関わるひと全員がハッピーになれる“働き方”をつくりたい|CINRA ディレクター 司馬ゆいかさん

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自分が持っているスキルと憧れている業界や会社のスキルが、マッチしないという人は少なくないと思います。今回お話を伺った司馬さんも、学生時代にWEBディレクターの仕事に憧れたものの、大学卒業3ヶ月前まで、ディレクターとして働くスキルは身についていませんでした。そんな司馬さんがどうやってディレクターとして働けるようになったのか、学生時代に学びきれていない!でもチャレンジしたい!そう思う方にぜひ読んでほしいインタビューです。編集・執筆 / AYUPY GOTO

司馬ゆいかしば ゆいか

Director

1990年 熊本県出身、2013年 武蔵野美術大学造形学部芸術文化学科卒業。
面白法人カヤックにアルバイト入社し、大学卒業後はチームラボ株式会社に新卒で入社。
2014年3月から株式会社CINRAディレクター。

日本のカルチャーを支え、盛り上げる。CINRA独自のディレクション

― CINRAさんは何の仕事をしている会社ですか?

司馬さん:CINRAは3つの自社サービスを運営するメディア事業部と、クライアントの広告制作などを行うクリエイティブ事業部があります。メディア事業部で運営しているサービスは、音楽・アート・デザイン・映画・演劇などのカルチャー情報を紹介するカルチャーメディアCINRA.NETと、クリエイティブ業界に特化した求人情報サイトCINRA.JOBと、「ここでしか買えないアイテム」「ここでしか読めない情報」がぎゅっと詰まったオンラインセレクトショップCINRA.STOREです。
そして、私が所属しているクリエイティブ事業部では、キャンペーンサイト、コーポレートサイト、オウンドメディア、WEBメディアの立ち上げ・運用、グラフィック、映像、グッズ、イベント制作など、様々なプロジェクトの制作進行を行っています。

― いろんなお仕事をされているのですね。司馬さんはクリエイティブ事業部でどのような役割で働いているのでしょうか。

司馬さん:私はディレクターとして働いています。クライアントワークと自社サービス、両方のディレクションを行います。細かな業務でいうとワイヤーフレーム作成や、企画書制作、クライアントとの打ち合わせや、プレゼン、スケジュール進行など…あと、CINRAはライティングに力を入れていて、コピーやテキストもディレクターが担当しています。CINRAに入社したばかりの時は、クライアントの企業理念やキャッチコピーを考えるお仕事も担当しました。

― CINRAのディレクターはコピーも書けないといけないのですね、今まで司馬さんが担当したプロジェクトは、どのようなものがありますか?

司馬さん:仕事内容も様々ですが、音楽やアートといった、カルチャー界隈のWEB制作依頼がやはり多いです。
最近のお仕事で三つ紹介したいのですが、一つ目は、江戸東京博物館の常設展示室のリニューアルを記念した特設サイト(http://edohaku-special.net/)のディレクターを担当しました。
江戸東京博物館に訪れたことがある方は分かるかと思うのですが、館内の展示空間や模型、展示物のクオリティが凄く高くて、丸一日遊んで楽しめる場所になっています。このサイトは常設展示室の休室中に公開されたのですが、WEBサイト上にリニューアル後の会場の展示内容、模型、配置を浮世絵風のイラストでまるっと書き起こすことで、休室中であっても実際に訪れたように楽しめる工夫を施しました。音楽であったり、細かい動きであったり、こだわりの詰まったWEBサイトになっています。
特設サイト用に制作したイラストは、その後、駅貼ポスターやチラシなどにも起用され、結果的にリニューアル全体のプロモーションビジュアルとして使われることになって、とても嬉しかったです。

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江戸東京博物館さま リニューアル特設サイト

そして二つ目は、リクルートさんの「TECH LAB PAAK」というITクリエイターが集まり開発やイベントが行えるスペースの立ち上げにあたり、WEBサイトとプロモーションムービーのディレクションを担当しました(http://techlabpaak.com/)。ターゲットがITクリエイターということもあり、技術的に目を引くもの考えて仕込みました。例えばメニューパネルはただのボタンじゃなくて、マウスオンすると動画が流れる仕様にするなど、驚きのあるWEBサイトになるよう心がけました。

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リクルートさま TECH LAB PAAKサイト

そして三つ目ですが、スペースシャワーTVの開局25周年記念として結成された、The Shower Clubの楽曲”Are You Special?"のための特設サイト(http://www.spaceshowertv.com/25th/song/)を作成しました。再生中の動画のタイミングにあわせてサイト上に歌詞が降ってきたり、スペースシャワーTVのその時々のビジュアルであるStation IDを25年分集めて背景にし、それがどんどん変わっていくなどのギミックにこだわり、仕込みました。

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スペースシャワーTVさま 開局25周年記念 The Shower Club “Are We Special?”特設サイト

― 楽しそうなお仕事ばかりですね!入社した時、ディレクターのお仕事は教えてもらえるのでしょうか?

