学生だけでこんなにできるの!?武蔵野美術大学芸術祭2019“プロジェクションマッピング”にクローズアップ

美大生が運営する「芸術祭」は、クオリティの高い作品やパフォーマンスを一度にたくさん見ることができる場です。2019年10月末に開催された「武蔵野美術大学芸術祭」も大きな盛り上がりを見せました。
今回は、武蔵野美術大学の在学生である筆者(津田)が、芸術祭のフィナーレを飾る【 武蔵野美術大学芸術祭2019プロジェクションマッピング 】の様子をお届けします!なんと特別に、制作チームからメイキング画像もいただきました!
最終日の様子と合わせてぜひご覧ください。
編集・執筆 /AYUMI TSUDA , YOSHIKO INOUE

目次

  • 1. 今年のテーマは「yo-ho!」
  • 2. 最終日18:30、プロジェクションマッピング開始!
  • 3. 2019プロジェクションマッピング 
    プロジェクトリーダー『太田淳一さん』にインタビュー!
  • 4. 最後に

1.今年のテーマは「yo-ho!」

武蔵野美術大学の芸術祭は、国内最大規模の学園祭です。毎年異なる芸術祭のテーマが発表され、校内全体がテーマに合わせた世界観で賑わいます。今年は「yo-ho!」というタイトルで海賊をテーマに芸祭が行われ、なんと過去最高の6万人以上の来場者数を記録しました。

▼芸術祭メインビジュアル (https://twitter.com/MAUgeisaiより)

▼ 武蔵野美術大学芸術祭についてはこちら
武蔵野美術大学芸術祭 ホームページ

 
▼ムサビの正門を抜けると、豪華なエントランスが!

▼入り口付近にあった宝箱のオブジェ。宝石がまるで本物のよう。



筆者も作品を展示しましたが、最終日はいろんな催しを見て回りました!
校内には模擬店や雑貨店など、美大生の個性が光る数多くのお店が開かれていました。似顔絵ブースに絵画作品の展示、学生のオリジナルグッズや雑貨の販売……。1日では回りきれないほどでした。

▼さまざまな学生の方が制作したZINEを集めて販売しているお店。

ダンスやファッションショーなどパフォーマンスも充実していたのが印象的でした。衣装や小道具のクオリティが高く、とても学生だけで制作したものとは思えないほどです。

▼空間演出デザイン学科の学生の方によるファッションショー。筆者(津田)の友人がモデルとして参加していました!


▼ダンスサークル「PUNCH★STA」さんによるステージ。キレキレのダンスに魅了されました。


 

2. 最終日18:30、
美術館前にてプロジェクションマッピング開始!

武蔵野美術大学芸術祭のフィナーレを彩るプロジェクションマッピングは、高さ16.5メートル、横幅11メートルという、武蔵野美術大学美術館の巨大壁面に投影されます。

毎年恒例のプロジェクションマッピングは、在学生も来場者も期待度の高いコンテンツです。筆者も早めにエリアに行きましたが、場所取りをしている人が多くいました!
そしていよいよスタート!


 
……いかがでしたか?

ドキドキするカウントダウンから始まり、カラフルな宝島が描かれています。さらに今年の芸術祭のタイトル『yo-ho!』に合わせた壮大な海や遺跡のシーンが続き、見る人を魅了しました。同世代ですが違うジャンルを制作している筆者(津田)は、フォトリアルなCGと繊細なキャラクターアニメーションのクオリティの高さに圧倒!

制作は1年生から4年生までの有志メンバーによるものだそうです。ここでメンバー構成をご紹介します。
 

【プロジェクションマッピング2019 制作者】

    “Museum Projection Mapping 2019”

    Director – ディレクター
     太田淳一 ( 基礎デザイン学科 3年 )

    Producer – プロデューサー
     井口暁斗 ( デザイン情報学科 3年 )

    Creative Director – クリエイティブディレクター
     リセンキ ( デザイン情報学科 3年 )

    CG Generalist – CGジェネラリスト
     宮田健吾 ( デザイン情報学科 4年 )
     リセンキ ( デザイン情報学科 3年 )
     照山遥己 ( 映像学科 3年 )

    CG Scene Director – シーンディレクター
     永田雄大 ( 基礎デザイン学科 2年 )
     髙木明星 ( 映像学科 2年 )
     三好太朗 ( 映像学科 2年 )

    Modeler – モデラー
     岸周平( 彫刻学科 2年)
     箕輪みゆ( 彫刻学科 2年)
     李ユジヨン (彫刻学科 3年)
     石田千怜 ( 映像学科 2年 )
     上野捺郁 ( 映像学科 2年 )
     伶美奈 ( 映像学科 2年 )
     植草美保 ( 映像学科 3年 ) 

