今回ご紹介するのは、インターフェイスデザイナーやデザイン職など、大手メーカーのデザイン職に複数内定した佐藤さんのポートフォリオです。インタビューでは、「ひと目で伝える」という言葉が何度も登場し、そのために工夫した点を詳しく教えていただきました。作品ごとの情報整理に悩んでいる人へ、特に見ていただきたいです!
編集・執筆 /YOSHIKO INOUE
佐藤 里菜 さん
静岡文化芸術大学大学院 デザイン研究科卒業予定
メーカーのデザイン職内定
PICK UP!ポートフォリオのこだわり
作品のアピールポイントに沿ったメインビジュアルにする
佐藤さん:どの作品も、最初のページで【ひと目で】作品のアピールポイントが分かるよう掲載画像を工夫してあります。例えば学校の課題で制作した鈴カステラのパッケージデザインは、その美しさを全面に押し出したかったので、美しく並べたパッケージの画像を思い切って見開きページに載せました。
佐藤さん:同じ菓子パッケージの作品でも、企業とコラボして発売まで漕ぎつけたご当地グミはその作品単体での美しさよりも「実際に販売されている」ことをアピールしたかったので、お店で陳列されているところを撮影して1ページ目に大きく配置しました。
メインコピーは、ビジュアルで伝えきれない情報を
佐藤さん:作品タイトル以外の細かい文字は読まれないだろうなと思ったので、各作品のタイトルにもこだわりました。
「鈴カステラ専門店のトータルブランディング」でなく「駄菓子のイメージを払拭するトータルブランディング」、「イグサを用いたプロダクト」でなく「畳とヒトの新しい関わりを提案するプロダクト」。「この作品で、何を解決したのか」など、見開き写真では伝わりきれない情報がタイトルによって伝わるようにしています。
佐藤さん:また、トルコの大学で行ったグループワークの作品は、2年次だったので正直作品のクオリティには自信がありませんでした。
そこで、タイトルを制作物を説明した「トルコの水上アクティビティデザイン」にするのではなく、「海外大学でのデザインワークショップ」とし、現地学生との写真を大きく掲載しました。そうすることで、このページのアピールポイントを作品よりも「海外で活動する私のバイタリティそのもの」に転換できたかなと思います。(もちろん作品自体のブラッシュアップも行いました。)
「このページでアピールすべきこと」を常に考え、ブラッシュアップ
佐藤さん:写真の撮影とRAW現像、イラストが趣味なので、最後に入れました。最初はカメラの設定や現像の際の明瞭度、色彩補正なども載せることで自分の技術力をアピールしていましたが、「こんな細かいところまで1秒じゃ見ないだろうな」「そもそもプロの方から見たらこのぐらいの技術はアピールするほどでもなく当然のレベルだな」と思い、完成した作品を大胆に配置し、インパクトや見やすさに重点を置くことにしました。
数あるポートフォリオのなかで目立つ表紙を
佐藤さん:表紙は、企業で数十冊のポートフォリオがずらりと並んだ時、どうしたら目立てるかな?と考えて制作しました。紙もしくはファイルでポートフォリオを作っている学生が多かったので、素材感で違いを出そうと思い、ファイルに厚紙を貼って布でくるみアルバムのように仕上げました。
広告代理店などでは異素材を用いたポートフォリオの人は多いようなのですが、メーカーさんには少ないそうで、企業実習などで褒めていただく機会が多かったです。また、郵送提出などの際は企業ごとに表紙に「for ○○」と会社名を書くことで志望度の高さをアピールしていました。
ポートフォリオ一問一答
●このポートフォリオを提出した業界
大手電子機器メーカー全般
●コンセプト
【ひと目で】伝わる
佐藤さん:初版では作品制作の際に自分が考えたことや込めた思いを全部文字にして詰め込んでおり、「読み物」のようなポートフォリオになっていました。しかし、企業の方が限られた時間で大量のポートフォリオを審査する際は、きっと1ページ1秒ぐらいのペースでめくられていくだろうなと考え、伝えたいことを絞り【ひと目で】分かるようブラッシュアップしていきました。
