「あの人は一部上場企業に勤めている」と聞くと、なんとなく優秀だと感じたり、親孝行だといわれることもあると思います。ニュースなどでもよく耳にする言葉ではありますが、上場企業の意味をきちんと知っている学生は、就職間近の学生であっても意外と少ないと思います。そこで、なぜ上場企業に良いイメージがあるのかをこの記事で学び、これからの企業選びに役立てていただけたらと思います。
編集・執筆 / ASAMI KIMURA, AYUPY GOTO
目次
- 1. 上場とは
- 2. 株式について
- 3. 株式市場の種類
- 4. 上場するとどんな良いことがある?
- 5. 非上場企業のメリット
- 6. 最後に
1. 上場とは
上場の"場"とは、株式市場のことを指します。株式市場に上がって、証券取引所で株式の売買ができるようになることを「上場」と呼びます。上場企業とはその株式を発行できる企業のことです。
このような説明ではさらに新しい言葉がいくつも出てきてしまい、まだ上場の意味がわかりにくいままだと思います。株式の売買とは、いったいどういうことでしょうか?順を追って見ていきましょう。
2. 株式について
まず、企業が資金を調達するには大きく分けて以下の2つの方法があります。
・借金をすること
・発行した株式を買ってもらうこと
借金は利息を含めて返済の必要がありますが、株式の発行により得られた資金はその必要がありません。株式を発行して資金調達をし、そのお金で事業活動を行う形態の企業を「株式会社」と呼びます。
株式とは単に「株」とも呼ばれ、会社の資本を構成する単位です。一株の値段は数千〜数十万で、これを「株価」と呼びます。株式を紙として形にしたものを「株券」と言いますが、株券も今は電子化されています。
株式を買った株主は、その会社のオーナーの一人であるような権利を持つことができます。そのため会社の業績が良ければ配当金を受け取ることができたり、株主総会に出席して会社の経営に意見することができるのです。
3. 株式市場の種類
さて、この株式を売ったり買ったりできるところが株式市場です。株式市場とは概念的なもので、株式の取引が行われる「発行市場」と「流通市場」の総称です。発行市場では企業と投資家が株の取引をし、流通市場では投資家同士が既に発行された株の取引をします。実際に株式の売買が行われる場所は「証券取引所」と言います。
企業が株式市場に上場するためには、それぞれの証券取引所が定める一定の審査基準をクリアする必要があります。そして、基準の厳しさにより、その中で上場できる市場が異なってきます。厳しい基準が設けられている市場ほど、活発な取引が行われます。一度どこかに上場しても、後から新たに審査を受け直すことで市場を変更することができます。
ちなみに、株式会社であるために必ずしも上場企業である必要はありません。むしろ、株式会社のうち上場している企業はごく一部です。
例として東京証券取引所をあげます。東京証券取引所は国内最大の金融商品取引所です。
例) 東京証券取引所 (東証)
- ・一部
主に大企業が上場する市場です。上場審査基準が厳しいため、どの企業でも一部上場できるわけではありません。新規上場する企業はまず下の二部への上場を目指すことが多いです。
- ・二部
中堅企業が上場する市場とされています。一部に比べると審査基準は厳しくないため、企業は普通、まずこちらに上場してから段階的に一部への上場を目指します。
- ・マザーズ
新興市場といって、ベンチャー企業などが上場する市場です。審査基準は一部や二部とは少し違い、その会社の「成長の可能性」が見られます。上場している企業の性質上、株式の値動きが激しい市場です。
4. 上場するとどんな良いことがある?
企業が上場する目的は、最初に述べたとおり「資金調達」です。しかしそれだけではありません。上場することは企業にとって間接的なメリットがあります。
―上場企業には信用がある
厳しい審査を通って上場した企業は知名度が高くなり、世間からの信用を得ることができます。特に審査基準が厳しい一部に上場しているとなれば、一般的に安定した大企業であると考えることができます。
企業に信用があることは様々な場面でプラスに影響します。優秀な人材も集まりやすくなることや、ビジネス的な取引も円滑に進めやすくなったりもします。
信用と一言にすると「それだけ?」と思ってしまうかもしれませんが、会社もその周辺もつまるところは人の集まりです。信用や安心感というのは簡単には得られない、非常に重要な価値なのです。
5. 非上場企業のメリット
一方で、有名な会社で上場しているものだと思っていたら上場していなかった、ということもあります。上場できる力は十分にあっても、その会社の考えによって上場しないことのメリットを選んでいるのです。
- ◯ 情報の開示の手間がない
全ての上場企業は四半期毎に決算を開示しなければなりません。つまり3ヶ月単位で決算を行わなければならないので、ほとんど常に決算業務に追われていることになります。この手間は大変なものです。
- ◯ 情報株主の要望を気にしなくて良い
株主総会は会社の方針を決めるための決議をとる機会であり、株主が出席することができます。経営陣側がある方針を出したとしても、オーナーの一人である株主達が認めないことはできません。つまり、株式会社になった以上、株主の要望に答えつつ会社を経営していかなければならなくなるのです。
- ◯ 情報上場のための手間・コストをかけなくて良い
上場するためには厳しい審査をクリアしなければならないことは既に述べました。この審査のための準備には多くの時間とコストが伴います。また、株式公開できたとしても、それを維持するためにはさらに多くのコストがかかります。資金調達するための手段である上場それ自体にも、結局費用がかかってしまうのです。
以上のようなことから上場をしていない大企業もあります。上場をしていないからといって、経営状況が良くないというわけではありません。
6. 最後に
いかがでしたか?
上場企業がなんとなくすごいというイメージだけではなく、企業がどういう目的をもって上場をするのかなど知ることができたでしょうか。株式についてなど、馴染みのない内容であったかもしれませんが、企業の仕組みについての知識を深めることができたと思います。
これから就活をするという人は、ぜひ企業研究をする際の参考にしていただければと思います。
(2015.8.14)
著者
はたらくビビビット
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