プロが解説!ゲームUIデザイナーのポートフォリオに必要な"視線誘導・文字・余白"の意識

ゲームの体験設計をし、大部分のデザインをするゲームUIデザイナー。現場で活躍するデザイナーは、実は学生時代、ゲームUI未経験だった方も少なくないそうです。
株式会社ルーデルのゲームUIデザイナー・池上さんも、学生時代はグラフィックデザインを中心に制作していました。今回はそんな池上さんのポートフォリオを、採用に携わる現場の皆さんと解説していただきます!まとめ方から面接対策まで、内容盛りだくさんです!

編集・執筆 / YOSHIKO INOUE

ゲームUIデザイナーは「このゲーム面白い!」の体験をつくる大事なしごと

ゲームUIデザイナーは、ゲームで遊ぶユーザーに「どうやって楽しんでもらうか」を考えながら画面上をデザインしていきます。ボタンや画面の装飾だけでなく、ゲーム制作の企画段階から関わり、ゲームの体験設計に深く携わる難しくも面白いお仕事です。
選考では、ポートフォリオのどんなところからゲームUIデザイナーとしての資質を見抜いているのでしょうか?

 

株式会社ルーデル(レアゾン・ホールディングスグループ)

「ドラゴンエッグ」「ドラゴンスマッシュ」を代表とするオリジナルゲームの自社開発を中心に、他社IPゲームの開発も積極的に行う、ソーシャルゲーム事業会社。
2022年末に新規タイトル【ブルーロック Project: World Champion】をリリースし、2023年現在は新規タイトルを絶賛開発中!

↗株式会社ルーデル | ↗ViViViTページ

お話しを聞いた皆さん

石坂 大輔さん

ゲームデザイン部責任者
桑沢デザイン研究所卒業後、ゲーム会社に入社。これまでに複数のゲーム開発会社でUIに限らずデザイン全般を経験、現在では株式会社ルーデルに入社。『ブルーロック Project: World Champion』など複数タイトルにリードデザイナーとして関わる。

野村 優さん

ゲームUIデザイナー
1989年生まれ。大学を卒業後、専門学校を経て新卒でコンシューマーゲームの開発会社へ就職。 UIデザインをメインに3Dモデリングやモーションなど幅広く経験、その後株式会社ルーデルへ。 現在はUnityを用いたゲームのUIデザイン組み込み、演出作成をメインに担当する。
開発参加タイトル:『ドラゴンスマッシュ』『ブルーロック Project: World Champion』等

池上 舞琴さん

ゲームUIデザイナー
京都芸術大学情報デザイン学科ビジュアルコミュニケーションデザインコース卒業、2023年に株式会社ルーデルへ新卒入社。
現在は『ドラゴンスマッシュ』にて、ロゴやバナーなどのグラフィックデザイン作成をメインに担当。

相澤 愛里さん

HRBP 兼 デザイナー採用責任者
これまでにIT企業やゲーム企業にて約12年新卒採用を推進。2023年現在はゲーム事業であるルーデルも含め、レアゾン・ホールディングス内の複数事業横断で デザイナー職の新卒採用/中途採用を専任で担当。

ゲームUIデザイナーのポートフォリオはこうつくる!本人×採用者視点で解説

[池上さんの就活DATA]
ゲーム会社を中心に、その他デザイン企業数社の選考を受ける。株式会社ルーデルとの出会いはViViViTの「話したい」ボタンから。冬のインターンに参加後、今回のポートフォリオで本選考に進む。

インターン最新情報はViViViTにて公開!

✓視線誘導・文字・余白に気をつけて。“見やすい”を追求しよう

編集部:UIデザイン、グラフィック、イラストを掲載した約30ページのポートフォリオ。池上さんのポートフォリオは選考においてどのような印象でしたか?

石坂さん:「このポートフォリオは見やすい!」と思ったのが一番ですね。

デザインのお仕事なので、選考で自分をアピールする資料であるポートフォリオも美しく、見やすくないといけませんよね。

池上さんのポートフォリオは、どこに何を配置すればきれいに見えるのか、しっかり考えてつくられているなと感じました。

▼作品タイトルのロゴもデザインしていて、細部の演出までこだわっています。

石坂さん:「見やすい」を言語化するのは難しいですが、視線誘導・文字・余白という点が挙げられます。
雑誌など身近にあるプロの制作物を参考にしながら、一つの画面(ページ)に情報を詰め込みすぎず、テンポ良く読めるようなポートフォリオを目指してほしいです。

池上さん:ポートフォリオは短い時間で見られるものなので、ごちゃごちゃした誌面にならないように気をつけました。文章は長々とせず、簡潔な一文でまとめるようにしたり、使うフォントは1〜2つに絞ったり。
思い入れが強い作品は文章も長くなりがちですが、選考の場でポートフォリオとして見られるときはどうなのか、想像してみることが大事です。
友人と見せ合って、率直に感想を伝え合うのもおすすめです!

