デザイナーに求められる情報整理のスキル。「経営デザインシート」のリデザインに挑戦してみよう

デザインの本質とは何でしょうか。
さまざまな解釈がありますが、「情報整理し、わかりやすくすること
ーーこれは、その中でも主要な解釈のひとつと言えるでしょう。

ビビビット社では、「経営デザインシート」という、内閣府が主催する将来を構想するためのワークシートのリ・デザインコンペティションを運営しています。
ワークシートのリ・デザインというよりも、フレームワークのリ・デザインと言った方が伝わりやすいかも知れません。フレームワークとは、「枠組み」「構造」を意味する英単語。本コンペは、「経営デザインシート」の構造をわかりやすく・書き込みやすくリ・デザインするコンペティションです。
複雑な情報をわかりやすく、使いやすい情報に……そんなデザインにあなたも取り組んでみませんか?
この記事では、経営デザインシートとは何なのか、どんなコンペティションなのかをご紹介していきます!
編集・執筆 /YOSHIKO INOUE , イラスト/KANAKO HONDA
監修/内閣府知的財産戦略本部

もくじ

● 経営デザインシートとは

経営デザインシートとは

経営デザインシートは、将来を構想するためのシートです。また、企業のビジネスに貢献する知的財産を見える化するのにも役立ちます。
企業の知的財産を見える化し育てていくことができれば、日本の産業が発展し、国際競争力が高まる。政府はそんな期待を持っています。
 

どんな課題から生まれたの?

現代の消費社会は、生産しても選ばれなければ購入されない【21世紀型】とされています。モノをつくれば売れた時代とされる20世紀に比べ、モノが溢れ、供給過多状態になっているからです。消費者にモノを安定的に供給できる21世紀。現代の消費者にモノを買ってもらうには、機能や価格に加え、それ以上の「買うべき理由」が必要となっています。(→合わせて読みたい:コモディティ化って何?

▼例:20世紀、洗濯機の使用が一般化されていなかった頃は、洗濯機を生産すればすぐに売れていた。しかし洗濯機の使用が一般化した現代では、優れた性能はもちろん、それ以上の「買うべき理由」がないと売れるのは難しい。


性能や価格以上の「買うべき理由」とは、「誰かが使っているから」や「別のキャンペーンがありお得だから」など、挙げればキリがありませんが、それらに共通しているのは形のない価値であることです。
日本政府は、そうした形のない価値=無形資産こそが、21世紀に企業が生き残るための大事な要素になると考えています。つまり、日本企業が21世紀を生き抜くためには、無形資産、その中でも特に企業の知的財産を産み・育てる必要性があるとされているのです。

知的財産とは

内閣府は、知的財産(略して知財)を人間の創作的活動により生み出されるあらゆるもの*1と定義しています。例えばアイデアやノウハウ、ブランドイメージなどもそうですし、企業理念やビジネスモデル、組織文化・組織風土等も含まれます。
例えば、あなたが時計を買う時、どんな決め手で購入しますか?商品の機能面やデザインももちろんですが、ブランドイメージや、過去店舗で受けた空間や接客の印象が「購入の決め手」となることもあると思います。こういった目には見えないけど、どんな事業にもあって、間違いなくその企業の価値を向上させるもの経営における知的財産とされています。
*1……知財のビジネス価値評価検討タスクフォース報告書4ページより

▼目には見えないけれど、他社と差別化できる価値。ある時計の場合


しかし現状では、日本のすべての企業が自社の目に見えない価値=知的財産を把握してはいない、そんな課題を政府は認識しています。
その課題を解決し、すべての企業の知的財産を明確にし、それらを広げ伸ばし、将来を構想していく。
それを実行するツールとして「経営デザインシート」は生まれました。

 

● 経営デザインシートは
誰が・どんなときに使うもの?

