就職活動を続けていると、複数の企業から内定をいただくことがあると思います。何かしら魅力を感じて受けていた企業、実際に複数内定をもらってしまうと、どちらに入社しようか悩んでしまうことも……。人生を左右する選択なだけに、簡単には決められないという方が多いのではないでしょうか。今回は、就職先の選択に悩んでいる方や、これから就活をする方向けに仕事を選ぶためのヒントをご紹介します。
編集・執筆 /KANAKO HONDA, AYUPY GOTO
●内定を複数もらったら?まずは自分がどうしたいのかを考えよう
複数内定をもらった場合、まず自分がどのようにしたいのか考える必要があります。具体的に2つの選択肢があげられます。
1つ目はひとつの企業に入社を決め内定を承諾することです。はじめから優先順位を決めて就活をしており、内定をいただいたのが第一希望の企業であれば、すぐに内定承諾の返事をすることができます。
2つ目は、内定を辞退し就職活動を続けるというものです。就職活動の中で気持ちが固まっておりどちらの企業にも入社をする意志がない場合などは内定を辞退することも可能です。
このように、内定をいただく前に自分の気持ちをはっきりさせて、複数内定をいただいてもすぐに対応できるようにすることは、企業の負担も少なくなるため就職活動において大切なことです。しかし、実際はなかなか簡単にはいきません。考えがまとまっていなかったり、第一希望の企業に落ちてしまったりなど事情は色々ありますが、少し時間が欲しいと考える方もいるのではないでしょうか。そのようなときには、実はもうひとつの選択肢があります。
●考える時間が欲しいときには
どうしてもすぐには決められず、考える時間が欲しい場合には内定をいただいた企業に早急に連絡をしましょう。はやく企業に相談することで、企業の方でも準備や対応をすることができるからです。ですが、返事を待っていただくということは、志望度が低いと思われてしまうだけでなく企業に多大なる迷惑をかけているという点を忘れずに、できる限りはやく決断しましょう。
それでは、具体的に企業に連絡する際にはどのようにすればいいのでしょうか。
企業への連絡は電話とメールのどちらを使うべきか
一般的に、企業と連絡を取り合う際には、電話のほうがより丁寧で誠意が伝わるため良いとされています。
しかし、企業とのやりとりを残すため、メールを使用してもかまいません。メールを使用する際には、申し訳ないというお詫びの気持ちが伝わりにくいため、文面には十分注意する必要があります。
電話を使用する場合
電話を使用して企業に連絡する場合は、電話をする時間に十分気をつける必要があります。始業・終業時間であったり、お昼であったりと忙しい時間に電話をかけてしまうと、担当者に迷惑をかけてしまう恐れがあります。また、必ず対応していただいている担当の方と直接お話をしましょう。電話では始めにきちんと自分の名前、内定のお礼、簡潔になにをお願いしたいのかを述べましょう。その際は、あくまでお願いする立場であって、自分の都合で相手に迷惑をかけてしまうといった申し訳ない気持ちを表すことが大切です。
【例文】
お世話になっております。採用の件でご連絡をいたしました◯◯大学の△△と申します。採用ご担当の□□様いらっしゃいますでしょうか?
ーーー
お忙しいところ失礼いたします。
お世話になっております。先ほど内定通知を頂戴した◯◯大学の△△と申します。
この度は、内定のお話ありがとうございました。
本来であれば、早急に入社を承諾するお返事をするべきなのですが、
可能であれば少しの間よく考えた上で決断したいと考えております。
誠に勝手なことで大変恐縮なのですが、◯月◯日まで内定のお返事を待っていただないでしょうか?
