今回ご紹介するのは、大手IT企業でインハウスデザイナーとして働く大佛さんのポートフォリオです!作品のコンセプト・ゴール・ターゲットなどのプロセスが丁寧に記載され、制作過程を大事にしていることが伝わってきます。また、作品を通して大佛さんの考え方が伝わる工夫が施されています。いったいどんな内容なのか、さっそく覗いてみましょう!
編集・執筆 / MAKO WATANABE , YOSHIKO INOUE
大佛茉由さん
武蔵野美術大学デザイン情報学科卒
某IT企業にインハウスデザイナーとして勤務
定性調査からWEBサイト、アプリの設計からコーディングが中心ですが、たまに動画編集や駅広告制作の機会もあります!
PICK UP!ポートフォリオのこだわり
「自分が何者であるか」を明確に
❶来歴を説明し、「自分がデザインする上でどういう所に着目して制作しているのか」を掲載
❷自分の名前のオリジナルロゴを作成し、表紙に掲載。紙飛行機をモチーフに選んだのは「自分のデザインを旅するようにさまざまな所へ「温かみ」を提供したい」という思いから。
大佛さん:まずは自分が何者であるか、どういう気持ちを持ってデザインをするのかを明確にするページを設けました。採用担当の方が気になるポイントは「私が何者であるか」「どういうことを仕事にしていきたいのか」ではないかと仮定しました。もちろん、スキルセットや作品自体も重視されると思いましたが、私がもし、採用担当者の立場であれば、これから一緒に働く人の考え方や人間的な部分も気になると思ったからです。
「何のために」「どのように」作ったかを伝える
大佛さん:どういう目的があって、どう形にしたのかが伝わるようなポートフォリオを目指しました。私は「上流過程からきっちりと考えて物作りをしたい」と思っていたので、その思考プロセスが伝わるように心がけていました。アート作品を除いたどの作品にもコンセプト・ゴール・ターゲットを併記し、見る人にスッと情報が入ってきて理解しやすいものを目指しました。スケッチやメモを自分で見返すと「これは載せるのはちょっと......」と思われるかもしれませんが、出来るだけポートフォリオに載せると、意外と「この人はこういう考え方をして物作りをするのだな」とアピールになると思います。
ポートフォリオ一問一答
●このポートフォリオを提出した業界
IT企業、電機メーカー
●コンセプト
温かみを大切にしたい!
大佛さん:私はデザインを通して人々にホッと和み、安心させられるようなものを創りたいです。新しい技術が生まれ、社会が進歩していく一方で、人は「不完全さ」を求めているように思います。例えば、「写ルンです」は39枚しか取れないからこその価値を創出し、若者の間で再流行しました。また、粗さも高画質では取れない「味」となっています。アナログとデジタルを融合し、人に心地よい経験を提供できるようなデザイナーになるのが夢です。
●ポートフォリオの構成
- 表紙
- コンセプトページ
- 自己紹介ページ
- コンペ作品
- GUI課題
- インタラクション課題
- WEBサイト課題
- ブランディング課題
- 芸術祭実行委員会
- 市イベントのステージ看板制作
- 記号論研究
- ポスター作成
- ライナーノーツ作成
- 絵画
- RICOH印刷作品
●制作時期
3年生の12月ごろ〜4年生の4月ごろまで
●制作プロセス
(1)作品をピックアップ
(2)作品が出来上がるまでのプロセスを書き留める
(3)足りないデータ、情報をかき集める
(4)志望する業界・職種でごとの順番を考える
(5)InDesignでデータ制作
(6)自宅のプリンターで印刷
(7)ファイリング
●制作に使用したソフト
InDesign
●印刷 / 製本方法
インクジェットプリント/ファイリング
●サイズ / ページ数
A4/46ページ
●制作にかかった費用
1万円ほど(ファイル代+印刷代+用紙代の3冊分の合計)
●制作するうえで参考にしたもの
学校のキャリアセンターに設置してある先輩ポートフォリオ、ViViViTのポートフォリオ展、ポートフォリオ百科
●表紙をつくるときに工夫した点
大佛さん:私の持ち合わせている技術では製本した後にページがパラパラと抜けてしまうなどの懸念があったため、ファイルを選びました。かといって、ファイルそのままの表紙だと味気がなく、目立たないので、無印のクリアフォルダーを利用して表紙の景色が透けるようにしました。扱いやすい且つ自分のアピールもできて良かったです。
●制作中、どんな人にアドバイスをもらいましたか。
大佛さん:ゼミの教授、キャリアセンター職員、企業の人事の方、ViViViTのキャリアアドバイザーの方にもらいました。
最初はA3で作成していたのですが、アドバイザーの方に説明する際に重くてめくりにくくて不便と感じたため、思い切ってA4に変更しました。また、IT企業のインハウスデザイナーの場合、設計段階〜アウトプットまでの能力を求められることが多いとアドバイスをいただきました。そのため、作品のみの掲載だった初稿から、プロセスまで細かく載せるように変更しました。
▼CHECK!作品情報は何を記載?