●ポートフォリオの構成
- 表紙
- 目次
- グラフィック・コミュニケーションデザイン
- プロダクトデザイン
- 学外プロジェクト参加をアピールする作品
- 趣味の写真・イラスト
●制作時期
大学院1年生4月〜翌年3月
第4版くらいまでブラッシュアップ
●制作プロセス
- 作品のピックアップ
- Illustratorでデータ制作
- 自宅プリンターで印刷
- ファイリング
●サイズ / ページ数
A3 / 40ページ
●制作に使用したソフト
Illustrator、Photoshop
●印刷 / 製本方法
自宅プリンタでA3フチなし印刷 / A3ファイルのポケット数に合わせてページ数を調整しファイリング
●制作にかかった費用
約4000円
●制作するうえで参考にしたもの
ポートフォリオ百科、カタログレイアウトの本、先輩や同級生のポートフォリオ
●制作中にもらったアドバイス
佐藤さん:学校に企業説明会で来てくださったデザイナーの方々に見ていただきました。そこで、リアルなポートフォリオの審査を再現(ページを1.2秒見てどんどんめくっていく)していただき、このスピード感で印象に残るポートフォリオを作らなければ!と【ひと目で】伝わるかどうかを念頭に置きながらブラッシュアップしていきました。
●ViViViTページのこだわり、使い分け
佐藤さん:実習のある大手メーカーさんをメインに就職活動をしていたので、ViViViT(ビビビット)は「他の人のポートフォリオと比べて、私のポートフォリオが企業さんの目に良く写っているか否か」の指標として使っていました。企業から「話したい」を押していただければ「数あるポートフォリオの中から私を選んでくれた=他の人よりも良いポートフォリオを作ることができている」と考えていました。
●これからポートフォリオを制作する人へのアドバイス
佐藤さん:ポートフォリオをブラッシュアップしていく中で、「企業のデザイナーに業務の合間の限られた時間で見てもらう」「周りには他に何十冊ものライバルのポートフォリオがある」ことを意識するようになりました。
愛情のこもった自分の作品、あれもこれも伝えたくなってしまうとは思いますが、「これは【ひと目で】伝わるかな?」「他のポートフォリオたちの中で目立つかな?」を常に頭に置くことは大切かなと感じています。
また、大手メーカーだと企業実習通過後に最終面接があることが多いです。実習の作品をブラッシュアップしておいて最終面接で見せる、面接用にポートフォリオを1/2サイズで作って配布する、作品を差し上げるなど(私は市販されたグミを購入して配りまくってました)、ポートフォリオ以外にも自分をアピールできるポイントはたくさんあると思います。
この記事を見てくださった方が素敵な企業と結ばれるため、少しでもお役に立てましたら幸いです。
はたらくビビビット編集部より
文字ばかりになってしまった初稿を経て、企業の方の「ポートフォリオの見方」を観察し、何度もブラッシュアップした佐藤さんのポートフォリオ。「ひと目で伝わるポートフォリオ」を仕上げるためにもっとも重要だったのは、「作品ごとのアピールポイント」と「それを伝えるための情報の優先順位」をはっきりさせることだと考察できます。
作品の画像・テキスト・説明情報など、すべての項目において工夫されていますが、その際に気をつけたいのが、主語を“自分”にすること。2年次のグループワーク作品が良い例となりますが、そのページでは作品説明よりも「自身の取り組み方」に注目してもらえるよう情報設計されています。プレゼンツールとしての役割が果たせるポートフォリオとなるように、アピールしたいことに合わせて作品の見せ方をうまくデザインしたいですね!
佐藤さん、ありがとうございました!
佐藤さんも活用した!ViViViTでポートフォリオをつくってみる
(2020.3.23)
はたらくビビビット
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