大きくとらえて、細かく整理。デザイン思考に役立つ図解のススメ|近藤哲朗さん

「図解」と聞いて思い浮かべるものは何ですか?漫画の巻頭にある人物相関図……は、図解ではないと仰るのが「チャーリー」こと近藤哲朗さん。
2017年11月にnoteに投稿した記事が一夜で話題になり、昨年9月には「ビジネスモデル2.0図鑑」を出版されました。
2019年4月より募集を開始した、内閣府 知的財産戦略推進事務局が主催の「経営デザインシート」リデザインコンペの審査員でもあるチャーリーさん。
「そもそも図解とは?」「図解する上でのポイントは?」などなど、図解に関するアレコレを伺いました。

▶合わせて読みたい:経営デザインシートって何?解説記事編集・執筆 / SAKURA SHINDO , YOSHIKO INOUE

 

チャーリー/近藤哲朗

株式会社そろそろ 代表取締役社長

千葉大学大学院工学研究科修了後、面白法人カヤックに入社。2014年に株式会社そろそろを創業。noteで公開したビジネスモデル図解シリーズが反響を呼び、2018年9月に「ビジネスモデル2.0図鑑」をKADOKAWAより出版。現在は企業向けにビジネス図解のコンサルティングや講演をおこなう。
Twitternote株式会社そろそろ

 

◎ビジネスモデルっておもしろい!
誰かに共有したくて始めた“ビジネスモデル図解”

ーー 始めに、チャーリーさんのご経歴を教えてください。

チャーリーさん:東京理科大学建築専攻を卒業後、千葉大学の大学院で都市計画や商業計画などを研究していました。2011年に面白法人カヤックへ新卒入社し、Webディレクターとして働いた後、2014年の1月から独立しました。
そして2014年の9月に「株式会社そろそろ」を立ち上げ、現在5期目になります。「株式会社そろそろ」では、コーポレートブランディングやビジネスモデル図解シリーズといったコンテンツを制作する“ビジネス図解研究所”というコミュニティを運営しています。

    【ビジネスモデル図解とは】
    複雑なビジネスモデル(企業・事業が売上や利益を生み出すしくみ)をわかりやすく図解したもの。
    チャーリーさんがSNSなどで発信され、度々話題になっている。

▼生配信サービス「SHOWROOM」のビジネスモデル図解


▼アニメ「ポプテピピック」のビジネスモデル図解


ーー 今回は、その“ビジネスモデル図解”についてぜひ詳しく伺いたいと思っています!
そもそも、なぜビジネスモデルを図解しようと思ったのでしょうか?


チャーリーさん:ビジネスモデル図解を始めた背景には、さまざまな案件を通して関わってきた企業とのコミュニケーションがあります。
まず、そろそろという会社は「社会課題の解決を目的とした事業や組織を、クリエイティブに応援する」会社なんです。なのでNPOなどソーシャルセクターの方々をクリエイティブで支援するような事業、例えばWebサイトをつくったり、映像やロゴをつくったりしてきました。
そうすると、そこで出会う方々が口々に「お金がない」「資金繰りに困っている」と言うんです。それを聞いて、「どれだけ社会にとって良いことをしていても、お金がないと続けられないんだな」と強く思いました。

それまではソーシャルとクリエイティビティを掛け合わせることを事業としておこなっていましたが、そこにビジネスという要素も必要だとわかったんです。ソーシャル(社会性)とクリエイティブ(創造性)とビジネス(経済合理性)。この3つのバランスに偏りがあると、よくないんだなと。
その3つが重要だとわかったところで、僕にはカヤックの経験からクリエイティブ、そろそろの事業としてソーシャルへの知識はあっても、ビジネスは全く知らないことに気づきました。そこでビジネススクールに通い、学び始めたんです。