編集部:反対に、見づらいポートフォリオの特徴はありますか?

石坂さん:作品画像をただ貼り付けているだけ・誌面の構成がしっかりできていないポートフォリオは見づらいですね。

またエディトリアルデザインとしての見やすさと別に、作品の順番など内容の情報設計による見やすさも大事です。評価しやすさと言っても良いかも知れません。

例えばゲームUIデザイナーを募集しているのに、イラスト作品中心になっていたり、ゲームの企画ばかりになっていたりすると「見たいのはそこじゃないんだけどな……」という印象になってしまいます。

✓ ゲームUIデザイナー志望のポートフォリオなら、ゲームUIデザインを用意しよう。前半に載せよう!

編集部:「志望職種の実務に近しい作品を前半に載せる」というポイントはよく言われますよね。

池上さん:私自身、冒頭にどんな作品を配置するかよく考えました。やはりゲームUI作品を冒頭に、他のUI作品、UIと関連度の低い作品は後半に載せました。

▼池上さんのポートフォリオのもくじページを分析!

編集部:ゲームUI作品を1点は用意したいですね。就活時期に初めてゲームUIデザインに取り組む場合、どんなものをつくると良いと思いますか?

野村さん:まずはその道のトップのもの、いま人気のゲームを真似ることから始めると良いと思います。
UIトレースも学習方法として良いと思いますし、
まずは真似て、そこから自分なりにアレンジしていくと身につきやすいと思います。

石坂さん:画面の構成力をアピールするならカジュアルゲームがおすすめです。
階層も深くないですし、「こういうことが面白いゲームで、それを表現したいんだ」というのが明確に伝わりやすいですね。

池上さん:私のポートフォリオはゲーム業界を受けるにはゲーム関連の作品が少なく、志望度の押しが弱いかなと感じていて。学び始めに行っていたUIトレーニングなども載せて興味や努力の熱意も伝えようとしました。

▼UIトレーニングのページは一番最後に掲載

編集部:リファレンス(参考資料)はどのようなものを見ると良いでしょうか?

石坂さん:日本向け以外に世界のトレンドも追えると良いと思います。ルーデルは「GvGゲームで世界を制する」という目標を掲げているので、既存のゲームデザインだけでなく、一段上の新しいデザインをできる人を探しています。
選考ではいろんな感度の強い方とお会いしたいですね!

野村さん:ルーデルのゲームをリファレンスにするなら、「ドラゴンスマッシュ」のUIでは斜めにカットが入る意匠にこだわっています。ラインの角度や色数、色設計など、さまざまな部分に注目してほしいですね。

池上さん:就活中は、いろんなゲームに触れるようにしていました。
このUI使いやすいな、かっこいいなという点ももちろん勉強になりますが、ココは少し使いづらい、こうしたら良いんじゃないかという気づきも得られるように意識していました。

デザインの意図・過程を重視!必須項目はメインビジュアルと……

編集部:1作品における作品情報の項目は、どんな内容が適切なのでしょうか。池上さんの冒頭作品の項目を洗い出してみました!

石坂さん:必須なのはメインビジュアル、一言説明、作品概要、制作人数でしょうか。
作品概要に
ペルソナが入っていると良いですね。ペルソナ(対象ユーザーの年齢や職業などの設定)は実務でも必ず設定するものなので、きちんと考えているか評価しやすくなりますね。
また制作人数の記載があると、グループ制作だったら役割は何だった?などの質問につながります。

 

▼ペルソナやデザインの意図を説明したページ

 

石坂さん:デザインの意図や過程はすごく重視します。なぜなら、ゲームUIデザイナーはゲームのUXも考える仕事だからです。ゲームで遊ぶお客様を想像して、どんなゲームを求めているのか考える力も必要なんですね。
ただ一方で、その意図や過程が多すぎて肝心のデザインが少ないというポートフォリオも時々あるので‥。池上さんのポートフォリオはそのバランスも良かったです。

池上さん:作品の一言説明は、ポートフォリオを指導していただいた先生からも入れたほうが良いと言われていて。タイトルだけよりも伝わりやすくなったと思います。
ロゴデザインも、実務でよく制作しているので、スキルをイメージしてもらうのに有効だったのではないかと思います。