司馬さん:実は私は中途採用で、WEBの会社は3社目になるので、ディレクターの仕事というよりもCINRAとしての働き方を学ばせていただきました。業界未経験の人も入社しますが、その場合は一定期間は先輩ディレクターについてOJTで学んでいくような形です。

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全員のしあわせを考えて動けるのは、ディレクターにしか出来ないこと

― 司馬さんは学生時代どのように過ごされていたのですか?

司馬さん:高校では美術科に在籍していました。授業の半分が美術だったので自由に作品を制作できる環境にいたのですが、その時は今みたいにSNSが発達していなかったので、見てもらう場所といえば学校の中や家族といった身内の輪だけだったんです。みんなどれだけ作品をつくっても、発表の場はスケールしない。それだけでは制作のモチベーションに繋がらないじゃないですか。みんなの作品を、もっといろんな人に見てもらえるようになりたいという思いから、キュレーションやプロデュース、マネジメントという仕事に興味を持ち始めました。
美術に特化してそのようなことが学べる大学を探して、高校の恩師やお世話になった先輩が全員武蔵美だったこともあり、武蔵野美術大学の芸術文化学科に入学しました。その学科は実技というよりも、編集や企画マネジメントなどといったことを幅広く勉強できる環境だったので、やりたいことにあわせて柔軟に動けそうだなと思ったのです。

― 高校から美術を学ばれていたのですね。大学ではどのような活動をしていたのでしょうか。

司馬さん:「NEWTRAL」というフリーペーパーで、デザインや編集をのお手伝いをしていました。今は活動が止まっているのですが、アイドルグループをプロデュースしたりと今思えば貴重な経験をさせてもらったなと思います。
そのほかだと、アパレルブランドで販売員をしていました。その頃は就職先はアパレル系かなと考えていたので、まさか今自分がインターネットをやっているなんて知ったらびっくりするでしょうね(笑)。
そこではフルタイムで働いていたので「バイトが休みの日に学校に行く」というように元々学業を圧迫していたこともあり(笑)販売員のアルバイトは就活がはじまる時期に卒業しました。

― なるほど、そこからWeb業界への就活というのはどのような経緯があったのですか?

司馬さん:実は就活はほとんどしたことがないんです。アパレルのバイトを辞めてどうしようかなと思っていた時に「画家が描いた絵の面積に応じて値段が付けられ、それを欲しい人に買ってもらうことができる」というちょっと変わったECサイト、「ART-Meter※」のアルバイト求人を見つけたんです。高校生のときに作品の発表の場が無いことでもどかしい思いをしていたのですが、インターネットがあればこんなことができるんだ!とても衝撃的でした。そのサービスを運営していたのが面白法人カヤックでした。カヤックのことはその時は知らなかったのですが、ちょうどアルバイトで働けるところをさがしていたので、興味本位で応募してみたんです。
カヤックにアルバイトで入った当初は、ほぼメインディレクターとしてART-Meterの運営を梱包作業から発送の手配、WEBサービスの運用や記事の更新といったところまで行っていました。そのなかで社員の人たちにも気に入ってもらい、最終的には受託制作事業のお仕事のお手伝いを任せていただくことになりました。

― カヤックからチームラボにはどのタイミングで移動したのでしょうか。

司馬さん:カヤックでは主に、ディレクターのアシスタントをしていたのですが、クライアントの「こういうことを伝えたい」という想いを汲み取って形にして、世の中に届けるという広告の仕事を間近で見て、こういう仕事をやってみたいと思い始めたんですよね。また、サービス運用をしていた経験からも、エンドユーザー、クライアント、そして制作チームといったプロジェクトに関わる全員が幸せになれるようにしたい、そういうディレクターになりたいなと思うようになりました。
ですが、当時はこの業界のことを全く知らないこともあり、もっと他の会社のことも知った方がいいのではないかという考えから、思い切って大学4年生の12月にカヤックを退社したんです。
他の方にも相談してみて、色んな企業さんを紹介していただいたのですが、そんな中一番目に面接に行ったのがチームラボでした。さすがに当時はディレクターとしてのスキルは全然なかったので、いきなり内定という話にはならなかったのですが「まずはアルバイトで働いてみませんか?」と声をかけていただき、チームラボでカタリストのアシスタントとして働くことになりました。

― 在学時代からチームラボさんでアルバイトされていたのですね!

司馬さん:企画やワイヤーフレーム作成など、本格的にディレクター的な業務をやり始めたのは、この頃からでした。実は卒業式の時点では就職の話も出ておらず、これは就職浪人かなあと思っていたのですが、先輩方が推薦してくださったおかげで、入社式の1週間前に内定を頂きました。美大でものづくりの経験はしていましたが、ウェブ制作については経験不足だったのにも関わらず、採用して育ててくださったチームラボの方々には感謝しています。

― WEB制作経験が少なくても内定をもらえるものなのでしょうか。何かコツなどはありますか。

司馬さん:ディレクターでものづくりの経験はあったけどWEB制作経験が少ない人は同期にも数名いました。スキルや能力は後からついてくるものなので、大事なのは「なにが好き」だとか「なにがやりたい
」といった性格や自分の魅力をしっかりと伝えて「この人と働きたい!」と思われることだと思いますし、私が将来採用に関わることになったら、そういう人を採るだろうなと思います。

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入社1年で転職を決意。次に挑戦したいと思ったのは組織づくり。

― 実際チームラボに入社してみて、お仕事はいかがでしたか?