メールを使用する場合
メールでは、時間をかけて文章を考えることができるため、電話よりも相談しやすいといった点があります。しかし、気持ちが伝わりにくく、どこかそっけなく感じてしまうことがあるので注意が必要です。また、採用担当の方には毎日数多くのメールが送られてくるため、見落とされてしまう可能性があるということも理解する必要があります。
【例文】
件名:内定のお返事について
株式会社◯◯ 採用ご担当△△様
お世話になっております。
先日、面接をしていただきました◯◯大学□□と申します。
この度は、内定のご連絡をいただきまして誠にありがとうございます。
実は入社のお返事まで少しの猶予をいただきたくご連絡いたしました。
貴社に入社したいと強く思う気持ちに変わりありませんが、
面接の際にお話したように、他社でも内定をいただいているため
もう一度よく考え、決断させていただければと考えております。
気持ちの整理がつき次第、早急にご連絡いたしますので
◯月◯日までお待ちいただくことは可能でしょうか。
内定をいただいたにも関わらず、
私の一方的な都合でご迷惑をおかけして大変申し訳ありませんが、
なにとぞ宜しくお願いいたします。
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◯◯大学◯◯学部◯◯学科
(氏名)□□
電話:ーー
Eメール:ーー
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上記はメールの例文です。あくまでも例文ですので、誠意のこもった自分の文章を送りましょう。
●素早い決断をするために - 考え方のヒント -
悩んだときの考え方
就職先を考える時間をいただいた後は、どのようにしてひとつの企業に絞れば良いのでしょうか。
選び方のヒントとして、クリエイター職で複数内定をいただいた先輩に、どのような行動をとったのか、どのようにして仕事を選択したのかという決め手をお聞きしました。
WEBデザイナー Aさん
Q.悩んだ企業の職種と仕事内容を教えてください。
【A社:デザイナー】
企画・デザイン・コーディングなどWEBデザインからポスターなど紙媒体のグラフィックなどデザイン業務全般
【B社:WEBデザイナー】
スマートデバイス向けのアプリやPC向けのWEBサービスなどのUIデザイン、ポスター・フライヤーなど紙媒体のデザイン
Q.それぞれの会社の魅力を教えてください。
【A社:デザイナー】
・少数精鋭
・サービス制作のほとんどの工程に関わることができる(社員が多いところは完全分業の可能性が多く、UIデザインに関しても部分改修が多い)
・馴染める環境が保証されている(2年間のアルバイト経験から)
・一緒に働きたいと思える人がいる
【B社:WEBデザイナー】
・優秀なデザイナーの先輩がたくさんいる
・デザインとコーディングが分業になっているため、デザインに集中できる
・新入社員に対する研修制度がしっかりとしている
・サービスが多く色々なプロフェッショナルがいるため悩んだときに相談しやすい
Q.悩んだときはどうしましたか?
・それぞれの企業のプラス面とマイナス面を書き出した
・自分が会社に求めるものが何かをもう一度考え、どちらに合うかを照らし合せた
・たくさん悩み納得した答えなら後悔しないと考え、人に相談するよりはまず自分の中で考える時間を大切にした
Q.最終的に決め手となったものは何でしたか?
優秀なデザイナーの先輩がたくさんいることと仮に転職したとしても、やっていけるくらいのスキルをつけられる可能性が十分にあることです。「自分が会社に求めるものは何か?」を考えたときに、長期的にデザイナーとして働くことを踏まえ「いまやりたいことより3年後にやりたいこと、なりたい自分とは?」というように、将来ベースで考えるようにしました。そのときに、一体なにが必要なのか考えることで、B社に行くという答えを見つけることができました。
商品の企画デザイナー Bさん
Q.悩んだ企業の職種と仕事内容を教えてください。
【A社:広告デザイナー】
ポスターやチラシなどの広告
【B社:商品企画デザイナー】
商品の企画・デザイン
Q.それぞれの会社の魅力を教えてください。
【A社:広告デザイナー】
・先輩がいること
・自分でポストカードや文房具をデザインするイベントが社内にあること
【B社:商品企画デザイナー】
・企画からデザイン、商品を店頭に並べるところまですべての工程を行うことができること
Q.悩んだときはどうしましたか?
・ネットで会社の評判を見た
・商品化されているものを見た
・面接内容や人柄を思い出し、自分が入社したときをイメージした
Q.最終的に決め手となったものは何でしたか?
