伝統工芸の職人って何?|仕事百科


みなさんは、伝統工芸品と聞くと何を思い浮かべますか?カップやお皿は、セレクトショップなどでも販売されているので、見たことや触れたことがある人が多いのではないでしょうか。しかし、伝統工芸品を目にすることはあっても、伝統工芸品を手がける職人さんと接する機会は少ないですよね。一体どういう技法で工芸品を作っているのでしょう。
今回は、代表的な伝統工芸技術と、伝統工芸の職人になる方法をご紹介していきます。

編集・執筆/RINA SAITO, AYUPY GOTO

目次

  • 1.伝統工芸とは?
  • 2.代表的な伝統工芸の種類
  • 3.求められるスキル
  • 4.伝統工芸の職人になるには
  • 5.最後に

1.伝統工芸とは?

伝統工芸とは、昔からの材料を使った美術・工芸の技術のことです。大量生産の雑貨とは違い、熟練した技、ハンドメイドであるという点が特徴です。基本的に日用品を指し、手間と時間のかかった高価なものから、手軽に買える範囲のものまでさまざまな工芸品があります。
 
伝統工芸の技術を駆使して作られたものは、「伝統工芸品」と言われ、その中でも、経済産業大臣が指定するものは伝統的工芸品と呼ばれています。伝統的工芸品は、代表的かつ100年以上続いている、そして製造者がある程度存在する、などの条件がついた「伝産法 *」に基づいて選ばれています。その他にも、知事の指定を受けられる「京もの指定工芸品」、「東京都指定伝統工芸品」など県単位の取り組みも行われています。

*伝統的工芸品産業の振興に関する法律
第2条
一  主として日常生活の用に供されるものであること。
二  その製造過程の主要部分が手工業的であること。
三  伝統的な技術又は技法により製造されるものであること。
四  伝統的に使用されてきた原材料が主たる原材料として用いられ、製造されるものであること。
五  一定の地域において少なくない数の者がその製造を行い、又はその製造に従事しているものであること。

  

2.代表的な伝統工芸の種類

陶芸

陶芸は、いわゆる「やきもの」を作る技術のことで、石の粉からできる磁器と土からできる陶器の2種類があります。のり、水、砂状にした色ガラスが配合されている釉薬(ゆうやく)を、やきものにかけることで、ツヤツヤとしたガラス質の表面に仕上げることができます。釉薬をかけないやきものは、植木鉢のようなざらざらとした表面になります。
 

染織

染織は、糸を染め生地を織りながら模様を作っていく織物と、白生地に染料で模様を描く染物があります。他にも、組紐(くみひも)や刺繍などがあります。
 

友禅染(ゆうぜんぞめ)

白生地に色同士が混ざらないよう、のりで線画を描き、模様に合わせて色を塗ります。
そして、最後にのりを洗い流し、細く白い線を残すのが糸目友禅と呼ばれています。

絣織(かすりおり)

白く残して染めた絣糸(かすりいと)を使用して織っていくことで、しま模様や格子模様、絵画のように風景なども表現することができる技法です。
 

木工・竹工

木工・竹工は、色々な種類の木材や竹で皿や入れ物、かごを作る技術です。
 

指物(さしもの)

釘を使わず、凹凸の継ぎ目をつくり、組み合わせることで器や入れ物をつくる技術です。

編物

何百本もの細い竹ひごを編んで形作る技術です。竹ひごをつくるところから職人が行い、部分によって厚みや幅を変えたり、幅の違うものを組み合わせたり色々な表現ができます。

 

漆芸

漆芸は、漆の木からとれる天然樹脂を器に塗ったり、表面に模様を描いたりできる技術です。木や竹はもちろん、革や金属、陶磁などにも塗ることができ、型を作り、麻布に漆を塗り込むこと形を作る、乾漆(かんしつ)という技術もあります。
 

蒔絵(まきえ)

器などの表面に漆で絵を描き、固まらないうちにその上から金粉などをまき、模様を表現する技法です。

螺鈿(らでん)

アワビなどの貝の輝いた部分を0.1mm以下の薄さにして、模様の形に切り、器の表面などに貼り付ける技法です。

 

金工

金工は、大きく分けると金属を溶かし、型に流し込んで作る鋳金(ちゅうきん)と、熱して柔らかくした金属を叩いて作る鍛金(たんきん)、タガネと言われるノミを使って表面を彫って模様を作る彫金(ちょうきん)の3種類の技法があります。

  

3.求められるスキル

一つの技術を淡々と極めるイメージがある、伝統工芸の職人の世界。職人にはどんなスキルが求められるのでしょうか?

□数年、数十年”技術を磨くこと”を継続できること
□黙々と一人で作業できる集中力
□工芸品のクオリティーを高めるための正確さ
□幾重にもある工程を計画し、最後まで作り上げられる力
□道具の開発、適切な手入れ

高度な技術を持つ優れた職人は、通称「人間国宝」で知られている重要無形文化財保持者として国から認定されることもあります。
また、伝産法に基づき、伝統的工芸品産業振興協が実施する試験に受かった職人は伝統工芸士と呼ばれています。しかし、受験するには12年以上の実務経験が必要で、認定される業種はあらかじめ指定されているので、伝統工芸の職人がすべて伝統工芸士になっているわけではありません。

  

4.伝統工芸の職人になるには

伝統工芸の職人になるには、免許や資格は特に必要ありません。学歴も特に関係ありませんが、作る上で一定の技術をもっていることが必須となります。
職人と言えば、世襲制をイメージする方も多いかと思いますが、現在では親族でなくても、知識と技術を身につけることで職人になることが可能です。
学ぶ場所としては、

・各地の工房、専門のメーカーや企業
・大学、専門学校、職業訓練校
・自治体が募集する養成施設

などが代表的です。これらの施設で技術を学んでから、職人の元へ弟子入りしたり、そのまま工房を立ち上げて、独立する場合が多いそうです。

  

5.最後に

伝統工芸の後継者は年々減少傾向にありましたが、近年、希望者が少しずつ増えているようです。職人という道は、常に修行の連続というイメージがあるかもしれませんが、ひとつの素材と向き合い、作品をつくりつづけるという職業は、他では、なかなかないのではないかと思います。手で高品質なもの、長く愛されるものを作る仕事がしたい……という方は、ぜひ進路の一つとして考えてみてはいかがでしょうか。
  

(2018.12.4)
さいとうりな

著者紹介

齊藤梨奈さいとうりな

多摩美術大学 絵画学科の油画専攻に所属しています。 古着屋、雑貨店巡り、服やアクセサリー作りをするのが好きです。
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