司馬さん:新しいサービスの立ち上げに関わることが多かったです。WEBサイトのみならず、アプリ開発や、システム開発、あと音楽イベントの現場の仕事とかもありましたね。チームラボは上司と部下という構図がほぼないフラットな会社なので、若手でも仕事を任せてもらえる環境は魅力的だと思いました。チームにリーダーはいましたが、基本的に担当カタリストの判断にまかせてくれるので、自由に、かつ責任は持ちつつ、、そういう部分では他の会社では経験できないような成長が出来る会社だと思います。

― そんな中で、転職しようと思ったきっかけはなんだったのでしょうか。

司馬さん:新卒で入社した当初は、漠然と制作がしたいと考えていたのですが、いろんな仕事をしていくうちに、将来自分はどうしたいんだろうと考えるようになりました。そうしたときに高校生やART-Meterで思っていた「こんなに良い物があるんだから、もっと世の中の人たちに知ってもらいたい」という気持ちに立ち返ってみたんです。もっと自分の周りの人を巻き込んで、よりカルチャーに沿った仕事がしたいなあとぼんやり考えていました。そんな時に、転職とは全く別の所でCINRAに興味を持ち、共通の友達に紹介してほしいと伝えた所、翌日には一緒にお食事をしていました。

― そこでCINRAに出会ったのですね!

司馬さん:普通にお食事会だったので高校生からこれまでの経緯や、こういうものが好き、こういうことがしたいけどどうすればいいのか分からないといった相談を、雑談レベルでお話ししていました。そこにたまたま代表の杉浦も同席しており、ちょうどCINRAがディレクターを探していたということもあって、ぜひ一緒に働きませんか?というお誘いを頂きました。
まさかそのようなお話をいただけるとは思っていなかったので私も驚いていたのですが、「確かに、ここなのかもしれない」という直感と運命に惹かれて(笑)その翌月にはCINRAにジョインしていました。

― CINRAに入社してみて、社内環境やお仕事はいかがでしたか?

司馬さん:ちょうど私が入った時期は人が増えてきたり、会社としてもう一歩先に進もうというフェーズでした。その過程で必要になってくるルールや、どうすればチームがより良くなっていくのか?といった組織づくりは、今までいた100~300人規模の会社では既に出来上がっていたもので、制作の仕事をしているだけでは経験できないことです。社会人2年目からこのような環境にいれるのは、会社と共に成長してる感じがとても楽しいです。
また制作面でも、知り合いや友達から「CINRAだったらこういうこと出来る?」とお仕事を頂いたり、逆にお願い出来るようになり、新しいものが生まれるというのがとても新鮮です。

― CINRAの魅力を教えてください!

司馬さん:制作事業だけではなく、自社のメディア運営もやっているので、WEBサイトの制作からコンテンツ制作まで一貫して関わることが出来るのがCINRAの強みであり、制作の人間として幸せなことだと思います。
あと、CINRAの社員は実は女性のほうが多いので、今までいた会社と比べると珍しいことだと思います。また全体的に周りに嫌われないというか、人に好かれるような人が集まっているので、CINRA自体もそんな会社なのかなあと思っています。

― 今後挑戦してみたいことや、目標などはありますか?

司馬さん:今はWEBサイトの制作が実績の大半を占めているのですが、もっと別軸でのディレクションや制作もやっていきたいです。例えば「こういうことがしたいからWEBサイトを作りたいんだけど」というご依頼が来るのですが、よく話を聞くとそれってWEBではなくもっと別のアウトプットの方がフィットするのでは?と思うことがあります。そういうときに、柔軟かつ、よりクライアントの要望にマッチする提案をしたり、実際にその制作をお手伝いしたりということがもっともっと出来るようになりたいですね。あとは冒頭にもお話しましたが、クライアント・エンドユーザー・制作チーム、そして自分も、ハッピーになれるようにプロジェクトを動かしていきたいです。

― 最後に学生にメッセージお願いします。

司馬さん:いろんな人と出会って下さい。仕事をはじめると、特にWEB業界は大体同じ職種の人としか出会えないので。それもそれで楽しいのですが、違う業種の話を聞いて刺激になることもたくさんあるなあと思います。そういう点でいうと、もっと幅広く就職活動をして、同年代の異業種の知り合いを作りたかったなあというのが学生時代の心残りです。
CINRAは現時点(2015年5月)では新卒採用はしていませんが、すごく入りたい!という熱意のある人がいれば、ぜひエントリーしてみてください。

株式会社CINRA

(2015.6.1)

著者

後藤あゆみ

はたらくビビビット編集長。 フリーランスで“『ツクル』を仕事にしたい未来の子供たちのために。”を、コンセプトとして活動。クリエイター支援、スタートアップ支援を行っています。おばあちゃんになるまでに美術館をつくるのが夢です 。

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