文字ではなく「絵」でコミュニケーションする!街のピクトグラムを見に行こう

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【 ピクトグラム 】という言葉を耳にしたことはありますか?ピクトグラムとは今や、私たちが生活をする上で欠かせない視覚言語です。そして実は、「東京五輪」にも強く関係しているのです。今回はピクトグラムの歴史を振り返りながら、街で見かけるピクトグラムもご紹介します!編集・執筆 /OSARAGI, AYUPY GOTO

目次

  • 1.ピクトグラムとは
  • 2.ピクトグラムが世界に広まったのは「東京五輪」がきっかけ
  • 3.街のピクトグラムを観察してみよう
  • 4.最後に

1.ピクトグラムとは

【 ピクトグラム 】(英語: pictogram)とは対象の模写や概念から図的抽象化によってつくられた「絵文字」「絵ことば」のことです

“ 今まで生きて来て、ピクトグラムを見たことがない人は一人もいない ”と言い切っていいほどポピュラーなものです。主に鉄道や高速道路を始めとする公共交通機関やショッピングセンターなどの大型商業施設で数多く見受けられます。また、今日ではコンピュータのインターフェースでも用いられています。

ピクトグラムは「ここにいると危険ですよ」「ここに〇〇がありますよ」などと瞬時にメッセージを伝えてくれます。絵ことばと呼ばれるピクトグラムは文字を読む能力を必要としません。つまり、ピクトグラムは文字が読めない外国の人でも容易に理解することができるサインであり、年齢を問わず、瞬時に情報を伝達できる視覚言語なのです!

ピクトグラムの始まりは【 アイソタイプ 】

引用:https://www.kobe-du.ac.jp/2013/10/40078/


【 アイソタイプ 】(Isotype)とは、1920年代にオーストリアの哲学者『 オットー・ノイラート 』(Otto Neurath,1882年12月10日 - 1945年12月22日)が、子どもの視覚教育を目的として考案した国際的な絵ことばのシステムです。「International System Of TYpographic Picture Education」の頭文字をとってアイソタイプとなりました。

ノイラートが生きていた当時、世界では戦争が勃発していました。その中で、住む場所を無くした移民や戦争のために教育が受けられなかった労働者が溢れ、文字や言語だけではコミュニケーションが不十分だったのです。それらを解決するため、絵だけで意味を伝えることができるアイソタイプが生まれました。デザイナーではなく、哲学者が開発したとは驚きですよね!

このように、年齢や国籍を問わず、理解させることができるアイソタイプから、今の“ 瞬時に情報を伝達できる ”ピクトグラムへと進化していきました。

2.ピクトグラムが世界に広まったのは「東京五輪」がきっかけ

引用:http://gigazine.net/news/20100903_olympic_pictograms/

“ 絵 ”で伝える

今日では、世界中でピクトグラムを見ることができますが、実は1964年に行われた東京五輪がきっかけで世界へ広がっていったのです!

デザイン評論家である『 勝見勝 』(かつみ まさる、1909年7月18日 - 1983年11月10日)のこの呼びかけにより、当時、第一線で活躍するデザイナー11人が集まりました。その中には、無印良品のアートディレクションを務めた田中一光や、だまし絵技法を用いたグラフィックデザインで有名な福田繁雄も含まれていたのです。

当時日本ではまだなじみのなかった「シャワー」はデザイナーがホテルまで視察に行き、どんなものであるかを見た上でピクトグラムを完成させたそうです。

引用:http://bridge-1.co.jp/blog/life/t-irie/2201


4ヶ月というかなり短い期間に競技種目のピクトグラムが20種、「シャワー」「トイレ」「食堂」などの各種設備のピクトグラムが39種作成されました。これらのピクトグラムは「もっと世の中で使われるべきである」と勝見が考え、デザインの著作権を放棄しました。このことからピクトグラムが全世界へ広く知れ渡り、各国で発展していったのです。

日本がピクトグラムの素晴らしさを世界へ伝えたと言っても過言ではありません!