    Character Modeler – キャラクターモデラー
     目時新太郎 ( 基礎デザイン学科 3年 )
     陳宇川 ( 工業デザイン学科 2年 ) 

    Character Animation – キャラクターアニメーター
     植草美保 ( 映像学科 3年 )
     楊翔安 ( デザイン情報学科 4年 )

    Rigger – リガー
     植草美保 ( 映像学科 3年 )
     照山遥己 ( 映像学科 3年 )

    Compositor – コンポジッター
     リセンキ ( デザイン情報学科 3年 )
     照山遥己 ( 映像学科 3年 )

    Sound Design – 音響デザイン
     栗原三奈 ( 視覚伝達デザイン学科 3年 )
     大庭弘之 ( 特別サポート )

    Mastering – マスタリング
     嶋元悠 ( デザイン情報学科 4年 )

    Concept Art – コンセプトアート
     ハンレイケン ( 基礎デザイン学科 )
     CHEN “ARTHUR” YUAN ( 海外協力 )

    Story Design – ストーリーデザイン
     牛丸裕貴 ( デザイン情報学科 3年 )

    Technical Artist – テクニカルアーティスト
     照山遥己 ( 映像学科 3年 )

    Special Thanks – スペシャルサンクス
     松尾花 ( 基礎デザイン学科 2年 )
     林尚之 ( 基礎デザイン学科 2年 )
     徐夏恩 ( 視覚伝達デザイン学科 3年 )

     

    【 Grand Finale Digest Movie 】
    Director – ディレクター
     井口暁斗 ( デザイン情報学科 3年 )

    Camera/Edit – カメラマン/編集
     井口暁斗 ( デザイン情報学科 3年 )
     伊藤りか ( デザイン情報学科 3年 )
     井坂雄哉 ( 映像学科 3年 )
     對中優 ( デザイン情報学科 1年 )

    ——————————————————————————————————

    Promotion – 広報
     末髙彩乃 ( 視覚伝達デザイン学科 3年 )

    Operator – オペレーター
     宮田健吾 ( デザイン情報学科 4年 )
     髙木明星 ( 映像学科 2年 )
     髙田世来 ( 映像学科 3年 )
     島田樂々 ( 空間演出デザイン学科 1年 )
     藤田奈々 ( 映像学科 1年 )

    Live Recording – 記録映像撮影
     龍田哲郎 ( デザイン情報学科4年 )

    Live Recording Edit – 記録映像編集
     太田淳一 ( 基礎デザイン学科 3年 )
     リセンキ ( デザイン情報学科 3年 )

    協力
     武蔵野美術大学芸術祭執行部
     武蔵野美術大学

映像の専攻ではない工芸工業デザイン学科や、ファイン系の彫刻学科の学生もいます。いろんな学年・学科の学生が集まり、それぞれの得意分野を活かして制作しているのですね!
完成するまでに、こだわったシーンや苦労したことがあったかと思います。2019年プロジェクトリーダーの『太田淳一さん』にお話を伺ってみました!

3. 2019プロジェクションマッピング 
プロジェクトリーダー『太田淳一さん』にインタビュー!

太田 淳一Ota Junichi

武蔵野美術大学 武蔵野美術大学 造形学部 基礎デザイン学科 3年
Twitter

1999年生まれ。大学在学中にモーショングラフィックスの製作を始める。基礎デザイン学科展示PV「Switch」や民俗音楽×モーショングラフィックスなどがSNSで高い評価を受ける。
モーショングラフィックスの新たな表現を模索する傍ら、ライブやイベントの映像演出なども手がけている。
参考作品1 基礎デザイン学科展示PV「Switch」
参考作品2 民俗音楽×モーショングラフィックス

 

 

◎「体験する」プロジェクションマッピング

 

ビビビット:プロジェクションマッピングお疲れさまでした!今年のコンセプトを教えてください。
太田さん:今年のテーマは「冒険」です。今年の芸術祭のテーマが「海賊」なので、海賊を目指す少年がお宝を手に入れるまでの災難や難航を一連の物語として見ていただけるように制作しました。
「冒険」とは、途中で嵐に見舞われ船が進まなかったり島の罠に引っかかったりと、簡単にお宝へたどり着くものではありません。創作活動も同じように、アイデアが浮かばなかったり思うように形にできなかったり、迷いながら完成へとたどり着くと思います。
その感動・達成感を観客の皆さんにも味わってもらえるような物語したいと考え、今回の「冒険」を創作の祭典「芸術祭」のフィナーレにリンクするような物語にしました。

