デザインを学び、総合職ではたらく#1|株式会社スクー高野葉子さん

特集 総合職ではたらく-01

特集

近年、デザインや美術専門の学校を卒業して、総合職で働くことを選択する学生が増えてきているそうです。「せっかく物づくりの技術や知識をつけたのにもったいない!」…なんて、思う方がいるかもしれませんが、学生時代に身につけたスキルは決して無駄にはなりません。その経験を活かすことで、総合職で活躍できるチャンスがあるそうです。そこで今回の特集「デザインを学び、総合職ではたらく」第一弾では、総合職で活躍する“元デザイン専攻の大学生”株式会社スクーで働く、高野葉子さんにお話を伺ってみました。編集・執筆 / YOSHIKO INOUE, AYUPY GOTO

高野 葉子たかの ようこ

株式会社schoo
1988年生まれ。千葉大学大学院工学研究科デザイン科学専攻修了。
在学時からトレンダーズ株式会社で新規事業の美容系ECサイト運営に携わる。2013年に新卒で同社に入社。2014年2月にスクーへ入社し、プラットフォームディレクターとして、新規事業開発、推進を担当。

― 高野さんが現在働いている会社はどのような事業を行っているのでしょうか。

高野さん:
『schoo WEB-campus』というオンライン動画学習サービスを運営している株式会社スクーという会社で働いています。WEB/IT領域を中心に、デザイン、プログラミングなど仕事に活きる知識やスキルが学べる授業を毎日、生放送で開講しています。
会員数は18万人以上おり社会人の方々をはじめ、最近では企業様でも福利厚生のひとつとしてご活用いただいています。

― 会員数が18万人もいらっしゃるのですね!高野さんはスクーさんでどのようなお仕事をされているのでしょうか。

高野さん:
『schoo WEB-campus』をプラットフォームにしていくために新規事業開発、推進を担当しています。現在は、クラウドワークス、エン・ジャパン、インテリジェンスといった大手人材企業との事業提携のプロジェクトマネジメントを行なっています。
具体的には、提携先の企業様と社内のメンバーとのコミュニケーションが中心です。プロジェクトごとに解決すべき課題をタスクに落とし込み、各タスクを開発部門やマーケティング部門などに依頼し、進捗管理を行なっています。プロジェクトの進捗に合わせてコミュニケーションに必要な提案書や資料を作成したり、都度打ち合わせをしてプロジェクトを推進しています。

高野さんが携わったプロジェクト

クラウドワークス提携
2015年6月に発表されたクラウドワークスとの業務提携。
 クラウドワークスに所属するすべてのワーカーに対し、無料で特別カリキュラムを提供するというもの。

デザインを本気で学んだからこそ、
自分が向いていることに気づけた大学院生活。

― 学生時代はどのように過ごしていたのでしょうか。

高野さん:
学生時代は情報デザイン(UI/UX)を専攻していました。
サークルや学生団体にもともと苦手意識を持っていたので、そういった団体には一切所属せずに、研究室と家とバイト先の往復という地味な日々でしたね。大学3年生の就職活動で大手メーカーのデザイン実習選考に参加した際に、そこで初めて外の世界を知ったんです。同世代のデザインに本気で向かい合っている人達のスキルや熱量に圧倒されました。自分はそこそこできる方だと思い込んでいたのですが、とんだ勘違いだったんですよね。(笑)
もちろん結果は惨敗だったのですが、あまりに悔しくて両親の反対を押し切って就職活動を勝手に辞め、院試まで数ヶ月しかなかったのですが受験することに決めました。
なんとか説得した両親から「家から通える国公立のデザイン科、落ちたら就活再開」という受験の条件を出されて千葉大学大学院一本で受験しました。院試が4年生の8月ですから、再開してもほぼ選考は終わっているわけなので、落ちるわけにはいかなかったんですよ。(笑)
千葉大学は日本のデザイン科の中でも歴史が古く、プロダクトデザインやカーデザインの巨匠たちを多く輩出しているところです。そこにたまたま運良く合格したのですが、大学院に入ってからが大変で、ハイレベルな同期たちに追いつくのに必死で平日は研究室に寝泊まりして制作に明け暮れてました。土日はアルバイトをしてまた日曜日の終電で研究室に行くというキラキラ女子大生感ゼロの生活を送っていましたね。

― なかなかタイトな生活ですね。そんな中、就職活動はどのように行ったんですか?

高野さん:
大手メーカーのインハウスデザイナーに憧れて、大学院一年生から常に就職活動を意識して作品を制作していました。就職活動の一環で大手メーカーのデザインインターンシップに参加させていただいたのですが、実際に一ヶ月通ってみて違和感を感じてしまったんです。
あまりにも組織が巨大すぎて、自分がデザインしたものが世の中に出るまでが途方もなく遠く感じたんです。そこから自分がメーカーで働くイメージがどうしても描けず、憧れのデザイナー職ではなく総合職に切り替えることにしました。数年かけてひとつのプロダクトのディティールをしっかりと作り込んでいくというスタイルが私の性格にあっていなかったんだと思います。

― デザイナーになるために努力されていたのにもかかわらず、よく総合職に切り替えられましたね!