最初は「やらなきゃ」「知らなきゃ」と思って始めたんですが、ビジネスを学び始めると、これがとても面白いことに気が付いたんですよ。「世の中にはこんなビジネスがあるのか」「それはすごいクリエイティブだな」と。そうしてアンテナをはっていると、「Lemonade」という保険のサービスを紹介する記事に出会ったんです。
この「Lemonade」が、いちばんはじめに図解したビジネスモデルです。



このサービスの記事を読んだとき、すごく面白いと思ったんですが、構造がとても複雑だったんですよ。でも面白いと思った感覚を誰かに共有したいなと思って、おもむろにパソコンを取り出してこれを描きました。
「どうしたらすっきりするんだろう?」と考えて、この形にしたらすごくすっきりしたんですよね。自分が面白いと思ったのは、ビジネスがうまく成り立っている仕組み、ビジネスモデルの部分なんだと気付きました。

ーー そこから、いろんなビジネスモデルを図解して発信されるようになったのですね。
読者の中にも、“物事を図にしながら理解する”という人は少なくないと思います。
次の章では、図解する際のポイントを教えてもらいます!

◎単にビジュアライズするだけじゃない。
本質を読み解き、構造化し、それを図にするのが「図解」

ーー チャーリーさんが考える“図解”とは、どういうものですか?

チャーリーさん:個人的には、「物事を抽象化して、構造を読み解き、それを相手にわかりやすく伝える手法」だと思っています。
図解は「図で解く」と書いて、“図で”という部分が強調されがちなのですが、重要なのは“解く”のところ。解く=読み解く、つまり構造を読み解くっていうことだと思うんです。単純にビジュアライズするのではなく、本質を読み解いて構造化して、それを図にする。「図で解く」というよりは、「解いた図」というイメージです。

ーー 図のほうが手段ということですね。では図解することで得られる効果は何かありますか?

チャーリーさん:コミュニケーションの速度が早くなりますね。
そもそもなぜ図解する必要があるかというと、世の中に情報量が多いからなんですよ。ものごとの関係性を表そうとすると、情報量が増えれば増えるほど煩雑になり、言葉で表すと膨大になってしまいます。
時間が無限にあればそれでも良いのですが、忙しい現代人にとってはそれをそのまま受け入れる時間がない。だから、限られた時間の中でよりわかりやすく理解できる情報を求めています。
そこで重要なのが、情報の優先順位。何が優先なのか?が伝わるようにコミュニケーションしたほうが、より効率的に意図が伝えられます。文字を大きくしたりくくったり、矢印で表したりできる図解は、情報の優先順位をわかりやすくするために有効なんです。

    【図解の基本のポイント】
    ①その図で伝えたい意図を明確にする
    ②その図に含まれる情報に優先順位をつける
    ③文字の大きさや矢印、アイコンなどで優先順位をわかりやすくする

▼ご自身のnoteでも、ビジネス図解のコツを紹介されています!


引用 (https://note.mu/tck/n/n65420c0631b1?magazine_key=m6efbe0f8e287)

ーー 複雑な情報であればあるほど、文章と図では受け手の理解スピードが段違いですね。では、図解するのに向いている情報やものごとはありますか?

チャーリーさん:基本的にあらゆるものは図解できると思います。物語のプロセスを楽しむ小説などに、登場人物の重要度をつけて図解するのなんかは野暮ですけど(笑)。
ただ、以前「HUNTER×HUNTER」という漫画の図解はしました。僕は大好きな漫画なんですけど、キャラクターが何百人も出てきて、関係性が複雑なんです。Twitterとかで反応を見ていると、何が起こっているのかわからないという人も多くて。それを図解したこのツイートは、反響が大きくて14,000いいねくらいつきました。



ーー 「HUNTER×HUNTER」を読んでいない私には、なんのことやら……(笑)。これは、かなり枚数がありますが、どのような流れになっているんですか?