経営デザインシートが生まれた背景がわかったところで、改めて誰が・どんな時に・何のために使用するものなのかを整理しましょう。

【 誰が 】・・・経営や組織の責任者が
【どんな時に】・・・事業を継承するとき、新事業を始めるとき、将来を構想したいとき等に
【何のために】・・・自社らしさや自社の想いを明確にし、これまでのビジネス(それに貢献する“知的財産”)を把握し、将来どう発展させていくか考えるために

デザイナーの就活に当てはめて考えると・・・

”経営””事業”というと難しく聞こえますが、皆さんにとって身近なデザイナー就活の自己分析に例えてみましょう。自己分析は、自分の強みを探すために行いますよね。
 

 
これまでの作品や活動を振り返りながら“自分の良さ”“自分にしかない価値”を考え、それを元にやりたいことやできること、理想のデザイナー像を考えていくと思います。

自分の良さを自分や友人と考えたら、さらにそれを“どうやって手に入れた?”“将来的に、その自分の良さはどんな風にいかせそう?”“それはどんな価値?”と「戦略」を深掘りしていきます。

▼例:自己分析をする学生

 

 
上の例は個人ですが、「経営デザインシート」では、企業・事業のこれまでを振り返りながら、“目に見えない自社だけの価値”(知的財産)を見える化し、今後活かしていく戦略を考えるためのツールとなるのです。
そんな、多くの経営者に広く使われるべきこのシート。いったいどんなものなのでしょうか。

▼例:企業(街のクリーニング屋さん)

 

● 現在の経営デザインシート


こちらが現在の経営デザインシートです。……ひと目で分かる通り、なんだかごちゃごちゃした不親切なデザインで、多くの人が使いやすいシートとは言えません。

実際の使い心地はどうなのでしょうか。本メディアの編集長である私・井上が、経営デザインシートを用いて「はたらくビビビット」の価値の見える化に挑戦してみました!
……しかし、どうしても書きづらく、途中で断念してしまいました。そもそも事業の長期的な戦略を考えるという難しいテーマなうえに、シートにある項目の用語も難しく、さらに混乱……。



これまで、授業のプリントや何かのワークショップなど、いろんな場面でフレームワークを使った経験がありますが、そのデザインの重要性を改めて感じました。枠組みが整理されていると、次に何をすれば良いか想像しやすく、書き進めると同時に思考も整理しやすくなりますよね。
 
そんな思いを多くの人が抱えていることから、このシートのリ・デザインが検討されるように。プロのデザイナーによる制作も予定されていますが、経営デザインシート自体の普及活動の1つとして、学生対象のデザインコンペティションを開催しています!

なぜ学生対象なの?

今回のコンペティションが学生対象である理由は、経営や事業にコミットするデザイナーの育成のためです。経済産業省が提出した「デザイン経営宣言」では、デザイナーこそがイノベーションの立役者とされています。しかしながら、国内において、デザイナーが経営に携わる事例などは多いとは言えません。本コンペティションが、クリエイティブ系の学生が経営や事業に興味をもつきっかけの1つとなり、日本の産業発展につながってほしいと期待されています。

 
それでは、コンペの詳細を詳しく見てみましょう!
 

● 経営デザインシートリ・デザインコンペティション

募集要項

●テーマ:見ただけで描きたくなる「経営デザインシート」のデザイン

▼シートに求められる機能
 「これまで」と「これから」の時間軸を意識しながら書き込めること
 「自社の目的・特徴」、「事業概要」、「価値」等想いが書き込めること
 書き終えた後見ると、大切な部分が明確にわかること
 「資源」と「ビジネスモデル」と「価値」の関係性を意識しやすいこと

▼現在の経営デザインシート(改善案はどちらのものでもOKです)
全社用 / 事業用

●提出形式:png, jpg, pdfのいずれか/ 8MB以内
●応募対象:学生(2019年10月末日時点で大学, 大学院, 高等専門学校, 専修学校, 高等学校に在学中であること)
●応募方法特設ページにファイルをアップロード
●締切2019年9月17日
 

大賞:内閣府大臣賞 | 準大賞:ビビビット賞・審査員賞 (表彰式あり)
※受賞作品は首相官邸ホームページに掲載するとともに、知的財産戦略推進事務局による「経営デザインシート」の普及事業に活用いたします。
副賞の内容は2019年6月時点で決定しているもので、今後追加される予定です。決まり次第特設ページにて公表いたします。
 
▼2019/07/08追記

大賞:内閣府大臣賞 10万円
準大賞:ビビビット賞・審査員賞副賞 各1万円

 

審査員紹介

本コンペは、デザイン業界の第一線で活躍されるクリエイターの方々に審査いただきます。自身の制作物をプロに評価してもらえるチャンスをお見逃しなく!

