企業アンケートでわかった!4つのポイントで読み解く「内定につながるポートフォリオ」の作り方


デザイナーの就活に欠かせないものといえば「ポートフォリオ」。これから作り始める学生の中には、構成や見せ方など何が正解か全く検討がつかない方もいると思います。この記事では、株式会社ビビビットによる企業への採用支援の知見と、2017年に実施した企業アンケートの結果をもとに「内定につながるポートフォリオ」の作り方をご紹介します!

編集・執筆 / WATARU MURATA, YOSHIKO INOUE

目次

  • ●【作り始める前に】ポートフォリオを作る目的、見せる相手を明確に
  • ●【1.構成】業界を意識した作品は前半に!
  • ●【2.作品情報】制作時間、意外に見られてる!?
  • ●【3.バランス】作品ジャンルが偏りすぎないように!
  • ●【4.プレゼン】プレゼンを想定した構成や見せ方を!
  • ●【最後に】

●記事内のアンケート結果について
「クリエイター採用に関するアンケート」主催:株式会社ビビビット
実施時期:2017年秋 | 対象:クリエイター採用を行う企業 | 回答数:74社

●【作り始める前に】ポートフォリオを作る目的、見せる相手を明確に

ポートフォリオを作る際、やってしまいがちなのが「ただの作品集」を作ってしまうことです。「ただの作品集」と「ポートフォリオ」の違いは何なのでしょうか?
ポートフォリオ制作に取り掛かる前に、まず一度「ポートフォリオ」とは何かを再確認しましょう。

ポートフォリオとは、辞書的な意味でいうと大きく3つの意味合いがあります。書類や書類入れの意味合いと、金融用語としての意味合い、そして作品集や写真集などのことを意味します。
デザイナーの就職活動で出てくる用語としてのポートフォリオは、この3番目の【作品集】という意味合い。ですが、単なる作品集ではなく、目的見せる相手を明確に理解しておく必要があります。

就活用のポートフォリオの目的は就業先を見つける……つまり仕事を得るということ、そして見せる相手は、受ける先の企業の人です。

文化祭やデザインイベントなどで作品集やZINEなどを展示することもありますが、そちらの目的はファンづくりや作品を買ってもらうこと、見せる相手はお友達やファンなどになります。状況によってポートフォリオを制作する目的と見せる相手が違い、それによって構成や入れる情報も工夫する必要があるのです。
就活用ポートフォリオには、企業が知りたいこと = 何が作れるのか、どんな人なのか、何がやりたいのかを盛り込み、それを正しく伝える工夫を凝らす必要があります。この意識が抜けていると、優れた作品であっても正しく評価してもらえない可能性があります。

では、具体的にどのような工夫を凝らすべきか、企業のアンケートから「構成」「作品情報」「バランス」「プレゼン」の4つの観点で紐解いていきます。

●【1.構成】業界を意識した作品は前半に!

デザイナーを採用する企業は、候補者に対し“求めるスキル”があり、当然ながらそれを満たした人の方が採用されやすいです。そのため、ポートフォリオでも「その企業が求めるスキルを自分は持っている」ことが伝わると、通りやすくなると言えます。それをアピールする工夫として重要なポイントに「構成」、つまり作品を入れる順番があります。その理由は、企業のポートフォリオ閲覧時間が大きく影響します。

一冊あたりの閲覧時間は1〜5分程度!?

企業の方は数多くの就活生のポートフォリオを見定めなければならないため、ポートフォリオ一冊にあまり長い時間をかけることができません。ビビビット社が実施したアンケートによると、ポートフォリオ一冊当たりの閲覧時間は、半分以上の企業が5分前後とものすごく短い時間であることがわかります。

中には、ポートフォリオの冒頭数ページを見てクオリティが達していなければそれ以降のページは見ない……という場合もあるそうです。それでは、冒頭数ページにどんな作品を入れたら良いのでしょうか。

前半に業界を意識した作品を!

多くの企業は、ポートフォリオを最初のページから見ていきます。そのため、その企業が属する業界に合わせた作品を前半部分に配置すると、自分の希望がより伝わりやすくなります。
「最初の方の作品 = この作者のイチオシ作品群なんだろう」と捉え、前半部分を重点的に評価する企業も少なくなくありません。ポートフォリオを提出するときの状況にもよりますが、基本的には「業界に寄せた作品」かつ「最もクオリティの高い作品」をポートフォリオの最初の方に入れることをおすすめします。
注意したいのが、デザインを学び始めた当初の作品から時系列に並べてしまうこと。そうすると、現時点での最新作品が一番後ろに入ってしまいます。見る側がどんな視点で見ているのか、しっかり把握しておきたいですね。

必要に応じて構成順序を入れ替えよう

就活生の中には、多業界に渡って就活をする学生もいるかと思います。そのような方は、業界によって、作品の構成順序を入れ替えるようにしましょう。構成順序の入れ替えは意外と大変なので、InDesignなど冊子に特化したツールを活用し、抜かりなく準備しましょう。

「InDesign」は冊子デザイン専用のツールですので、ページの入れ替え作業もとても簡単に行えます。
→Adobe InDesign公式サイトはこちら
→InDesignの基本を紹介した記事はこちら

●【2.作品情報】制作時間、意外に見られてる!?


ポートフォリオには、作品についての情報を載せる必要があります。正しく評価してもらうためには企業が求める項目を記載する必要がありますが、企業が何を求めているかなんて、考えたところでわかりませんよね。ということで、企業の方はどんな情報が求めているのか、アンケート結果を見てみましょう!