キャッチコピーとイメージビジュアル+コンセプト/ゴール/ターゲットで補強
編集部:イメージビジュアルとキャッチコピーに加え、コンセプト・ゴール・ターゲットの三点を冒頭に明記。それぞれのテキストも一文で明瞭になっており、「何のために制作したか」ひと目で把握できます。ポートフォリオを受け取る企業の人はじっくり読めるとは限らないので、どんなものを作っているか、どんな人が作っているかを一瞬で印象付けられるキャッチコピーは効果的です。
●ViViViTページとの使い分け
大佛さん:ViViViTは幅広い企業の方に見てもらえる大きな入り口だと思っていたので、気づいてもらえる「きっかけ」を出来るだけたくさん増やしたいという思いから、ポートフォリオに掲載するか渋っていた作品も全て載せました。紙のポートフォリオは面接や人に説明する際に使うものとして切り分け、作品を厳選していました。
▼「はたらくビビビット」でインターンをしていた大佛さん。活用方法をまとめた記事も!
●これからポートフォリオを制作する人へのアドバイス
大佛さん:きっと最初は「ポートフォリオをどう作ればいいかわからない!」と思うと思います。ですが、まずはなんでもいいから1冊作ってみることをオススメします。「初めてのポートフォリオにお金をかけたくない!」と思うかもしれませんが、1冊作ることでかなりのアドバンテージになります!お金を使っただけの価値は返ってきます。私はとりあえずたたきのポートフォリオを作っていろいろな人にアドバイスをいただきました。そうすることで自然と「ここをもっと大きくレイアウトした方が作品の魅力が伝わる」「ここを省いても十分伝わるな」などの感覚が掴めてきました!
また、ポートフォリオは自分が普段制作しているデザインと一緒で「読み手」というターゲットがいます。つまり、ポートフォリオ自体もあなたの作品であるということです。このことを意識することで、「どんなポートフォリオなら相手に自分の良さが伝わるか」がはっきりと分かるはずです。あなたのこれからの活躍を応援しています!
はたらくビビビット編集部より
「温かみを大切にしたい!」というキャッチコピーが印象的な大佛さんのポートフォリオ。それを裏付けるように、“人とのつながり”や“ぬくもり”を想起させるテーマの作品が多く掲載されています。ポートフォリオ冒頭で「自分はこんな人物である」と定義づけることで、後ろの作品を見るときも「根本にあの考え方があるから、このような作品なのかな」と予想できます。
また、いろんな人にアドバイスをもらいながら制作を進めた大佛さんは、応募する職種向けに見せ方を調整しています。最終アウトプットだけでなくスケジュールやリサーチの仕方、どのように着想を得てイメージを膨らませたかなどをスケッチを載せて説明。細部のポイントとなりますが、作品カテゴリ別に色分けしているのも見やすく、今どのページを見ているのか把握しやすいです。
読み手に負担なく、大佛さんのスキルと人柄がよくわかるポートフォリオでした。大佛さん、ありがとうございました!
大佛さんも活用した!ViViViTでポートフォリオをつくってみる
(2020.6.30)
著者
はたらくビビビット
ポートフォリオとデザインのリファレンスメディア