趣味の話とも繋がるのですが、私は学生の頃から演劇やミュージカルなどの舞台鑑賞が好きで、毎年10本ほど見に行っています。ミュージカルは限られた空間と時間の中でセットを変えて、ストーリーを見せたり演出したりと細かい工夫が詰まっています。限られた画面の中でどれだけ世界観を作れるか、情報を構成するところがスマホゲームの条件と似ているんですよね。趣味として楽しみつつも、照明などを使った舞台の細かい演出を意識して見ています。

― チェーさんが思う、グリーで働くクリエイターに求めらるスキルは何ですか。

チェーさん:自分はキャラクターだけしか描かない、描けないと決めつけず、自身の可能性にチャレンジして表現の幅を広げていくことだと思います。私は学校で講義を行うことがあるので、学生の方のポートフォリオを拝見する機会が多いのですが、ゲーム業界を目指す学生は“キャラクターだけ”をデザインしている人が目立ちます。しかし、実際のゲーム開発ではキャラクターをデザインするに留まりません。ボタン、フレーム、装飾など、ゲームを構成するのに必要なパーツはたくさんあります。そういったゲームの細部に関わるデザインもポートフォリオに載せると良いと思います。

スマホゲームはリリースしてからがスタートです。長くお客さまに楽しんでもらうために、何回もデザインパーツをアップデートしていきます。ゲームの世界観をキャラクター以外でどう伝えられるのか、そんなことを考え、表現できる力を身につけることができれば、入社した後も活躍できるはずです。やってみるとキャラクターデザインよりもUIデザインが好きなことに気づいたり、背景を描くのが楽しいと思えたりなど、自身の新たな才能を見つけるきっかけになるかもしれません。

― 今後、チェーさんがグリーで挑戦したいことを教えてください。

チェーさん:「聖戦ケルベロス」「アナザーエデン」での経験を生かし、アートディレクターとして新プロダクトの立ち上げに携わっていきたいです。そのチャンスが来ることを心待ちにしながら、これからも絵を描き続けていきます。

― 常に目標が高く、新しい技術と表現に挑戦し続けるチェーさんの姿勢からは、学べることが沢山あったのではないでしょうか!ストイックに計画的に挑み続けるからこそ、確実に目標を達成して次のステップへと前進できているように感じました。また、努力して成長しているクリエイターに対して、望んだ仕事を提供しているグリーの社内環境は、とても働きやすそうですね。「ないものをつくろう」と新しいものづくりに挑み続けるグリーに興味のある方は、是非一度エントリーしてみてはいかがでしょうか。

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エントリーはこちらから グリー株式会社 コーポレートサイト

(2016.5.19)

著者

後藤あゆみ

はたらくビビビット編集長。 フリーランスで“『ツクル』を仕事にしたい未来の子供たちのために。”を、コンセプトとして活動。クリエイター支援、スタートアップ支援を行っています。おばあちゃんになるまでに美術館をつくるのが夢です 。

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