イラストレーターやデザイナーなど、フリーランスとして活動をしている個人事業主は、年度末に「確定申告」という手続きを行わなければなりません。例えばイラストレーターとして仕事をしていて、ある程度の額の報酬を受け取っていたとすると、学生の身であってもこの手続きをしなくてはなりません。フリーで活動をするということはお金の管理も自分でするということ。この記事では、なかなか知る機会が持てない確定申告周りについて解説していきます。
編集・執筆 / ASAMI KIMURA, AYUPY GOTO
◆ 確定申告とは何かを知ろう!
確定申告とは「一年間の所得を確定させ、そこにかかる税金を計算して納税する手続きのこと」です。所得とは得られた「儲け」のことを指します。
その儲けに対して掛かる税金を所得税といいます。
サラリーマン(特定の企業に勤めている人)も確定申告をしなければいけないケースはありますが、勤めている会社が一箇所の人は、源泉徴収の上で年末調整を済ませれば、基本的に所得税の計算は終わります。あとは会社がやってくれるのです。
しかし、フリーランスの人や複数の企業から収入を得ている人、高収入の副業がある人は、自分自身で所得税の計算をしなければいけません。たとえば学生でも業務委託としてなんらかのまとまった収入を得ていれば、確定申告の必要があります。経営者や個人事業主にとって、確定申告は年度末の一大作業なのです。
なぜ確定申告をしなければならない?
日本には税額を確定させる制度が2つあります。
1. 賦課(ふか)課税制度 ー 都道府県や税務署が税額を計算して確定させる制度。
ex) 個人住民税、固定資産税、自動車税、不動産取得税2. 申告納税制度 ー 納税義務者が自分で税額を計算して確定させる制度。
ex) 所得税、法人税、相続税、贈与税、消費税など大部分の国税
税制の基本は国が税額を定める賦課課税制度でしたが、戦後に民主化の流れで申告納税制度が普及しました。申告納税制度の導入は、国民に税制度を理解してもらうことも狙いになっているといいます。
所得税は申告納税制度に分類されていますので、確定申告として自分で税額を計算する手続きが必要なのです。
確定申告をしないとどうなる?
確定申告をする義務のある人が申告を怠ったり期限に遅れたりすると、自分に戻って来るべきお金を逃すどころかペナルティが課せられる可能性があります。
- ・払い過ぎた税金が戻ってこない。
- ・ペナルティとして罰金的な税金が課せられることがある。
- ・悪質に所得を隠して課税を免れていた場合、重加算税が課される。
所得が規定の額より少ない場合は所得税の課税される対象にはならない代わりに、税金の払い過ぎで損をしていることがあります。あるいはサラリーマンであっても申告をしたほうが良かったりと、確定申告をすることになる状況は人それぞれです。
自分の場合についてはどうなのかは調べておきましょう。
さて、「払い過ぎた税金」という言葉が出てきましたが、確定申告は「年度末に自分で税額を確定させる」はずでした。それなのにどうしてそのような状況が起こるのでしょうか?
それは、次に解説する源泉徴収という仕組みが関係しています。
◆ 具体的な所得税の計算
サラリーマンの年末調整って?
一般的なサラリーマンの所得税の計算の仕方を見ておきましょう。
サラリーマンは毎回の給与から源泉徴収という形で所得税が天引きされ、年末調整で各自が控除を申請し、その差額を調整するというやり方で所得税を納めています。
企業など、給与の支払者が個人に給与を支払う際に、所得税などを事前に差し引いて支払う制度。毎月の給与明細に「所得税」として天引きされている項目があればそれである。所得税は年単位だが、それを月単位で仮に支払うシステム。
サラリーマンが年末に行う、所得税の決定させる手続き。大抵の人はこれで所得税の計算が完了し、確定申告はしないことも多い。所得からの各種控除を申請し、源泉徴収からの所得税の過不足を調整する。確定申告のように難しい作業ではない。
金額からある一定の金額を差し引くこと。収入から規定の項目の額を差し引くことで所得になる額を抑え、そこに掛かる税を抑えることができる。年末調整での控除には、保険料や扶養控除、勤労学生控除などが挙げられ、これらをきちんと申請することによって節税ができる。
簡単にまとめると、算出された所得税が源泉徴収で既に支払われている金額に届かなければその不足分を納税、逆に多く源泉徴収されすぎていたら差額が戻ってくる、ということです。
サラリーマンの場合は、基本的にこれで所得税の計算は終わりの人が多いです。
収入と所得は違う!
確定申告には所得の計算が必要になりますが、
所得と収入が異なるものだということは知っていますか?
所得税は所得に課されるものであって、収入に課されるものではありません。
所得と収入の関係は下の様になります。
所得 = 収入 ー 必要経費
仕事に対して受け取った報酬。報酬を受け取るために使った必要経費が考慮されていないため、そのすべてが儲けではない。
光熱費、物品費、交通費など、儲けを得るために掛かった経費。余分な税金を払わないためには、確定申告のために経費の領収書を保管しておく。
収入から必要経費を控除して計算した儲け。
この「所得=儲け」にのみ、所得税は課されます。
所得税 = 所得 × 税率 ー 控除額(※)
※この「控除額」は納税者の収入における税額の割合に差が出ないよう、最終的な調整のために引かれるもの。所得を計算する為の控除とは異なる。
フリーランス(業務委託)の確定申告
もしあなたがフリーで仕事をしていて業務委託として報酬を得ているとすると、以下の様な仕事で源泉徴収後の金額を受け取っています。
そのためフリーで収入を得ていても、この場合にはそれぞれの仕事に所得税の仮払いが発生しています。
全体の収入が少なくて所得税を支払う必要がないのに天引きされている場合、確定申告をすれば還付金として払いすぎた税金を受け取ることができます。
生計を立てられるほど収入を得ている場合には確実に所得税を納めなくてはいけませんから、還付金が得られなくても確定申告をする必要があります。
フリーランスで活動しているということは、特定の会社に雇用されていなかったり、複数の会社から給与を受け取っていたりします。こちらで掛かった必要経費も考慮されていません。サラリーマンなら年末調整を出せば勤めている企業が所得税の最終的な計算をしてくれますが、フリーランスには決まった会社が無いために自分自身でやらなければいけないのです。
必要経費なども普段から帳簿をつけてすべて自分で申請しなければなりませんから、かなり大変な作業です。
白色申告と青色申告
確定申告には、個人事業主の状況に合わせて選べる2通りの申告方法があります。
白色申告と青色申告です。
※2014年1月以前は白色申告に帳簿の記帳、保存の義務はありませんでしたが、現在は必要です。
経理の経験が無かったり、フリーとしての収入が少ない人には白、
経理ができる(または周りにできる人がいる/税理士に頼む)、節税をしたい、フリーとしての収入が多い人は青が良いようです。
◆ 最後に
いかがでしたか?
ついつい遠ざけがちなお金の問題ですが、何のためにどのような手続きがされているのか、おおよそでも知ることができたでしょうか?この記事では詳しい部分までは触れていませんので、確定申告をする必要があるという方は是非もっと調べてみてください。
また、毎年2月頃には税務署に確定申告相談コーナーができます。初めての方はそちらに行かれるのが良いと思います。
(2015.11.25)
著者
はたらくビビビット
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