3.街のピクトグラムを観察してみよう

さて、ピクトグラムのバックグラウンドについて知ったところで、実際に街に出かけてピクトグラムを探してみましょう!筆者が実際に撮影したものをご紹介します!現在では様々なピクトグラムが誕生しているんですよ。

近所散歩編

手をつなぐ子ども

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「横断歩道」を表す交通標識です。シルエットだけで男の子と小さな女の子が手を繋いで横断しようとしている様子が見て取れます。男の子は帽子をかぶり、女の子は大きなリボンを頭につけていますね。こうしたちょっとしたアイテムを人のシルエットに加えるだけで、どんな人が横断するのかということがわかりやすくなります。

自転車ゾーン

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「自転車走行可能レーン」を表す交通標識です。自転車にまたがって、まっすぐ走行している様子がわかるピクトグラムになっています。また、走行中は正面から地面の図を見るため、やや縦に伸びた絵になっています。そこまで視認性を考えてピクトグラムを作成しているのです。

トイレはピクトグラムの宝庫

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「多目的で使用できるトイレ」を表す案内標識です。主には車椅子を使用している人が使うことが多いため、車椅子のピクトグラムが一番大きく描かれています。トイレの中には最近ウォシュレットなどの機能が充実し、その操作がわかりやすいよう、インターフェースの意味でピクトグラムを使用しているものがとても多いです。

エレベーターとエスカレーター

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「エレベーター」と「エスカレーター」を表す案内標識です。エレベーターは四角い箱の中に人間が3人入っていて、上下を表す矢印が2本……。これだけの情報でエレベーターとわかってしまうものなんですね。

美大ならでは?

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「画材店」の武蔵野美術大学の案内標識です。画材店の標識があるのは“ 美大ならでは ”と言えるかもしれません!このピクトグラムは鉛筆と絵の具と筆を描いて、画材店を表現していますね。

犬のフンを注意!

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「犬のフン捨てを注意する」の標識です。犬の警官がとフンを指差し、注意している様子が見て取れます。思わずププッと笑ってしまう、ユーモアのあるピクトグラムです。

海外散歩編

メキシコの踊り「サルサ」

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メキシコで見つけた「観光地」の案内標識です。筆者は世界遺産に登録されたアートの街『サン・ミゲル・デ・アジェンデ』(San Miguel de Allende)に向かっている途中に発見しました。日本ではあまり見かけないピクトグラムですよね。楽しそうにダンスをする様子を見事にピクトグラムで表しています!

日本では馴染みのあるピクトグラムとはちょっぴり違う?

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こちらもメキシコで見つけた道路交通案内標識です。先ほどの日本の「横断歩道」のピクトグラムと比べると、なんだかちょっと違う形相です。所変われば品変わる……というように、ピクトグラムも変化していくのがわかりますね!

このように、街へ出かけるとその街にしかないピクトグラムを発見したり、普段では気づかない工夫を感じ取ったりすることができます!ぜひカメラを持って出かけてみましょう。

4.最後に

【 ピクトグラム 】は“ 必要最低限の要素から構成し、ヒトにメッセージを伝える ”という究極のグラフィックデザインであり、文字認識力を必要としない視覚言語です。現在、世界には約6900の言語が存在すると言われています。五輪のような国際的な祭典が行われれば、その分多種多様な言語を話す人たちが会場へと押し寄せてくるわけです。となると、文字を使って案内標識を作るよりも、誰もがわかる絵を用いた方がコミュニケーションが容易なのです。

世界へピクトグラムを発信したきっかけになった1964年の東京五輪ですが、2020年にまた東京五輪を控えることとなりました。現在、経済産業省は東京五輪開催までにピクトグラムを、JIS*1から*2ISOへ統一すると発表しています。2020年も日本の素晴らしいピクトグラムをもう一度、世界へ広めていきたいですね!

*1……JIS(日本規格、Japanese Industrial Standards)とは、鉱工業品の品質の改善、性能・安全性の向上、生産効率の増進等のため、工業標準化法に基づき制定される日本国の国家規格。

*2……ISO(国際規格、International Organization for Standardization)とは、国際的な取引をスムーズにするために、何らかの製品やサービスに関して「世界中で同じ品質、同じレベルのものを提供できるようにしましょう」という国際的な規格。

また、今日ではピクトグラムは案内標識や交通標識に使われるだけではなく、電化製品、ゲームやコンピュータのインターフェースにも用いられるようになりました。このことから、ピクトグラムはデザインのほぼ全分野に関係していることがわかります。今一度、街にあるピクトグラムを振り返り、自分の制作に活かしてみてはどうでしょうか。きっと“ 絵だけで伝える ”面白さに気づくはずです!

(2017.12.13)

著者

大佛茉由

武蔵野美術大学造形学部デザイン情報学科所属。インタラクションデザインを勉強中です。お笑い芸人のコントをYouTobeで見ることにはまっています。

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