高野さん:
そうですね。あっさり切り替えました。
実は薄々デザイナーに向いていないんじゃないかと、大学院入学時から気づき始めていたんですよね。研究室の同期が大変優秀な人達で…。
彼らとプロジェクトに取り組んでいるうちに、私がデザインをするより彼らがデザインした方が、確実に美しいものができることを目の当たりにしまして。彼らに勝てるところがひとつもない、自分の強みはなんだろう、せっかく院まできたのに…!と悩む日々でした。そんな中で、ひとつだけ成果が出せたのが課題テーマの分析やコンセプト提案でした。コンセプトを形にしていくためのディレクションの方が楽しくて。その強みを活かしてどうにか仕事を見つけようと思い、総合職で就職活動を開始しました。エントリーした会社は広告代理店やゼネコン等の大手企業ばかりで、まさか自分がIT業界のスタートアップで働くとは夢にも思っていませんでしたね。

― 就職活動を行う際は、どのような考えを持って行動していましたか。

高野さん:
2つあるのですが、
・自分の手が届く範囲でサービスを育てられること
・月曜日がくるのが嫌じゃない働き方ができる環境
ということを軸にしていました。それ以外は特に深く考えていませんでした。
今もこの軸には変わりありません。

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相手のことを考えて、先読みする力

― 就職活動でポートフォリオは活用できましたか。

高野さん:
フル活用しました。ご指導をいただいていた先生から、ポートフォリオは「体育会系」同じくらいインパクトがあるから必ず選考に持参するように言われていました。研究に費やした時間や取り組む姿勢などがわかりやすくグラフィックで見せられるので、書面よりも受け手にも伝わりやすいんだと思います。とはいえ、大きくて重いA3のポートフォリオを持っていくわけにもいかないので、自分のできること・やってきたことなどを簡単にまとめた両面印刷のA4ペライチを持ち歩いていました。面接で見せながら話したり、時には面接官にあげたり、自分の武器として使っていました。緊張してしまいやすい面接で、武器が手元にあるのは自分自身の安心感につながりますよね。

― 総合職の就職活動をする上で、デザインを学んでいたことが活かせたことはありますか。

高野さん:
そうですね。UXを研究していたこともあり、自分が面接官だったら…ということを常に考えていました。たくさん学生が面接に来る中で、どんな学生が来たら嬉しいか、どんな話を聴きたいかということですね。面接のような大事な場面だと自分をよく見せようとしてしまいしがちですが、面接官が何を求めているのかを考えるというのは、デザインを学んでいたから身に付いていたことだと思います。

― なるほど。目に見えるスキルだけではないんですね。その後、就職活動はどうのように進んでいったのでしょうか。

高野さん:
就活の移動中にたまたまTwitterでブロガー・作家などの活動をしているはあちゅうさんが編集長を務められていた美容系ECサイトで、期間限定でアシスタントを募集しているのを見つけました。コラムなどを拝見していて、素敵な文章を書く方だなぁとなんとなく認識していたのですが、大きな企業に就職したらこういう方と一緒に働けないだろうなと思い、勢いで応募しました。事前にA4ペライチのポートフォリオをメールでお送りし、面接の時にはキャンペーンのバナーを作って持っていったんです。
募集文から緊急で人手が必要そうだと感じられたので、実際つくったものを先に見せたほうが、すぐにどういう人物かわかってもらえると思ったので。そしてその場で採用していただき、次の日からアルバイトで毎日通うことになりました。

― そこでも、相手の求めていることを先読みする力が発揮されたのですね。実際の仕事内容はどのようなことをされていたんですか?

高野さん:
相手がどうしたら喜んでくれるかしか考えていないんですけれどね。
実際の仕事は美容系ECサイトのお客様のお問い合わせ対応、販促施策、バナー作成、メルマガ、広告案件などのECサイト運用に必要なことは一通り経験させていただきました。そこで、IT企業特有のスピード感に惚れてしまいましたね。インターンの時に感じたことと正反対のスピード感がそこにあったんです。そして新規事業だったこともあり、新しい挑戦が多く、自分がチームに必要とされていると感じられる環境がとても心地よかったんです。ご縁あって、そのまま新卒として入社させていただいて、さらに多くの経験をさせていただきました。

― デザインスキルを活かしながら、入社1年目にもかかわらずご活躍されていたのですね。そこからなぜスクーさんへ転職することになったのでしょうか。

高野さん:
配属されていた美容系ECサイトの事業譲渡がきっかけです。
ちょうど一区切りがつくタイミングだったので、新しいことにチャレンジできる環境に身を置いてみたく…。そこで、せっかくなので元々ユーザーだった大好きなサービスに関わりたいと思いスクーに応募しました。そして、その求人を見つけたのも代表 森のTwitterです。

― はあちゅうさんに続き、また調度良いタイミングでTwitterに情報が流れてきたんですね!