やっぱり人柄と自分が入社した際にやっていけるイメージができたことが決め手だったと思います。あとは自分の作品をどれだけ見てくれたかということです。結果的に、B社に行くことを決めた後、入社式の後の飲み会で社員の方が自分の作品をいくつか覚えてくれていたのは嬉しかったです。
IT企業デザイナー Cさん
Q.悩んだ企業の職種と仕事内容を教えてください。
【A社:IT企業 UI/UXデザイナー】
アプリ・サービスなどの制作
【B社:IT企業 Web広告デザイナー】
インターネット広告やアプリの制作
Q.それぞれの会社の魅力を教えてください。
【A社:IT企業 UI/UXデザイナー】
・自社サービスの種類が豊富であること
・普段日常で使うサービスを多く発信している
・ユーザーとユーザーのつながりを意識したサービスを行っている
【B社:IT企業 Web広告デザイナー】
・インターネット広告ができること(インターネット広告は、街中の広告と異なりクリック数やパターン展開などデザインを制作する力強さがあるところに惹かれた)
Q.悩んだときはどうしましたか?
・実際に働いている社会人や就活サイトの方と直接会って相談した
・両社の働く環境や制度を見比べた
Q.最終的に決め手となったものはなんでしたか?
「今を考えるのではなく、3年後、10年後などのその先の自分がどうなっているかを考える」というアドバイスを頂き、それをふまえて改めて考えたときに、A社の方が幅広いサービスを展開していて自分が挑戦できることが多く、より成長もできるのではないかと思い、A社に決めました。
広告デザイナー Dさん
Q.悩んだ企業の職種と仕事内容を教えてください。
【A社:広告デザイナー】
広告のデザイン
【B社:メーカーのデザイナー】
自社製品のデザイン
Q.それぞれの会社の魅力を教えてください。
【A社:広告デザイナー】
・デザインを専門に扱っている
・デザインのレベルが高い
・企画から関わることができる
・人柄や社内の雰囲気が良い
・様々な仕事をすることができる
【B社:メーカーのデザイナー】
・小さな専門的な部分のデザインのため、その道を究められる
・自社で生産しているため愛着のあるもののデザインができる
・デザイン以外の好きな分野を深められる
・会社の規模がA社に比べて大きい
Q.悩んだときはどうしましたか?
・悩んだ企業の条件や環境を書き出す
・先輩、社会人、親などに相談した
・将来どんなデザイナーになっていたいかをイメージした
Q.最終的に決め手となったものはなんでしたか?
どちらも魅力的で、とても悩みました。そのため、将来デザイナーとして働き続ける際に、どれだけ将来の幅が広がるかという点を考えて選びました。もしB社に入社して、専門的に勉強した後、デザイン全般を行っているA社に行こうと思っても難しいかもしれませんが、逆の場合は可能性があると思いA社に行くことに決めました。
先輩方もたくさん迷い、たくさん考えて就職先を選択していますね。選ぶ基準は人それぞれですが、“今やりたいこと”だけでなく、“将来なりたい自分”を考えて決断するということが共通しているようです。クリエイターとして自身のスキル高めるために仕事を選択するという考え方も面白いですね。実際に先輩たちが行った行動や、決め手となったものを考え方のヒントとして参考にしてみてください。
選ぶときに大切なこと
一番大切なことは、最後は自分で決めるということです。
たくさんの人に相談して、多くの意見を聞くことでより客観的に広い思考を持つことができます。しかし、人によって選ぶ基準は様々で、正しい答えはありません。相談をしていると、まれに「あの人がこう言ってたからそうなのかな。」「たしかにこっちの方が一般的にはいいよね。」と、自分の気持ちがわからなくなってしまうことがあります。他人の基準が自分の基準だと思い込んでしまわないよう意識することを忘れずに、後悔しない選択をしましょう。
●最後に
複数内定をいただくということは、とても嬉しいことです。その一方でたくさん悩んでしまうと思います。しかし、そのように悩み考える時間が出来ることで、これから何をしていきたいのか自分を知る時間がつくれるのだと思います。たくさん悩んだ末に自分で決めた道ですから、きっと間違いではありません。これからクリエイターとして働くみなさんのご活躍を楽しみにしております!
(2016.3.3)
著者
はたらくビビビット
ポートフォリオとデザインのリファレンスメディア