美しく文字を魅せる技法「カリグラフィー」とは?

カリグラフィー3

皆さんはカリグラフィー(calligraphy)を知っていますか?
カリグラフィーとは、ギリシャ語で「美しい書き物」を意味し、文字を美しく見せるための手法のことを指します。カリグラフィーの歴史は古く、ヨーロッパではグリーティングカード・名刺・看板・表札など、様々なスタイルで日常生活に溶け込んできました。日本でも、近年ではクリスマスカードやバースデーカード、結婚式のウェディングボードなど、目にする機会が増えています。今回は手書きのような温もりと、筆とは違った美しい線を生み出す「カリグラフィー」の魅力についてご紹介していきたいと思います。
編集・執筆 / ARAAKEMAYU, AYUPY GOTO

● カリグラフィーとは

美しい文字の手法 「 カリグラフィー / calligraphy 」

カリグラフィーとは、西洋や中東などにおける文字を美しく見せる手法のことを言います。字を美しく見せる書法という面で、日本の書道など東洋の書と共通する部分があります。しかしカリグラフィーは、筆ではなく筆記やペン、またそれに類する道具を用いて表現し、毛筆とは違った線の美しい文字を書くことができます。

描いてるところを見てみよう!


線の美しさに思わず息を飲んでしまいます。ペンの種類やペン先を変えて様々な線の文字を生み出すことができます。

書体の種類

カリグラフィーには大まかに分けてゴシック体・イタリック体・カッパープレート体の種類があります。

・ゴシック体

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▲ゴシックアドラータ
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%83%AA%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%BC

紙が高価であった時代に、より多くの文字を書き留めるために、角張って余白の少ない文字の形が特徴のゴシック体。別名でブラックレターとも呼ばれています。

・イタリック体

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▲ヒューマニスト体
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%83%AA%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%BC

イタリック体はより速く書くための日常的な書体として生まれました。可読性の高さと線の美しさから、ローマ教皇庁の教科書にも使われるようになりました。

・カッパープレート体

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▲カッパープレート体
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%83%AA%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%BC

イタリック体をさらに速く書けるように変化させて生まれたカッパープレート体。上のゴシック体、イタリック体は平らなペン先の角度の違いを使って線の太さを変えるの対して、カッパープレート体は細いペン先を使い筆圧の変化によって太さを変えます。

● カリグラフィーの歴史

カリグラフィーの由来

カリグラフィーの語源は、ギリシア語の「CALLI(美しく)」「GRAPHEIN(書くこと)」に由来しています。このことからもわかるように、カリグラフィーの定義は、美しい線によってつくられた美しい文字表現とされています。

古代から伝われ歴史あるカリグラフィー

現在のカリグラフィーの元となっているのは、ローマ時代の碑文に使われていた「ローマンキャピタル」という大文字体で、2000年以上経った今日でも大文字活字の基本として使われているほど美しいプロポーションを持つこの文字は、カリグラフィーにおいても最も重要な書体だと言えます。

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▲ ローマ時代の碑文に使われた「 ローマンキャピタル 」(http://fmstudio.jpn.org/blog/2015/02/roman-capital.html)

4世紀になり、写本の本文用文字として、「アンシャル体」というより書きやすい書体が生まれ、ヨーロッパ大陸各地でさまざまな書体が独自に発展していきました。

8世紀末には、書体を統一しようとする動きが起こり、「カロリンジャン」という小文字体が作られました。そして11、12世紀には、一枚の紙により多くの文字を書く必要性が出てきたため、文字の幅が狭く行間も少ないゴシック体に発展していきました。
15世紀中頃には、活版印刷術が発明されます。当初の活字には、ゴシック体が使われていたのですが、イタリアでは、「カロリンジャン」を手本にした活字がつくられ、これが現在の欧文活字のモデルとなりました。

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▲ 小文字体「 カロリンジャン 」(http://fmstudio.jpn.org/blog/2015/02/roman-capital.html)