石坂さん:作品の1ページ目に作品タイトルのロゴがあり、その後にロゴ解説のページも設けていて構成が上手ですね。
何をつくりたいのかが明確で、シンプルな伝え方で、詰め込みすぎていなくてわかりやすいです。

ちなみに制作時間や使用ソフトの表記は、ルーデルの選考ではそこまで気にしません。所要時間に関係なく、やりきったものを載せてほしいですね。

ゲームUI以外の作品では基礎力が見られている!評価されたのは“タイポグラフィ”

編集部:ゲームUI以外の作品は、選考においてどのように見られるのでしょうか。

野村さん:デザイナーとしての基礎力、実力を知る一つの指標になると思います。デザイン基礎力は幅広いデザインワークで身につけられますから、ゲームUI以外の作品からも見ることができます。

石坂さん:そうですね。「新しいデザインを生み出して世界一を目指す」ということを目指しているので、池上さんのポートフォリオにあるようなグラフィックやプロジェクトの総合的なデザインなどは、いろんなところに手が届きそうで良いなと感じました。

池上さん:学生時代、文字組みにこだわっていたのですが、その点をインターンのときに褒めていただきました。より美しく文字を見せるために細かい調整を意識することは、実務でも生かされていると思います。
例えばキャラクターの訴求画像を制作する業務では、配置のバランス感覚やタイポグラフィのスキルが必要です。
学生時代は幅広いアプローチでデザインの基礎を学べたと思うので、その経験をポートフォリオでも伝えられたのなら良かったです!

編集部:ルーデルさんのインターンシップは、2025年卒対象にも開催されるのですよね。池上さん、参加してみていかがでしたか?

池上さん:インターン参加前は、ゲームUIはほとんど独学だったので、「会社でつくるゲームUIってどんなものなんだろう」という想像ができていませんでした。
インターンは1DAYでしたが、基本のつくり方や考え方を教わり、さらに作品をつくって・発表して・フィードバックをもらうというプログラムだったので勉強になりました。そこから選考にも進めたので良かったです!

25年卒対象のインターン情報はViViViTで!

✓ポートフォリオを用いて、面接ではなにを聞かれる?志望企業のリサーチはココを見よう!

編集部:「制作人数」の表記があると役割分担などの質問がしやすいという点がありました。その他、面接ではどのような質問をされるのでしょうか。

石坂さん:面接では「自分で考えて行動できる方なのか」を知りたいと思っています。グループ活動に関する質問はほぼ必ずしますね。どんな役割で、どう行動したか、最終的にどうなったかを教えてもらうようにしています。
ちなみにグループでの役割はなんでも良いです。リーダーかどうか等は気にするところではありません。取り組み方を自分の言葉で語れるように準備してほしいです。

▼池上さんは制作人数だけでなく、自身の役割も作品の冒頭に記載していた

池上さん:「最近UIデザインが良いなと思ったゲームはありますか」「好きなゲームはありますか」という質問もありました。

企業のことを知ろうとする姿勢が面接対策になると思います。私は企業研究をするなかで、ルーデルではガッツやパッションをアピールした方が良いのかなと思って、早朝バイトを週5でしていたエピソードなども話しました。

相澤さん:池上さんのように「企業が求める人物像をリサーチして、それがアピールできるエピソードを選ぶ」という対策はとても大事だと思います。
面接では、デザインスキルだけでなく企業文化に合うかどうかも知りたいんです。

編集部:企業が求める人物像を知る一番の方法は何でしょうか?

相澤さん:受ける会社の企業サイトで「企業理念」を見てみてください。
ルーデルは「どんなときでも、攻め続ける。」をビジョンに掲げています。その一言だけでもその会社が安定志向なのか攻める感じなのか、性格が見えてきませんか?
会社の文化や経営の方向性を理解した上でポートフォリオをつくると、志望度も伝わりやすくなりますよ。
受けているポジションや会社にどれくらい興味があって、やる気があるのかを教えてほしいです!

編集部:皆さんありがとうございました!
最後に、ルーデルの皆さんと「ゲームUIデザイナー」に向いているチェックリストを用意しました。1つでも当てはまる方は、ぜひインターンや選考応募を検討してみてください!!

✓ あなたにピッタリ?ゲームUIデザイナーチェックリスト

インターン情報はこちらから!

 

(2023.10.31)

著者

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井上佳子

はたらくビビビット編集長。 株式会社ビビビットの社員です。ポートフォリオづくりに役立つ情報発信を目指します。 Twitter

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