▼モチーフの質感がリアル!キャラクターの細かな動きや表情にも目が離せません。

 

ビビビット:毎年いろんな学科の学生が参加しているようですが、制作メンバーはどのように集まっていったのですか。
太田さん:メインは去年のプロジェクションマッピングを制作したメンバーを元に構成されているのですが、去年のプロマを見て興味を示してくれた子や、知り合いの知り合いで「こんなことできるよ」といった紹介を通して徐々に集まってきました。

 

ビビビット:学科を超え、「できること」ベースでメンバーが集結したんですね!
本編では遺跡や海などさまざまなシーンがありましたが、一番こだわった部分はどこですか。
太田さん:主人公がクラーケンに襲われて、深海に沈みクラゲが現れるシーンから最後のロゴモーションまでの流れは、物語の構想当初から1番の見せ場にしたい点だとみんなで話していました。映像のクオリティのみならず、音響とのシンクロなど細かな調整をギリギリまでこだわりました。

▼深海に沈みクラゲが現れるシーンと、宝箱が開くシーン。

 

ビビビット:あの深海のシーンは透明感があってとても美しかったです!
今回、表現方法などについて、新しく取り組んだことはありますか。
太田さん:観にきてくれた方に、スマートフォンやタブレットで見る映像とは違う1つの体験としてのプロジェクションマッピングを提供するというコンセプトを掲げて企画を始めたため、表現にはかなりこだわって制作しました。
投影場所の美術館の特徴である2画面性と全長20mもの大きなスクリーンであることに着目して、望遠鏡の左右の動きやオウムの画面移動で観客の視線誘導を促したり、ステレオ音響の左右移動による会場の空間感を演出したり、全身でプロジェクションマッピングを体験してもらおうと試みました。
また、今回制作の一部でコンセプトアートを作ってもらい、その画を元に3Dの地形を作ってもらいました。コンセプトアートがあるとないとでは制作の進みも大きく違ったので、コンセプトアートの偉大さを痛感しました。

▼遺跡外部・内部のコンセプトアート。


 
▼遺跡外部・内部の本番映像。

ビビビット:コンセプトアートには制作をスムーズに進める効果があるのですね。巧みな視線誘導や壮大な音響は、まるで自分が遺跡や海にいるように感じました。
それでは、制作中に苦労したことを教えてください。
太田さん:武蔵美の美術館で投影するにあたって、美術館の構造である真ん中を使えない画角を考慮した物語の構築やカメラワーク演出などがなかなかうまくいかず、絵コンテを完成させるのに3ヶ月かかりました。
また、ハード面ではソフトウェア間でのやりとりにとても苦労しました。例えば、MAYAで動かしたモデルをCINEMA4Dで触ろうとすると、ソフト同士の設定のずれが起きてしまいます。その調整は、テクニカルアーティストにお願いしてなんとか解決することができました。
あとは投影1週間前に制作に使っていた僕のパソコンが壊れてしまったことですかね(笑)。今だから笑い話にできるのですが、一時はどうなるかと思いました。周りの先輩方の力をお借りしてなんとか完成することができました!

▼キャラクターデザインとメイキングの様子。細部までこだわっていることがわかります。


 
▼海賊王のスケッチ、モデリング。

ビビビット:美しい映像の裏側にはそんな苦労が隠されていたとは……!チームメンバーの協力があって完成されたんですね。
太田さん、お話をありがとうございました!

4.最後に

一昨年昨年に続き、3度目となる武蔵野美術大学プロジェクションマッピングのレポート。筆者(津田)は、「1つの体験としてのプロジェクションマッピングを提供する」という、ただ映像を「見せる」のではなく「体験させる」といったコンセプトが素晴らしいと思いました。芸術祭は3日間ですが、私たち武蔵美生の制作活動は続いていきます。いろんな苦労を乗り越えて完成されたプロジェクションマッピングを見て、これからも頑張ろうと思いました!

来年はどんなプロジェクションマッピングが見られるのでしょうか?今年見られなかった人は、ぜひ来年の武蔵野美術大学芸術祭へお越しください!

▼ 昨年の様子もチェック!
学生だけでこんなにできるの!?
武蔵野美術大学芸術祭2018“プロジェクションマッピング”にクローズアップ

▼ 一昨年の様子もチェック!
学生だけでこんなにできるの!?
武蔵野美術大学芸術祭2017“プロジェクションマッピング”にクローズアップ

 

(2019.11.7)
Ayumi Tsuda

著者紹介

津田愛悠美Ayumi Tsuda

武蔵野美術大学 デザイン情報学科所属。イラストやグラフィック、アクセサリーを中心に制作しています。音楽と映画とお笑いが好きです。
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