チャーリーさん:まずはいま起こっていることを1ページ使って3つの目的にまとめ、その目的ごとにどんなキャラクターが関係しているのかを次の1ページで表しました。

▼1枚目:物語の目的を3つに分解。


▼2枚目:1枚目で出てきた目的を、キャラクターや組織ごとに整理。ここで関係性をA〜Fに分ける。


それ以降はこのA〜Fについて1ページずつ深掘りしています。
▼3枚目:関係性Aを深掘り。続きのB〜Fはツイートで御覧ください!

まずは全体を抽象度高くまとめて、そのあとに具体的な話をそれぞれ図解しています。
漫画や物語を読まなくなるのって、目的を見失うからだと思うんですよ。「いまなんの話だっけ?」と思うと離脱してしまう。登場人物や主人公の目的さえ見失わなければついていけるので、目的をちゃんと明示してあげるっていうのが、物語の図解においてはすごく重要です。野暮ですけど(笑)。

ーー 本当になんでも図解できるんですね!【抽象→具体の順に整理する】というのは、複雑な図解を行う際の大事なポイントになりそうです。
2018年には「ビジネスモデル2.0図鑑」という本も出版をされていますが、出版はどのような経緯だったのでしょうか。


チャーリーさん:Twitterで発信していたビジネスモデル図解シリーズがいくつか溜まってきて、まとめて見たいという意見もあったので、気軽な気持ちでnoteに公開したのがきっかけです。

▼公開されたnote
2017年後半に感動したビジネスモデルまとめ10個

それで寝て起きたら、Twitterで日本のトレンドになっていて。TwitterのDMに、KADOKAWAから出版の依頼が届いていました(笑)。その後数日間で別の会社からも依頼があり、合計で8社から依頼をいただきました。まさかそんなに話題になるとは思わず……。

ーー翌日ですか!ものすごいスピード感ですね!出版依頼の他には、どんな反響がありましたか?

チャーリーさん:Twitterのフォロワー数がかなり変わりました。ツイログを見ると……


こんな風に、ものすごく変なグラフになっているんです(笑)。
この垂直にあがっているところが、トレンドに入ったあたりですね。もともと1,500人くらいだったフォロワーが、現在は18,000人くらいになっています。

ーー おお〜〜!!これは面白いですね!
それだけビジネスモデルや図解に興味を持つ人がたくさんいたんですね。

◎背景を知ることから始まる、図解のプロセス

ーー ここからは、内閣府主催の「経営デザインシートリデザインコンペティション」について伺います。コンペでは審査員をされるとのことですが、「経営デザインシート」にはこれまでどのように関わってこられたのですか?

チャーリーさん:内閣府が主催した「経営デザインシート活用セミナー」というイベントで登壇しました。ビジネスモデル2.0図鑑の中にあるSBC(Social, Business, Creative)の話や、無形資産についての話を読んだ関係者の方が、「経営デザインシート」のやりたいこととぴったりだと思ってくださって。そこからお話をいただいたんです。

ーー 初めて「経営デザインシート」をご覧になったときはどう思われましたか?

チャーリーさん:見た目は……インパクトがありましたね(笑)。図解の話でいうと、優先順位が非常にわかりにくいなと思いました。しかし中身をよく見ると、日本全体で求められてくるビジネスモデルの在り方や、その価値の話もあって、裏側にある思想はとても共感できました。だから余計に、その見た目のわかりにくさがもったいない!と思ったんです。
審査員のお話をいただく前は、自分で勝手にリデザインしてしまおうかと思っていました(笑)。

ーー ではこの「経営デザインシート」をリデザインするにあたって、図解の観点からポイントになる部分を教えてください!