【制作時間】制作にかかった時間は記録しておこう

最も票の多かったのが「制作時間」。企業の人は、意外と制作時間(その作品をつくるのにかかった時間)を見ているようです。どのくらいのスピードでどのくらいのクオリティを出せるのか知ることは、その学生のレベル感を知る一つのポイントとなります。また、異なる制作時期(例:2019年の6月と2018年の9月など)の作品を載せて制作時間の違いを見せることで、その期間にどのくらいスキルアップしたのかという成長スピードもアピールできます。単なる数字かと思いきや、企業の方はこの数字から学生の多くの情報を読み取っているようです。必ず記載しましょう!

表記方法に関しては、プロジェクトやグループワークなど中長期的な取り組みは、大まかな期間(例:約1ヶ月)を記載すれば良いですが、1枚絵・グラフィックなど短期間の制作の場合は実際の作業時間(例:15時間)を記載するようにしましょう。
また、プロジェクト全体の所要時間の中で、どのプロセスにどれくらい時間をかけたかの記載もおすすめです。それを書くことによって、時間を意識した制作ができているかどうかを判断することができます。

【コンセプト・工夫した点】簡潔に言語化し、レイアウトを工夫しよう

そのほかにも、コンセプト工夫した点も多くの票を集めました。コンセプトや工夫した点は、作品を見せるだけでは伝わりません。言語化して初めて伝わる要素ですので、ポートフォリオに記載する必要があります。ただし、多くの学生がやってしまいがちなミスとして、事細かに記載しすぎて逆にわかりにくくなってしまうというものがあります。説明は簡潔に記載し、パッと見て「何がコンセプトなのか」「どこをどう工夫したのか」がわかるようにレイアウトを工夫してみましょう。

あるグラフィックデザイナーの就活用ポートフォリオの中から、1ページを見てみましょう。

Aさんのポートフォリオには、このように制作に至るまでの流れやコンセプト、ターゲットなどを1ページにわかりやすくまとめてあり、とても参考になります。こうすることによって、初めて見た人でも全体像や制作者の目的などが理解しやすくなります。
→Aさんのポートフォリオを詳しくご紹介した記事はこちら

●【3.バランス】作品ジャンルが偏りすぎないように!

ポートフォリオには、さまざまなジャンルの作品を載せ、ジャンルが偏りすぎないように心がけましょう。
例えば、ゲームデザイナーのBさんのポートフォリオ。写真はお見せできませんが、ポートフォリオの中身をグラフにしました。

前半に志望業界であるキャラクターデザイン、そしてその次にコンセプトアートの作品も載せています。
こうすることで、キャラクターデザイナー枠で選考していた企業も、「コンセプトアートに関する業務も任せられるかも」と考えることができます。もしもその企業とは異なる他ジャンルの作品がある場合は、ぜひ載せるようにしましょう。ただし、すべてのジャンルを同じくらいの量にしてしまうと、「この人は結局何をしたいのかわからない」という印象になってしまう場合もあります。
そうはならないよう、アピールしたい作品は分量多めに、前半に。その他の作品は後半に、補足程度に掲載を意識するようにしましょう。全体のバランスを考えながら、企業が求めるスキルに加えて幅広い仕事をこなせることもアピールできると良いですね!

前に登場したAさんのポートフォリオの中身もグラフで見てみましょう。

グラフィックデザイナー志望のためグラフィック系の作品群ですが、その中でブランディング、エディトリアル、パッケージ……と幅を出しています。
AさんもBさんもそれぞれ目指しているジャンルに偏ることなく、さまざまな作品をポートフォリオに掲載しています。

●【4.プレゼン】プレゼンを想定した構成や見せ方を!

就職活動では、面接などの場面でポートフォリオを使ったプレゼンを求められることがあります。そのため、プレゼンで使うことを見越したポートフォリオの構成や見せ方になっていると尚良いです。企業によっては、「ポートフォリオについて◯分間でプレゼンしてください」と、時間を指定する場合もあります。つくったポートフォリオを口頭で5分でまとめるなら、10分でまとめるなら……と準備しておくのもおすすめです。プレゼンでは、「簡潔に伝える」ことが重要です。一番伝えたいことは何なのかをよく考え、簡潔にまとめるようにしましょう。

プレゼン時の工夫として、実物を用意するのも一つのポイントです。例えばWEBの作品や映像作品、パッケージデザインの作品などは、静止画を載せるよりも、実際に動くもの・触れるものの方が作品について伝わりやすいです。ポートフォリオにデモページのQRコードや作品の実物を貼るなど、その作品をより良く見せる方法を考えてみましょう!

参考記事:あなたの魅力を伝えよう!
ポートフォリオ面接で大切にしたいこと
参考記事:伝え方次第で評価が変わる、
就職活動のポートフォリオプレゼンで大切にしたいこと

●最後に

「構成」「作品情報」「バランス」「プレゼン」の4つの観点で、ポートフォリオ制作のポイントを紹介しました。何かと時間のかかるポートフォリオ制作ですが、ぜひこの記事を活かして取り組んでみてほしいです。また、今回は紙のポートフォリオについてですが、ポートフォリオはWEBでも作成できます。特にWEB業界や映像業界内定者は、WEBポートフォリオのみで就活を終えた人もいるようです。自身でコーディングし作るのも良いですが、このメディアの兄弟サイトのViViViT含め、投稿型ポートフォリオサイトやSNSを活用してみてください!

ポートフォリオが一通り完成できたら、ぜひ一度、友達など自分以外の人に見てもらい、客観的な視点で評価をしてもらいましょう。
それをもとに修正を繰り返し、より良いポートフォリオへとブラッシュアップしていきましょう!
ポートフォリオのお手本がいっぱい!ポートフォリオ百科


(2019/07/24更新)

(2019.6.28)

著者

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村田亘

法政大学大学院情報科学研究科の修士1年生。エンジニアリングとデザインの二刀流。UIUXデザインを勉強中。

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