高野さん:
そうなんですよね(笑)。Twitterでたまたま見つけたのが、経営企画室立ち上げメンバーの求人で、条件に全然当てはまっていなかったのですが、ダメもとで応募してみました。
今思うとよく面談していただいたなという感じなのですが、運良く面談に呼んで頂き、楽しく20分くらい話したところで「一緒に世界を変えていこう!」と代表の森に言ってもらい内定をいただきました。当時は大好きなスクーで働きたいということしか頭になかったので、落ちたらどうしようとか一切考えてなかったですね。面談直後に、届いたばかりの机とパーティションを10名もいなかったメンバーと一緒に組み立てたのが私の初仕事です。

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肩書きを目標にするのではなく
強みを手段として使い、世の中に
新しい価値を提供していく。

― まさに運命の出会いですね。スクーさんでもデザインを学んだ経験はいかされましたか。

高野さん:
最初はデザインを学んできたから、仕事にも生かせたらいいなと肩書きや仕事の内容にとても固執していました。そこで当時、直属の上司でもあった代表 森から「得意なこと断ち」を宿題に出されていまして。「せっかくスタートアップにきたんだから、苦手なことも挑戦してみた方が良い、自分の選択肢を狭めるには早すぎる」とアドバイスをいただき、スクーでは新規事業の立ち上げと総務を兼務することになりました。私が入社した当時は、10名ほどしか社員がいなかったので、新しいことにどんどんチャレンジさせていただきました。社員が30名近くになった今もその文化は変わりませんね。新規事業の立ち上げと総務のお仕事は性質としては正反対なのですが、スクーのビジョンに共感して協力してくださる企業様と仲間が心地よく仕事ができる環境を整えることはそう大きく変わりません。どちらも、世の中から卒業をなくすというビジョンに向かって、物事を円滑に推進する方法を考えて、実行するということなんですよね。

― なるほど…!仕事をする上で高野さんが大切にしていることを教えてください。

高野さん:
「心地よさ」ですね。「楽しく、明るく」を越えて関わる人が「心地よく」プロジェクトにコミットできるかを意識しています。
私の仕事はプロジェクトマネジメントなので、実際に手を動かす方々に相談やお願いをしたものがアウトプットになる立場です。私ひとりでは何もできないんですよ。力を貸してくださるクライアント様やメンバーにスクーでこのプロジェクトに携わって良かった!高野と一緒に仕事してよかった!と思ってもらえるような成果が出せるように日々頑張っています。
具体的にはビジョンや目的をお伝えして、今は何が大事で、どうしてこれをやるのかということの認識を合わせることに気をつけていますね。そのためにも丁寧に言葉を選ばなくてはいけないので、なかなか難しいのですがいつも心がけています。

― では最後に、高野さんは美術やデザインを学ぶ学生に総合職で働くことはおすすめしますか?

高野さん:
おすすめします! 
デザインを学んでいる学生さんって全体把握能力が高い人が多いと思うんです。
デザインするときって、使ってくださる方や見る方のことを考えて、使われるシーンをイメージし、全体を把握した上でデザインしますよね。それって、総合職にこそ必要な視点だと思うんです。美術やデザインを学んでいると、どうしても肩書きにこだわってしまいがちなんですが、肩書きにこだわらない方が面白いものづくりできるんじゃないかな。もちろん資料は情報を整理したり、図化することでデザイン学生らしい美しい資料が作れるので他の人と差がつけやすいですしね。
実際に働いてみて「モノやコトをつくること」というのはデザイナーなどのクリエイティブな職種だけではなく、ビジネスサイドの提案や様々な調整があった上で、成立するものが多いように感じます。肩書きを目標にするのではなく、デザインなどの強みを手段として使い、世の中に新しい価値を提供していく人が増えると素敵だなぁと思いますね。
私も職種や仕事内容にこだわっていた時期もあったのですが、今は「schoo WEB-campus」という大好きなサービスの成長に携われるのであれば、どんな仕事にでも取り組みますし、その方が未来の自分の選択肢は多くなると思うんです。これからも未来の自分からお礼を言われるくらい、色々な経験をしていきたいですね。

― 高野さんお話ありがとうございました!

株式会社スクー

(2015.9.23)
Yoshiko Inoue

著者紹介

井上佳子Yoshiko Inoue

女子美術大学卒業。 はたらくビビビットのインターンを経て、ビビビットに新卒入社しました。 2016年印象に残ったまんがは吉野朔実の「period」です。
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