チャーリーさん:これまでの話をベースに、図解の流れを説明します。

①背景を知る
今回の「経営デザインシート」でいうと、企業の資源やビジネスモデルの価値、言葉の裏側にどんな意図があるのかを知ることですね。
例えば「知財」という言葉が入っているのは知的財産戦略本部が絡んでいるからだとか、それも背景ですよね(笑)。なぜここに知財が絡んでいて、なぜ無形資産が重要なのか。そういう背景を知るのはすごく重要です。今回の場合は、「伊藤レポート2.0」を読むのも良いんじゃないでしょうか。

②抽象化・構造化する
多くてばらばらになっている情報の抽象度をどんどん上げていくと、情報量は少なくなっていきます。そうすると扱いやすくなってくる。
例えば、大きく分けて4つの話をしている、とまとめて、その上でそれぞれの関係性を考えて構造化します。

③具体的に落とし込む
抽象化できたら、それぞれの情報をどのレベルまで具体化するか、情報の優先順位も考えながら落とし込んでいきます。現在のシートはかなり最終段階まで具体化されていますね。

④抽象と具体を行き来する
具体化してみてよくわからなくなったら、また抽象化・構造化のところに戻ってきます。一段階抽象度をあげて、そもそもどういう構造になっているのかを議論する。それをまた具体に戻していく。この行き来がとても重要だと思っています。

プロセスは上記のような流れですが、もうひとつ全体を通して重要なのは「素人力」だと思います。<専門的な知識をもちながら、素人的な視点をもつ力>のことを僕がこう呼んでいるだけなんですが(笑)。
ある分野の専門家になればなるほど、素人目線をもつのは難しいですよね。かと言って、本当に単なる素人だと指摘が的外れになってしまいます。このシートは現在まさに、専門家が専門家の目線で作成した状態です。

今回学生が対象であることのメリットは、ビジネスの経験を何年も積んだ人より専門性が薄いこと
このシートについての背景を知ることである程度の専門性をもちつつ、初めて見た人にとってわかりづらいという状況を突破する、素人的な視点をもったデザインをしてほしい。むしろそこさえ守れば、正直プロセスはなんでも良いと思っています(笑)。

ーー なるほど。では今回のコンペには、どのようなことを期待されていますか?

チャーリーさん:今回のコンペはなかなかないものだと思っていて、明らかに領域の異なる知識が必要になります。つまりデザインと経営。デザイン系の学生は、経営のことを知らない人が多い。経営を勉強している学生には、デザインを知らない人が多い
先ほどお話ししたように本質的なデザインをするためには、情報を構造化しなければいけない。構造化するためには、情報の深い背景を知らなければいけない。その背景を知るためには、経営の知識が多少なりとも必要になってきます。
でも情報をデザインに落としていく部分では、デザイン系の学生が必要です。両方のスキルが必要になるんです。
それを一人でできる人がいればベストだと思うんですが、そんな優秀な人材は正直なかなかいないですよね(笑)。
ですから、全然違うジャンルの学生同士が手を組んで、共同で参加してほしい。領域が全然違う人同士がディスカッションして、ひとつのアウトプットをつくるという経験はすごく貴重だと思います。それを期待したいですね。

ーー では最後に、参加を考える学生へメッセージをお願いします。

チャーリーさん:とても貴重なコンペだと思うので、良い意義を感じて参加してくれると嬉しいです。大切にしてほしいのは、「やらなきゃ」ではなく「やりたい」という好奇心。僕がビジネスモデルの図解を始めたのも、単純にやりたい気持ちに突き動かされたからです。
「やらなきゃ」で埋め尽くされる人生はつらい。「やりたい」と、感動や心が動く瞬間を追求してください。

ーー チャーリーさん、ありがとうございました!
 
複雑な情報をわかりやすく情報伝達できるスキルは、クリエイティブ職に就いた際も大いに役立ちます。
今回教えてくださった図解の流れを意識しながら、経営デザインシートにぜひチャレンジしてみましょう!

▼コンペの詳細はこちら!
「経営デザインシート」リ・デザインコンペティション

 
 

(2019.7.8)
Sakura Shindo

著者紹介

シンドウサクラSakura Shindo

ビビビット社で、企業向けWebメディア「ビジネス部デザイン課」の編集長をしています!趣味はうさぎとコーヒー。うさぎの抜け毛を保存しています。 Twitter
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