みなさんは【ロングライフデザイン】という言葉を知っていますか?大量消費社会と呼ばれる現代、たくさんのモノが溢れ使い捨てられています。その中で、モノとの付き合い方が見直されるようになり、「長く作られ・使われ・愛され続けているもの」の価値が再評価されるようになりました。このような【ロングライフデザイン】は私たちの身近な場所に存在しています。今回はさまざまな実例とともに【ロングライフデザイン】について紹介します。
編集・執筆 / Ayako Yamada, AYUPY GOTO
イラスト / Miyagi Takumi
目次
- 1. ロングライフデザインって何?
- 2. ロングライフデザインの10か条
- 3. グッドデザイン・ロングライフデザイン賞
- 4. ロングライフデザインから学ぶこと
- 5. 最後に
1. ロングライフデザインって何?
1. ロングライフデザインって何?
人々の暮らしの中で長く使い続けられているデザインを【ロングライフデザイン】と呼びます。これは、long(=長い) と life(=命) を組み合わせた和製の造語で、流行に左右されることのない普遍的で優れたデザインが【ロングライフデザイン】であると言えます。
2. ロングライフデザインの10か条
2. ロングライフデザインの10か条
ロングライフデザイン活動家のナガオカケンメイさんは、ロングライフデザインをコンセプトとした「D&DEPARTMENT PROJECT」を主催しています。その中で、ロングライフデザインは形状や意匠のことだけではなく、モノを作る・売るなどのデザインを取り巻く環境が揃ってこそ生まれるものだという考えで、「ロングライフデザインの10ヶ条」を掲げています。
[ ロングライフデザインの10か条 ]
1. 修理 …… 修理をして使い続けられる体制や方法があること。
2. 価格 …… 作り手の継続していく経済状態を生みつづける適正な価格であること。
3. 販売 …… 売り場に作り手の思いを伝える強い意志があること。
4. 作る …… 作り手に「ものづくり」への愛があること。
5. 機能 …… 使いやすいこと。機能的であること。
6. 安全 …… 危険な要素がないこと。安全であること。
7. 計画生産 …… あくまで計画された生産数であること。予測が出来ていること。
8. 使い手 …… 使う側が、その商品にまつわる商品以外に関心が継続する仕組みがあること。
9. 環境 …… いつの時代の環境にも配慮があること。
10. デザイン …… 美しいこと。
引用:D&DEPARTMENT PROJECT 公式サイト
「D&DEPARTMENT PROJECT」では、日本や世界のロングライフデザインを集めたショップ「D&DEPARTMENT」や、47都道府県それぞれの土地で長く続くデザインを観光ガイドとしてまとめた「d design travel」など、ロングライフデザインに関わるさまざまな活動を行なっています。
3. グッドデザイン・ロングライフデザイン賞
3. グッドデザイン・ロングライフデザイン賞
グッドデザイン賞については聞いたことがある人も多いかと思いますが、その中に「グッドデザイン・ロングライフデザイン賞」があります。この賞では、「10年以上継続的に提供されている、広く支持されている商品やサービス」を対象に、長年人々に愛されている優れたデザインを表彰しています。実は1962年からある賞なのですが、近年人々のロングライフデザインという価値観の高まりとともに、改めて注目されています。「グッドデザイン・ロングライフデザイン賞」は一般のユーザーから推薦を募集しているのが特徴で、人々の日々の暮らしの中での意見がより反映される仕組みとなっています。
過去の受賞作
これまでに「グッドデザイン・ロングライフデザイン賞」を受賞したものの一部を紹介します。一覧はこちらから。
● フラットファイル [コクヨ株式会社] / 2016年度受賞
コクヨのフラットファイルは誰もが一度は手にしたことがあるのではないでしょうか。手に馴染む紙質やシンプルながら丈夫な作りで、長年使われ続けています。審査でも、誰もが"ファイルの定番"としてイメージできる点が評価されています。
● カロリーメイト ブロック [大塚製薬 株式会社] / 2014年度受賞
黄色にクラシカルなロゴが印象的なパッケージは、発売から30年以上もの間当初のイメージを維持し、今も色褪せない存在感で多くの人から支持されています。生活の中の幅広い場面で、人々の健康を支えています。
● 金鳥の渦巻 [大日本除虫菊株式会社] / 2011年度受賞
日本の夏には欠かせない、キンチョーの蚊取り線香。なんと明治時代から100年以上も愛されている超ロングセラー商品なんです。東日本大震災以降、節電や省エネといった観点で改めて評価が高まっています。
4. ロングライフデザインから学ぶこと
4. ロングライフデザインから学ぶこと
これまでロングライフデザインについて紹介してきましたが、どうしたらロングライフデザインを生みだすことができるのでしょうか。
ロングライフデザインとして評価されている商品やプロダクトの共通点を探してみると、以下のポイントが見えてきました。
・機能的で美しい
・無駄がなくシンプル
・控えめで大人しい
・品質が高く丈夫
・普遍的
デザインというと革新的で目を引くアイデアに気を取られがちですが、ロングライフデザインに求められるのは、長く使っていくための心地よさです。
人々の暮らしの中で使われるとき本当に必要なものは何なのか、本質を捉えてデザインすることが、ロングライフデザインを生みだすために重要です。
5. 最後に
5. 最後に
ロングライフデザインを考えることは、ユーザーの視点からも作り手の視点からも多くの学びを与えてくれます。日々の暮らしを見つめ直してみたとき、あなたが「なくてはならない」と感じるモノはなんでしょうか。長年愛用しているモノや、なんとなくしっくりくるお気に入りのモノには、そう感じさせる優れたデザインがあるものです。私たちの身近には、普段意識していないロングライフデザインがまだまだあります。身近にあるロングライフデザインを探してみましょう。
また、先ほど紹介した「グッドデザイン・ロングライフデザイン賞」では、ロングライフデザイン賞にふさわしい商品・サービスのデザインの推薦を募集しています。あなたの一押しのデザインを推薦するチャンスです!
ぜひ問い合わせてみてくださいね。
(2018.5.8)
著者
はたらくビビビット
ポートフォリオとデザインのリファレンスメディア