近藤哲朗(チャーリー)さん

株式会社そろそろ代表取締役/ビジネス図解研究所主宰
千葉大学大学院工学研究科修了後、面白法人カヤックに入社。2014年、面白法人カヤックで出会ったメンバーと株式会社そろそろを創業。ビジネスモデルを図解するシリーズを発表したところ、8社の出版依頼を受けるなど大きな話題を集め、2018年9月に書籍「ビジネスモデル2.0図鑑」を出版。Amazonカテゴリ1位、5万部を超えるベストセラーに。現在は約50人体制の有志組織「ビジネス図解研究所」を運営し、「ビジネス×図解の追求」をコンセプトに、書籍制作を行いながら企業向けにビジネス図解のコンサルティングや講演を行う。

坪田朋さん

デザイン会社Basecamp代表 / Onedot株式会社CCO / デザイナー / プロダクトマネージャー
2001年にWebの受託開発会社へ就職し、コーポレートサイトなどのデザイン制作を手掛ける。その後2007年にlivedoor、2011年にDeNAへ転職し、多くの新規事業立ち上げや、UI/UXデザイン領域を専門とするデザイン組織の立ち上げを手掛ける。現在は、2016年にBCG Digital Venturesにてデザインシンキングを使って立ち上げた新規事業開発業務「Onedot」にCCOとして参画しつつ、兼業でデザインファーム「Basecamp」を立ち上げ、スタートアップの事業創出やデザインコンサルティングを支援している。

永井一史さん

株式会社HAKUHODO DESIGN 代表取締役社長/多摩美術大学教授 アートディレクター/クリエイティブディレクター
1985年に多摩美術大学美術学部卒業後、株式会社博報堂に入社。2003年、デザインによるブランディングを専門とする会社HAKUHODO DESIGNを設立。 多数の企業・商品や行政施策のブランディング、VIデザイン、プロジェクトデザインを手 掛けている。2015年からは東京都「東京ブランド」クリエイティブディレクターを担当。2015年から2017年まではグッドデザイン賞審査委員長を務めた。経済産業省・特許庁「産業競争力とデザインを考える研究会」委員。国内外で受賞歴多数。著書・共著書に『博報堂デザインのブランディング』、『経営はデザインそのものである』など。

廣田尚子さん

ヒロタデザインスタジオ代表
1990年に東京藝術大学卒業後、株式会社GKテックへ入社。1994年に「国際バッグデザイン豊岡」コンペで金賞を受賞。
1996年にはヒロタデザインスタジオを設立し、オリジナルバッグブランド「NAOCA」を展開。
その後もUCCやTHERMOS、shu uemuraなど、様々な企業のプロダクト・製品開発を中心に活躍し、数多くの賞を受賞。現在は企業の製品開発以前のコンサルティングやブランディングにも携わる傍ら、グッドデザイン賞審査員および東京ビジネスデザインアワードの審査員長や、女子美術大学デザイン学科教授、多摩美術大学客員教授も務めている。

→インタビューはこちら

三浦崇宏さん

The Breakthrough Company GO代表取締役 PR/CreativeDirector
2007年に博報堂へ入社。2011年にはTBWA\HAKUHODOへ出向し、両社でマーケティング、PR、クリエイティブ部門を歴任。2017年に独立、「The Breakthrough Company GO」で設立。従来の広告会社の領域を超えて、新しいビジネスをつくる事業クリエイティブを専門領域とする。『表現を作るのではなく、現象を創るのが仕事』が信条。 カンヌライオンズ(国際広告祭)、日本PR大賞、ADfest、フジサンケイグループ広告大賞、グッドデザイン賞など国内外で受賞歴多数。

 
※五十音順
今後、審査員の皆さんのインタビューを公開していきます。経営デザインシートのリ・デザインに取り組むヒントがきっと見つかるはずですので、ぜひ目を通してみてください!
インタビュー記事一覧

 

● 最後に

本コンペのリ・デザインのミソは、複雑になっている情報を整理し・使いやすいフレームワークに再設計することです。こういった情報設計のスキルは、どんなジャンルのデザイナーにも求められます。難しいテーマではありますが、情報設計スキルの獲得にぜひ本コンペを利用してください!
もちろん、作成したデータはポートフォリオにも掲載可能です。たくさんのご応募お待ちしています。
特設ページはこちら
 
●コンペに関するお問い合わせ
株式会社ビビビット 経営デザインシート運営事務局
03-6846-2775 / keiei-design@vivivit.co.jp

 

(2019.6.21)
Yoshiko Inoue

著者紹介

井上佳子Yoshiko Inoue

はたらくビビビット編集長。 株式会社ビビビットの社員です。メディアを通し、制作や就職に役立つ情報を発信していきたいです!
記事一覧へ