作品クオリティと論理的思考。見せ方次第で、評価は作品ジャンルを越える|ポートフォリオ百科IT業界デザイナー

今回ご紹介するのは、IT業界で主にグッズデザインを手掛けるデザイナー・汐音さんのポートフォリオです。ラメ加工が施された青色の表紙が印象的で、中を開くと「海」をイメージしたイラストが登場します。IT業界内定ポートフォリオながら、入っている作品のメインジャンルはグラフィック系。コンセプト・ターゲット・制作の流れなどを論理的に説明できていることと、企業からのスカウトから始まったという選考フローが鍵となったようです。
「一冊を通して自分をプレゼンする気持ちでつくった」というポートフォリオを、さっそく覗いてみましょう!
編集・執筆 /YOSHIKO INOUE

汐音 さん

武蔵野美術大学卒業
卒業後IT業界に就職し、現在はグッズデザインの仕事をメインに行っている

PICK UP!ポートフォリオのこだわり

A4でもダイナミックに見せたい!プレゼンを想定した工夫

汐音さん:A4のコンパクトサイズでもプレゼンで目立てるように、力を入れた制作部分は大きく開ける袋とじ構造にしました。

作品ジャンルが多様だからこそ!アイコンを目印にして見やすく


汐音さん:学んでいたことや自主制作など制作のジャンルが多めだったため、カテゴリを分けてプレゼンの際に抜粋したり、企業別にページ数を増減させやすい構成にしました。

▼CHECK!カテゴリ分けの目印は?
●オリジナルのアイコンを制作


編集部:「パッケージデザイン」や「イラストレーション」「展示」など、作品ごとのカテゴリ分けはオリジナルのアイコンを制作。各作品ページの左上に載せ、おしゃれなデザインでページを華やかにもしています。アイコンの見方は冒頭ページで説明されているため、読み手に親切です!


ポートフォリオ一問一答

●このポートフォリオを提出した業界

広告・パッケージデザイン・IT業界

●コンセプト

「自分の制作の海」

▼CHECK!コンセプト文は?
●“今まで学んできた技術の深まり”を海の水深にたとえ、「制作の海」をコンセプトに

地球の海の最大水深はマリアナ海溝で、10000m を超えます。
生まれてから7500日がすぎました。1日を水深1m に例えて、7500m 
ずいぶん深いところまでやってきました
年月を水深に例えて、海をイメージしたポートフォリオです。
私の " 制作の海 " を覗いてみてください。

●ポートフォリオの構成

  • 表紙
  • 自己紹介ページ
  • 学校課題
  • アルバイト、インターン先の成果物
  • 自主制作

▼インターン制作物やLINEスタンプ、展示の様子など、それぞれ最適な見せ方でレイアウトしている


●制作時期

大学3年生の冬頃〜4年生の春にかけて

●制作プロセス

  1. 作品をピックアップ
  2. 写真の撮影・編集
  3. 構成を決める
  4. InDesignで誌面編集
  5. 用紙の検討と購入
  6. 自宅プリンターで印刷
  7. キンコーズで製本

●制作に使用したソフト

InDesign , Illustrator , Photoshop

●印刷 / 製本方法

自宅プリンター / キンコーズ

▼表紙は、深海のイメージに合う濃いブルーにきらめく紙を使用。ラメ加工が施されている

●サイズ / ページ数

A4 / 61ページ

●制作にかかった費用

約5万円

●制作するうえで参考にしたもの

学校の先輩や、ビビビットのイベント

●ViViViTページのこだわり、使い分け

汐音さん:ViViViT(ビビビット)ページの方は、さまざまな企業から興味を持っていただけるように、作品数を多く、細かいカテゴリで掲載していました。
冊子のポートフォリオでは、提出企業ごとにカテゴリを絞って見やすくしたバージョンを作るなどページ数をコントロールし使っていました。

▼メインビジュアルはいろんな作品を集めたダイジェストのようになっている。(クリックで拡大)

●これからポートフォリオを制作する人へのアドバイス

汐音さん:ポートフォリオ制作は人によっていろいろな形があり、どんなものを作るのか迷ってしまうことが多いと思います。私も作り始めはかっこいいポートフォリオを作りたくて、かなり試行錯誤し、迷走してしまいました。
ポートフォリオは自分の技術や人柄がダイレクトに企業へ伝わるものだと思います。一冊を通して自分をプレゼンする気持ちで、見る相手のことを考えて作ることが一番大切だと感じました。ぜひ自分らしい一冊を目指してみてください!


はたらくビビビット編集部より

汐音さんのポートフォリオは、「IT業界に受かるポートフォリオの王道」からは遠く感じるかもしれません。汐音さん自身も就活当初はIT業界を視野に入れておらず、ViViViTでWEBポートフォリオを公開したことをきっかけに説明会や選考に参加するようになったそうです。最終的にはつくるモノよりも「自分と空気感の合いそうな会社」を第一に求めるようになり、現在のIT系企業へ入社を決めたのだとか。
自社サービスを展開しているIT系企業の場合、ノベルティやパンフレットなど、UIデザイン以外の商材をインハウスデザイナーがデザインすることがあります。そういった企業は、UIやWEBに強いデザイナーだけでなく、グラフィックに強いデザイナーの採用枠も設けている場合があります。これらは企業やタイミングによるものなので「IT業界がそう」とは言えませんが、グラフィックが得意で「WEBやUIデザインにも興味がある」という方にも、チャンスは大いにあるということをぜひ知っていただきたいです。
見る人のことを第一に考えた、ホスピタリティ溢れた汐音さんのポートフォリオ。目指す業界に関わらず、レイアウトや情報の見せ方をぜひ参考にしてみてください。
汐音さん、ありがとうございました!



(2019.9.30)

著者

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井上佳子

はたらくビビビット編集長。 株式会社ビビビットの社員です。ポートフォリオづくりに役立つ情報発信を目指します。 Twitter

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