インターネットが身近な昨今ですが、「テレビドラマが大好き!」「好きなアイドルやお笑い芸人のラジオは必ずチェックする!」なんて方も多いのではないでしょうか。私たちの生活を豊かにしてくれるテレビやラジオ番組の世界。そこには「構成作家」と呼ばれる方々の存在が必要不可欠です。自分のアイディアによって番組が作られる、裏方ながらも華やかな「構成作家」のお仕事は、実はアートやデザインを学ぶ美大生も、そのスキルを十分に活かすことが出来ます。今回は、「構成作家」の仕事内容や、なり方をご紹介します。編集・執筆/AYUMI TSUDA , YOSHIKO INOUE
イラスト / Miyagi Takumi
1.構成作家とは?
構成作家とは、テレビやラジオの番組を作る際に、番組全体の流れやコーナーごとの企画を考える仕事です。番組ディレクターと話し合い、司会のアナウンサーや出演するタレントの個性を活かすにはどのような構成がいいか、どうすれば面白い番組になるかを考えます。作家さんや番組によっても異なりますが、構成作家の仕事の流れをご紹介します。
構成作家の仕事の流れ
①企画会議に参加する。
ディレクターやプロデューサーによる企画立案を元に、番組の大まかな流れを決めていきます。
②「リサーチ」と呼ばれる情報収集を行う。
番組の方向性が決定すると、書籍をチェックしたりインターネット上で調べものをしたりして、番組を形にするために必要な情報を集めます。
③台本を作成する。
リサーチで得た情報をもとに、番組で使用する台本を作ります。
④制作の許可をもらう。
プロデューサー(番組制作全体の責任者)やディレクター(制作現場の責任者)に台本の内容を確認してもらいます。
⑤ロケに参加する。
スタジオ収録などで使われるロケ(野外撮影)にも参加し、スムーズに進行できるようサポートをします。
他にも、担当した番組の人気が上がると、メディアに掲載するためのインタビューを受けたり、雑誌のコラム連載、書籍の出版、バラエティー番組への出演依頼などさまざまな仕事が舞い込む可能性があります。
2.構成作家と放送作家の違い
構成作家と同じような場面で使う言葉に「放送作家」がありますが、一見似ているようで仕事内容が少し異なります。
- 構成作家……番組の設計図を作る
- 放送作家……番組の中身を作る
構成作家は番組全体のコンセプトや流れ、コーナーごとのおおまかな企画を考えるのに対し、放送作家は番組の演出や出演者のセリフ、ナレーションなどの台本を書くのが仕事です。
しかし近年のテレビ業界では、この2つの職業はほぼ同じものとして捉えられている場合が多いようです。放送作家が番組全体の構成をすることもあれば、構成作家が具体的な演出なども手掛けることもあります。
3.求められるスキル
構成作家になるために必要な資格や学歴というのはありません。多くの人に見てもらえる番組を作るには、一体どのようなスキルが求められるのでしょうか。
- □ 他の人が真似できないような企画を考えられる豊かな発想力
- □ 多くの人に伝えることができる表現力
- □ 好奇心旺盛、新しいものへの探究心
- □ コミュニケーション力
日頃から課題制作に向き合い、アイデアを出すトレーニングをしている美大生は、そこで培った発想力を構成作家の仕事に活かすことができるでしょう。また、自分が考えた企画を採用してもらうには、企画をどう面白く見せテレビ局の人を納得させるかが大事です。美大生は、普段から講評などで自分の作品について紹介する、プレゼンテーションの経験を積んでいるという強みを持っています。さまざまな人の意見から刺激を受け、多様な視点を持ったアイデアを考えることができる学生は、構成作家の仕事に向いているかも知れません。
4.構成作家になるには
2019年現在、テレビなどで活躍している構成作家の方々はそれぞれ異なった経歴の持ち主です。決まった道のりは特に存在しません。それでは、構成作家になるにはどのような方法があるのでしょうか。考えられるものを挙げてみました。
- □ シナリオコンクールに応募する
- □ 養成スクールに通う
- □ 活躍中の構成作家のもとに弟子入りをし、作業を手伝いながら修行する
- □ テレビ局や番組制作会社に入社し、制作や企画の経験を積んで構成作家になる
構成作家に求められるのは、学歴や経歴ではなく、何より「いかにおもしろい番組を作れるか」という実力です。養成スクールや専門学校に通ってないからといって道が閉ざされるわけではありません。その他の分野を専攻している学生でも、普段の制作活動や学校行事、イベントなどで構成作家に役立つ力を鍛えることができます。例えば、学園祭実行委員会に参加して企画・実行力を磨いたり、劇団サークルなどで劇の構成を考えて実践的に力をつけたり、人をまとめる経験があるとコミュニケーション力を身につけたり……というようなことです。
また、「人との繋がり」も大切です。自分の名前で作品が世に出るわけではないので、さまざまな人と連絡を取って自らをアピールし、人脈を広げていかないと仕事に繋がりません。学生のうちから、実際に活躍されている構成作家の方にアプローチしてみるのも良いかもしれません。
5.構成作家を知ろう!