そこから、「ヒューマニスト・ミナスキュール」に傾斜がつき、文字幅が狭くなり、続けて書ける文字いわゆるイタリック体も生まれました。その後、高い技術を持った書家たちが登場し、イタリック体は華美な装飾を持つカリグラフィーの代表的な書体となりました。しかし、印刷技術の発展が進むにつれ、手書き文字の必要性が薄れていきました。
そして、再びカリグラフィーが注目されたのは19世紀後半以降でした。イギリスで行われたアーツクラフト運動から影響を受けたエドワード・ジョンストンは、研究を重ね、現代に蘇らせた美しいカリグラフィーは世界各地に広まり、現在に至ります。

● カリグラフィーに必要な道具

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( http://press.share-wis.com/calligraphy-tool-price )

カリグラフィーでは様々な種類の文字を書くためには、それと同様にペンの種類やペン先を変えていかなければなりません。ここではカリグラフィーするために必要な道具を紹介していきたいと思います。

ペン先

ほとんどの場合は先端が平らになったペン先を用いる。書きたい文字によってペン先を変える必要性があります。

リザーバー

インクを溜めておくための小さな部品。

ペン軸

ペン先と合うものを選びます。

インク

耐水性のものはペン先を詰まらせることがあるので避け、水性で、できれば耐光性のものがいいです。カラーインクや墨、絵の具などを使うこともあります。

万年筆

カリグラフィー用のペン先のついた万年筆もあります。カラーインクも使えますが、色が濁りやすいです。また、一般的なペン先と比べると、細い線を書いた際にややシャープさに欠けることがあります。

マーカー

手軽に楽しむ場合や試し書きの際には便利です。太さや色も多くあります。ただし褪色しやすいので、本格的な使用には不向きです。

定規、ディバイダ

ベースラインなどのガイドラインを引く際に用います。

傾斜板

市販品もあるが、平らな板を本などにたてかけても大丈夫です。

● カリグラフィー × デザイン

現在では、カリグラフィを用いたデザインも注目されています。ここでは、カリグラフィー×デザインを紹介していきたいと思います。

カリグラフィー × 日本語

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( http://mall.aflo.com/products/detail.php?product_id=3225 )

これは、カリグラフィーを用いた日本語のフォントです。漢字とひらがなの文字の美しさとカリグラフィーの独特な線の組み合わせが素敵です。また、イタリック体のような形からより優美な書体に見えます。

カリグラフィー × イラスト

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( http://grafikas.com/2014/08/01/callialpha/ )

文字の周りを植物などイラストで装飾するのもカリグラフィーの表現の一つです。植物の線とカリグラフィーの手法で書かれた文字の線の組み合わせが一つの絵のような作品です。

カリグラフィー × ロゴマーク

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( http://www.8brandingdesign.com/works/aozashikarari/ )

菓匠三全の新しい現代の揚げ菓子「あざらおり」のブランディングデザインのロゴマーク。カリグラフィーの技法で書かれたひらがなの線が滑らかに木爪模様を形取っています。

カリグラフィー × ウェディング

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( http://www.8brandingdesign.com/works/aozashikarari/ )

結婚式で飾られる、ウェルカムボードなどのウェディングデザインにもカリグラフィーがよく用いられます。優美で美しい線を書くことができるカリグラフィーはウェディングデザインの華やかさとマッチしています。

● 最後に

いかがでしたか?手書きのような温もりと、筆とは違った美しい線を生み出すことができる「カリグラフィー」の文字の魅力が伝わったかと思います。普段デザインをする上で、パソコン内に入っているフォントを使用したりすることが多いと思いますが、この機会にインクやペンを使った手書きの文字に触れてみるのはいかがでしょうか。

(2016.9.13)

著者

荒明真柚

武蔵野美術大学造形学部デザイン情報学科2017年卒業。グラフィックデザイン、パンフレットや本のエディトリアルデザインを主に勉強しています。最近はラジオを聴くのにはまっています!

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