近年、“キュレーションメディア”と呼ばれる媒体が注目されたことから、「キュレーション」という言葉を耳にすることが増えました。美術・デザイン業界では、「キュレーション」を仕事にしている人のことを「キュレーター」と呼びます。主に、美術館やギャラリー等の展示会で登場する「キュレーター」という仕事は、普段どのような業務を行っているのでしょうか?今回はそんな「キュレーター」についてご紹介したいと思います。
編集・執筆 / RINA SAITO, AYUPY GOTO
イラスト / Miyagi Takumi
目次
- 1.キュレーターとは?
- 2.いろいろな場所にいる、キュレーター
- 3.キュレーターになるには
- 4.現在活躍するキュレーター
1. キュレーターとは?
キュレーター
キュレーターとは、主に、博物館や美術館などで作品収集や研究、調査を行う専門職のことを指します。
ですが最近では、「キュレーションメディア」などと使われるように、情報収集から編集、そして発信までを行う仕事をしている人々もキュレーターと呼ばれています。
日本でのキュレーターは「学芸員」という呼び名で昔から存在する職業です。美術館などに所属するキュレーターを「学芸員」、フリーランスのキュレーターを「キュレーター」または「インディペンデントキュレーター」と呼び、使い分けてることもあるそうですが、現在では、美術館に所属する学芸員もそのまま「キュレーター」と名乗ることも多くなってきています。
2.いろいろな場所にいる、キュレーター
「キュレーター」という呼ばれ方は、博物館や美術館などの美術分野、特に現代美術でよく用いられます。
ですが、日本では、それ以外の場所でも「博物館法」で定められた「館」や「園」がつく施設、つまりは動物館・水族館・植物館・科学館などにも、必要な専門職としてキュレーターが存在するんです。しかし美術館以外では、まだ「学芸員」という呼ばれ方が一般的です。
▼美術館のキュレーターの種類
キュレーターは、決まったテーマに沿って、特別展の企画から監督までを執り行う、プロデューサーのような役割の「ミュージアム・キュレーター」と収蔵する作品の収集、保管、展示を担当する「コレクション・キュレーター」が存在します。
3.キュレーターになるには
必要なスキル
美術に関するキュレーターになるには、学芸員資格を取得する必要があります。国立の美術館では、キュレーターは「研究員」となるため、学芸員資格が必要ない場合もありますが、公立の美術館では、学芸員資格が大抵の場合必須となります。
資格を取る方法
学芸員資格を取るには、主に以下の2つの方法があります。
①大学で学芸員資格に関する授業を履修し、単位を取得する。
②文部科学省が実施する認定試験を受験し、合格する。
しかし、実際に学芸員資格を取得しても、実際に学芸員として採用されるのは難しく、毎年数名の募集枠に、100人以上が応募しているケースが多いです。
実際に採用されても、給与待遇が悪いことから近年問題になっています。
文部科学省:学芸員について
http://www.mext.go.jp/a_menu/shougai/gakugei/1288649.html
参考:「現代美術キュレーターハンドブック」難波 祐子著
4.現在活躍するキュレーター
現在活躍している日本人のキュレーターを紹介します。
・ 長谷川祐子さん (はせがわ・ゆうこ)
▲長谷川祐子さんがキュレーションを務めた「東京アートミーティングⅥ"TOKYO"-見えない都市を見せる」(2015)
<HP http://www.mot-art-museum.jp/exhibition/TAM6-tokyo.html >
現在、東京都現代美術館チーフキュレーターを務めている、長谷川祐子さん。2016年より新設された、東京藝術大学大学院 国際芸術創造研究科 アートプロデュース専攻の教授も務められています。2017年の今年は、「第7回モスクワ国際現代美術ビエンナーレ」でメインである「Clouds⇆Fores」のキュレーションを担当しました。
著書
「破壊しに、と彼女たちは言う
──柔らかに境界を横断する女性アーティストたち」
「キュレーション 知と感性を揺さぶる力」
「「なぜ?」から始める現代アート」
「女の子のための現代アート入門-MOTコレクションを中心に」
・ 鷲田めるろさん (わしだ・めるろ)
▲鷲田めるろさんがキュレーションを務めた「妹島和世+西沢立衛/SANAA」展 」(2005)
<引用 | http://www.kanazawa21.jp/exhibit/sanaa_museum/sanaa/index.html >
<HP https://www.kanazawa21.jpp >
現在、金沢21世紀美術館のキュレーターを務めている、鷲田めるろさん。2017年の今年は、ヴェネツィア・ビエンナーレ 日本館のキュレーションを担当しました。
・ 住友文彦さん (すみとも・くみひこ)
▲住友文彦さんが館長を務める「アーツ前橋」
<引用 | http://www.museum.or.jp/modules/im_museum/?controller=museum&input[id]=17499 >
<HP https://www.artsmaebashi.jp >
現在、アーツ前橋館長を務められている、住友文彦さん。2016年より新設された、東京藝術大学大学院 国際芸術創造研究科 アートプロデュース専攻の教授も務められています。
共著
「キュレーターになる!」
「21世紀における芸術の役割」
4. 最後に
今回は美術業界のキュレーターという仕事についてご紹介しました。キュレーターは、普段生活しているなかで接する機会が少ない職業だと思います。いつも行く美術館の展示や動物園、水族館はこういった学芸員やキュレーターの方々によって企画され、運営されています。キュレーターの存在を知ったことで、また違った視点から展示会や美術館、博物館などを楽しむことができるのではないでしょうか。
(2017.12.26)
著者
はたらくビビビット
ポートフォリオとデザインのリファレンスメディア