構成作家を知るには
テレビ番組の世界で活躍されている構成作家にはどのような方がいらっしゃるのでしょうか。それを知るには、例えば以下のような方法があります。
▼番組から知る
番組のクレジットを見てみると、「企画:〇〇」「構成:〇〇」のように、その番組に構成作家として関わっている人は誰なのかがわかります。
▼Twitterから知る
Twitterで番組の宣伝や告知をしている作家の方もいらっしゃいます。番組の公式アカウントなどから探すことができます。
▼雑誌から知る
テレビ関係の雑誌を見てみると、インタビュー記事などが載っていることがあります。関わっている番組についてや経歴、普段の生活についても知ることができるかもしれません。
ここからは、筆者(津田)が好きな構成作家3名の方をご紹介します。このお二方も、上記のような方法で活躍を知ることができました。
カツオさん
「全力!脱力タイムズ」「フリースタイルダンジョン」「有吉ぃぃeeeee!」「スクール革命!」「ナカイの窓」「ぐるナイ」他多数のレギュラー番組を持つカツオさん。
早稲田大学在学中に劇団「盗難アジア」を旗揚げし、2005年まで主宰・俳優として活動されていました。放送作家の活動は、2001年に演劇活動と並行して始めたそうです。なんと過去、年間600本の企画書を書いた実績もあるそうです。2019年現在は、隔月のイベント「500円払うんで、いっしょに企画会議しませんか?」や、個人コンテンツ「コント女子」なども運営されています!
今回、お仕事についてメールで教えていただきました。
― 学生生活にしておいて良かったことはありますか?
カツオさん:高校時代に放送作家になりたいと思い、大学時代に劇団を立ち上げて放送作家としての活動も始めました。やりたいことが見つかったら、考えるよりも「その世界に飛び込むこと」が大事だと思います。つまり「具体的に動く」こと。「具体的に動く」と「具体的な答え」が出ます。すると、世界が徐々に変わってきます。頭で考えて、夢を語ってるだけでは何も始まらないことに気づくと、イイ感じになっていくと思います!
― 作家活動を行ううえで大切にしていることを教えてください。
カツオさん:アイディアを世に出す仕事なので、「常に企画を考えること」=「企画会議」を大事にしてます。自分1人で企画を考える時も、仲間で一緒に会議形式でブレストすることもあります。あと、情報収集もなるべく欠かさないようにしてます。
Twitter:@katsuoman8
白武ときお(しらたけ・ときお)さん
白武さんは2019年現在、人気の若手芸人を起用したWEB番組が注目を浴び先見の明を持っているとして話題になっています。これまで、「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!絶対に笑ってはいけないアメリカンポリス24時」「ナイナイバチェラー」「霜降り明星のパパユパユパユ」などを担当されてきました。出演者の良さを最大限に引き出す力をつけるには、様々な映像作品を見て研究する必要があるのかもしれません。過去のインタビューでは、大学時代についてこのように語っています。
Q.大学生活ではどのように過ごされてきたのですか?
A.大学に入り、サークルや部活動をまわってみたのですが、どうも自分に合わない。とことん映画を見る日々に切り替えました。人間関係は、テレビ業界やお笑い業界を志している学生と一緒にいることが多かったです。テレビ業界の人に自らコンタクトを取り、見習い放送作家として活動をスタートしました。
引用 https://www.facebook.com/AmazonStudentJP/photos/a.277313262381376/404336759679025/?type=1&theater
番組以外に、ananWEBではおほしんたろうさんと「モテるクイズ」というコラムを連載されています。「解けば解くほどモテるクイズ」を出題していて、思わず笑ってしまう文章をユーモラスな1コママンガとともに読むことができます。こちらも注目です。
Twitter: @TOKIOCOM
澤井直人(さわい・なおと)さん
澤井さんは劇場で見た芸人に衝撃を受け、大学卒業後吉本NSCに入学され、卒業後は都内の劇場で作家見習いとして活動を開始します。その後劇場を辞め、構成作家になるためにある積極的な行動をとります。当時の出来事について、澤井さんは過去のインタビューでこう語っています。
劇場を辞めてからは、わずかな繋がりを頼りに、東京にいる知り合いに片っぱしから会って、とにかく人を紹介してもらったり、SNSを使って直接アタックしたりもしていました。「1日3人新しい人と会い、澤井を面白いと思ってもらう!」というマイ・ルールも作っていました。数珠つなぎのように何回も繰り返していると、ありがたいことに直接、放送作家の方につなげていただいたり、会うべき放送作家の方の連絡先を教えてもらえたりしたんです。
引用 http://kusagiri.jp/sawainaoto/
澤井さんはフジテレビの「アオハルTV」「直撃!シンソウ坂上」「梅沢富美男のズバッと聞きます!」「世界の何だコレ!?ミステリー」、NHK「チコちゃんに叱られる」など、数多くの人気番組を担当されています。構成作家になるには、自分をアピールする力や、自らプロに連絡をとる積極性が大切ということがわかります。
Twitter: @onaona525
6.最後に
構成作家の一番のやりがいは、自分が提案した企画が形になって、テレビやネットを通じて日本中、さらには世界中の人たちに届けられるところです。美術・デザインの分野に詳しいクリエイティブ系の学生だからこそ作ることができる番組もあると思います。進路に迷った時にはひとつの選択肢として、構成作家という職業を考えてみてはいかがでしょうか。
(2019.3.18)
著者
はたらくビビビット
ポートフォリオとデザインのリファレンスメディア